8 / 80
恋の始まり(高校生)
赤いロープ
しおりを挟む
「これで僕を縛って」
差し出される赤いロープ。
赤い糸なんかよりももっと強固に縁を結ぼうと。
「生まれ変わっても私たちは必ず出会うわ」
ヒロインは儚げな微笑みで応える。
未来永劫、結ばれる二人。
手に手をとった主人公たちはとても幸せそうだったけれど。
お互いの一族郎党を滅ぼしたのち、心中するラストに観客は震えてしまう。
文化祭なのにひたすら救いのないバッドエンド。
幕が下りたのに拍手をする人も申し訳程度で、明らかなため息がいくつも聞こえてくる。
誰?! こんな台本書いたのは!!
恋愛物を上演すると聞いていたから思い切って憧れている先輩を誘ったのに、悲恋すぎてひとかけらの幸福感も残っていなかった。
恋をしているあなたに贈る物語とか、恋人のいるあなたはぜひご覧下さいとか、そういった前振りであおっていたので、これはひどいとしか言いようがない。
終幕の合図に立ちあがり、先輩と並んで歩いても空気が重い。
だから、チケットと引き換えに渡されたパンフレットの裏に書かれた文字に気づいたのは、言葉少なに会場を出た後だった。
『滅べ、リア充!』
思わず先輩と一緒に覗き込み、同時に吹き出してしまった。
手書きの文字があまりに力強いから、笑いが止まらない。
公演者たちの思惑はわからないけれど、パンフレットに書かれた言葉とセットで、本当の終幕の気がした。
お腹が痛くなるぐらい笑って見つめ合う私と先輩の未来は、演劇とは関係なくハッピーエンドに決まっている。
【 おわり 】
差し出される赤いロープ。
赤い糸なんかよりももっと強固に縁を結ぼうと。
「生まれ変わっても私たちは必ず出会うわ」
ヒロインは儚げな微笑みで応える。
未来永劫、結ばれる二人。
手に手をとった主人公たちはとても幸せそうだったけれど。
お互いの一族郎党を滅ぼしたのち、心中するラストに観客は震えてしまう。
文化祭なのにひたすら救いのないバッドエンド。
幕が下りたのに拍手をする人も申し訳程度で、明らかなため息がいくつも聞こえてくる。
誰?! こんな台本書いたのは!!
恋愛物を上演すると聞いていたから思い切って憧れている先輩を誘ったのに、悲恋すぎてひとかけらの幸福感も残っていなかった。
恋をしているあなたに贈る物語とか、恋人のいるあなたはぜひご覧下さいとか、そういった前振りであおっていたので、これはひどいとしか言いようがない。
終幕の合図に立ちあがり、先輩と並んで歩いても空気が重い。
だから、チケットと引き換えに渡されたパンフレットの裏に書かれた文字に気づいたのは、言葉少なに会場を出た後だった。
『滅べ、リア充!』
思わず先輩と一緒に覗き込み、同時に吹き出してしまった。
手書きの文字があまりに力強いから、笑いが止まらない。
公演者たちの思惑はわからないけれど、パンフレットに書かれた言葉とセットで、本当の終幕の気がした。
お腹が痛くなるぐらい笑って見つめ合う私と先輩の未来は、演劇とは関係なくハッピーエンドに決まっている。
【 おわり 】
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる