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第4章
約束(2)
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「秋か。桃華が高校卒業したら、桃華さえ良ければ結婚する?」
「え……?」
桃華は目を大きく見開いた。
「俺さ、こういう仕事だから、ツアー中は家帰れねぇし、朝早い日もあれば夜遅い日もある。休みも不規則だしさ。
でも、さっき桃華が言ってくれたことが本心なら、結婚考えてもらえるかな?」
「……いいの?」
「いいの? って、それ、俺のセリフ」
拓人は桃華の反応に思わず笑った。
「嬉しいっ! 私、拓人のお嫁さんになれるの!?」
「桃華がちゃんと高校卒業したらな」
「私、もっと勉強頑張る!」
「おう! 約束な! また卒業の目処が立ったら改めて言うから教えてな」
「うん、約束だよっ!」
2人はそっと小指を絡めた。
「じゃあ、そろそろ桃華、帰る準備しなきゃ。シャワー浴びて来いよ」
「うん」
拓人に支えられながら上体を起こす桃華。
拓人は最後に桃華の胸元と唇にキスをして、桃華の服を羽織らせた。
「俺、この辺片付けておくから。身体冷やさないようにな」
桃華が立ち上がると、フラッとよろけた。
拓人がとっさに桃華の身体を支える。
「もしかして、まだ余韻が残ってるか?」
「少し……」
「一緒に浴びる?」
桃華は少し頬を赤く染めて「うん」と小さく頷いた。
*
シャワーを浴びて荷物をまとめる桃華。
拓人がそっとフルートの入った袋を持ち上げる。
「バレンタインに聴けるの楽しみにしてる。疑ってごめんな」
「ううん。私こそ疑われるようなことしちゃったんだもん。ごめんなさい」
「あいつ、名前何?」
「あ、ユウくん。本名はユウスケって言うんだって」
「ふーん。ユウか。覚えとく」
拓人が少しだけ顔をしかめる。
その様子に気づいた桃華は口を開く。
「私、拓人じゃないとダメだから。拓人以外の人の所には行かないよ」
拓人は無意識に顔をしかめていたのもあり、一瞬驚いた表情を浮かべる。
「え……っ!? ああ、分かってるつもりだ。ただ……」
そのまま拓人は桃華を後ろから抱きしめ、うつむいた。
「やっぱりなんかムカつく。俺の知らない桃華を、あいつは知ってるんだよな」
桃華の耳元で、今にも消えそうな声で拓人は呟いた。
桃華に言うべき言葉でないことは、拓人自身よく分かっていた。
でも、拓人はどうしても複雑な心境を隠せなかったんだ。
学校での桃華。
学校でフルートの練習に励む桃華。
入退院を繰り返しながら通っていた頃よりもたくさん行動範囲も広がったし、出会いも増えた。
友達だってできる。
桃華は、ほとんど普通の人と同じような生活が送れるようになったのだから。
でも、それを嬉しく思う反面、桃華の気持ちが別の所へ行ってしまわないかが不安だった。
桃華を信じていない訳じゃないけれど、見えない時間が恐かった。
記憶転移によって異性の好みが変わって離婚に至った夫婦の話。
これも、実際に記憶転移によると考えられる桃華の変化を目の当たりにした拓人の不安に拍車をかけた。
いつも一緒に居られる訳じゃないのは分かってる。
桃華を束縛したい訳じゃない。
でも、桃華のことは全て独り占めしたいと思ってしまう自分も確かに居て
拓人は自身の独占欲の強さにイライラした。
「え……?」
桃華は目を大きく見開いた。
「俺さ、こういう仕事だから、ツアー中は家帰れねぇし、朝早い日もあれば夜遅い日もある。休みも不規則だしさ。
でも、さっき桃華が言ってくれたことが本心なら、結婚考えてもらえるかな?」
「……いいの?」
「いいの? って、それ、俺のセリフ」
拓人は桃華の反応に思わず笑った。
「嬉しいっ! 私、拓人のお嫁さんになれるの!?」
「桃華がちゃんと高校卒業したらな」
「私、もっと勉強頑張る!」
「おう! 約束な! また卒業の目処が立ったら改めて言うから教えてな」
「うん、約束だよっ!」
2人はそっと小指を絡めた。
「じゃあ、そろそろ桃華、帰る準備しなきゃ。シャワー浴びて来いよ」
「うん」
拓人に支えられながら上体を起こす桃華。
拓人は最後に桃華の胸元と唇にキスをして、桃華の服を羽織らせた。
「俺、この辺片付けておくから。身体冷やさないようにな」
桃華が立ち上がると、フラッとよろけた。
拓人がとっさに桃華の身体を支える。
「もしかして、まだ余韻が残ってるか?」
「少し……」
「一緒に浴びる?」
桃華は少し頬を赤く染めて「うん」と小さく頷いた。
*
シャワーを浴びて荷物をまとめる桃華。
拓人がそっとフルートの入った袋を持ち上げる。
「バレンタインに聴けるの楽しみにしてる。疑ってごめんな」
「ううん。私こそ疑われるようなことしちゃったんだもん。ごめんなさい」
「あいつ、名前何?」
「あ、ユウくん。本名はユウスケって言うんだって」
「ふーん。ユウか。覚えとく」
拓人が少しだけ顔をしかめる。
その様子に気づいた桃華は口を開く。
「私、拓人じゃないとダメだから。拓人以外の人の所には行かないよ」
拓人は無意識に顔をしかめていたのもあり、一瞬驚いた表情を浮かべる。
「え……っ!? ああ、分かってるつもりだ。ただ……」
そのまま拓人は桃華を後ろから抱きしめ、うつむいた。
「やっぱりなんかムカつく。俺の知らない桃華を、あいつは知ってるんだよな」
桃華の耳元で、今にも消えそうな声で拓人は呟いた。
桃華に言うべき言葉でないことは、拓人自身よく分かっていた。
でも、拓人はどうしても複雑な心境を隠せなかったんだ。
学校での桃華。
学校でフルートの練習に励む桃華。
入退院を繰り返しながら通っていた頃よりもたくさん行動範囲も広がったし、出会いも増えた。
友達だってできる。
桃華は、ほとんど普通の人と同じような生活が送れるようになったのだから。
でも、それを嬉しく思う反面、桃華の気持ちが別の所へ行ってしまわないかが不安だった。
桃華を信じていない訳じゃないけれど、見えない時間が恐かった。
記憶転移によって異性の好みが変わって離婚に至った夫婦の話。
これも、実際に記憶転移によると考えられる桃華の変化を目の当たりにした拓人の不安に拍車をかけた。
いつも一緒に居られる訳じゃないのは分かってる。
桃華を束縛したい訳じゃない。
でも、桃華のことは全て独り占めしたいと思ってしまう自分も確かに居て
拓人は自身の独占欲の強さにイライラした。
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✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
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