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第8章
第2話(2)
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「世間には我々のような関係を、受け容れるのが難しい人が一定数いることは重々承知しています。万人に認めてもらうことは難しいでしょう。ですがそれでも、できうるならば親しい人たち、とりわけ大切な人には理解し、受け容れてもらいたい。それが私の心からの願いです。そのためにはまず自分から誠意を示し、信頼を得られる努力をすべきであったと痛感しました。私にとっては、その最たる存在が母です。ですからこの度、アメリカに渡って母の許を訪ね、ありのままの事実を打ち明けてきました」
その告白に、わずかに驚きを見せた祖父は、ややあってから小さく息をつくと口を開いた。
「……それでお母さんは、なんと言っておられた?」
「はじめはとても驚いていました。私が同性をパートナーに選ぶとは夢にも思っていなかったようなので」
祖父は、それはそうだろうというように頷いた。
「ですが私も、母の賛同を得られないまま日本に戻ることはできません。武造さんに反対されたことで、それがどんなに大切なことなのかを身をもって痛感しましたから。ですから相応の覚悟を持って打ち明け、言葉を尽くして正直な気持ちを伝えました」
そこで一旦言葉を区切り、ひと呼吸置いてからヴィンセントはふたたび話をつづけた。
「その結果、最初は戸惑いを見せていた母も最終的には理解を示し、おまえが選んだ相手ならば、きっと間違いはないはずだと受け容れてもらうことができました。相手を必ず最後まで守り抜きなさい。そしてふたりで幸せになるようにと言って」
祖父の隣でじっと話を聞いていた祖母が、目もとを拭った。
「武造さん、君恵さん、たしかに我々のような関係は少数派です。それでも互いを想う気持ちは、だれに羞じることも、負けることもないと胸を張って言うことができます。おふたりには今後、折りにつけ世間体の悪い、気まずい思いをさせてしまうことと思います。それだけは心苦しく、申し訳ないと思っています。ですがそれでも、あなたがたは莉音にとって唯一の身内で、かけがえのない存在。おふたりを蔑ろにすることは到底できません。できうるならば、おふたりにも我々を認めていただきたいのです。莉音のことは、生涯をかけて愛し抜くと誓います。どうか我々の関係を、受け容れていただくことはできないでしょうか?」
ヴィンセントは、そう言って深々と頭を下げた。その横で、莉音もまた同様に頭を下げた。
「おじいちゃん、おばあちゃん、僕からもお願いします。アルフさんとのこと、どうか許してください! 僕にとって、アルフさんはおじいちゃんたちとおなじくらい大切な人なんです。僕もおじいちゃんに反対されたまま、東京に帰りたくない。またみんなでごはんを食べたり、一緒に旅行に行ったりしたい。二十歳になったら、おじいちゃんとアルフさんと、一緒にお酒も飲みたい。僕、おじいちゃんにもおばあちゃんにも、良い人に出逢えてよかったねって喜んでもらいたい。だからお願いします! 男同士だけど、非常識で気持ち悪いかもしれないけど、それでも僕がはじめて好きになった人だから……っ」
話しているうちに涙が溢れて、莉音はしゃくりあげた。
祖父はなおも黙りこんでいる。
「お父さん……」
いつまでもなにも言わない祖父に痺れを切らしたように、祖母が声をかけた。
「もういい」
唐突に言い放って、祖父はヴィンセントが差し出した書類を突き返した。
「おじいちゃんっ!?」
やはりどうしても、わかってもらうことはできないのだろうか。
莉音は絶望的な気分で祖父を見た。だが。
「儂には法律がどうのちゅう難しいこたあようわからん。だが、あんたん覚悟んほどはようわかった」
その告白に、わずかに驚きを見せた祖父は、ややあってから小さく息をつくと口を開いた。
「……それでお母さんは、なんと言っておられた?」
「はじめはとても驚いていました。私が同性をパートナーに選ぶとは夢にも思っていなかったようなので」
祖父は、それはそうだろうというように頷いた。
「ですが私も、母の賛同を得られないまま日本に戻ることはできません。武造さんに反対されたことで、それがどんなに大切なことなのかを身をもって痛感しましたから。ですから相応の覚悟を持って打ち明け、言葉を尽くして正直な気持ちを伝えました」
そこで一旦言葉を区切り、ひと呼吸置いてからヴィンセントはふたたび話をつづけた。
「その結果、最初は戸惑いを見せていた母も最終的には理解を示し、おまえが選んだ相手ならば、きっと間違いはないはずだと受け容れてもらうことができました。相手を必ず最後まで守り抜きなさい。そしてふたりで幸せになるようにと言って」
祖父の隣でじっと話を聞いていた祖母が、目もとを拭った。
「武造さん、君恵さん、たしかに我々のような関係は少数派です。それでも互いを想う気持ちは、だれに羞じることも、負けることもないと胸を張って言うことができます。おふたりには今後、折りにつけ世間体の悪い、気まずい思いをさせてしまうことと思います。それだけは心苦しく、申し訳ないと思っています。ですがそれでも、あなたがたは莉音にとって唯一の身内で、かけがえのない存在。おふたりを蔑ろにすることは到底できません。できうるならば、おふたりにも我々を認めていただきたいのです。莉音のことは、生涯をかけて愛し抜くと誓います。どうか我々の関係を、受け容れていただくことはできないでしょうか?」
ヴィンセントは、そう言って深々と頭を下げた。その横で、莉音もまた同様に頭を下げた。
「おじいちゃん、おばあちゃん、僕からもお願いします。アルフさんとのこと、どうか許してください! 僕にとって、アルフさんはおじいちゃんたちとおなじくらい大切な人なんです。僕もおじいちゃんに反対されたまま、東京に帰りたくない。またみんなでごはんを食べたり、一緒に旅行に行ったりしたい。二十歳になったら、おじいちゃんとアルフさんと、一緒にお酒も飲みたい。僕、おじいちゃんにもおばあちゃんにも、良い人に出逢えてよかったねって喜んでもらいたい。だからお願いします! 男同士だけど、非常識で気持ち悪いかもしれないけど、それでも僕がはじめて好きになった人だから……っ」
話しているうちに涙が溢れて、莉音はしゃくりあげた。
祖父はなおも黙りこんでいる。
「お父さん……」
いつまでもなにも言わない祖父に痺れを切らしたように、祖母が声をかけた。
「もういい」
唐突に言い放って、祖父はヴィンセントが差し出した書類を突き返した。
「おじいちゃんっ!?」
やはりどうしても、わかってもらうことはできないのだろうか。
莉音は絶望的な気分で祖父を見た。だが。
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