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第5章
第1話
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「莉音くん、やっぱしなにかあったやろ。俺じゃたいして頼りにならんと思うけど、相談乗るよ? 話聞くぐらいならできるし」
週刊誌のスクープを目にして二日。キッチンスタジオへ向かう車の中で、達哉が遠慮がちに話しかけてきた。
昨日の料理教室はさんざんだった。もちろん、手順を間違うなどの大きなミスはしていない。それでも懸命に笑顔で進行し、注意点を踏まえながら見本を示し、各調理台の様子を見てまわりながらアドバイスをしてとこれまでどおりに振る舞っていても、頭の中にずっとあの記事のことが占めていて離れなかった。
「莉音先生、もしかしち今日、調子悪い? 目ん下クマできちょんちゃ」
いつも教室がお開きになると真っ先に莉音の許へ飛んできて、大騒ぎしていく優那たち女子高生グループが、昨日は遠慮がちにそう訊ねて早々に引き上げていった。そんなことはないよ、大丈夫だからと応えたものの、なにか感じるところがあったのだろう。
まえの日の夜は、熱愛に関するネット記事をひと晩中検索していて一睡もできなかった。記事の中には、ふたりが抱き合っているところやキスをしているところも撮られていて、一緒に掲載されていた。
昨晩も頭が変に冴えてしまって、あまり眠れていない。ヴィンセントから毎日届いていたメッセージは、週刊誌が発売になった日からピタリと届かなくなった。おそらくは今日も、来ないだろう。
「すみません、達哉さん。ご心配おかけして。でも、大丈夫です」
「けど……」
信号で停止したタイミングで、達哉はなにか言いたげに助手席の莉音を見た。だが莉音はもう一度、大丈夫ですと告げた。
一週間つづいた料理教室も、明日で終わる。莉音が東京から来た今回かぎりの臨時講師ということもあって、イベントは思いのほかたくさんの関心を集め、盛り上がった。
睡眠は足りていないけれども、せっかく参加費を払って足を運んでくれる人たちに昨日のような醜態を見せるわけにはいかない。昨日のぶんを挽回するつもりで、残り二回、全力を出し切ろうと己に言い聞かせた。
これからのことについて結論を出すのは、そのあとでいい。ふた晩考えて、莉音の中ではある程度の気持ちはさだまっていた。
「こんにちは。講師を務めさせていただきます、佐倉です。今日もたくさんのご参加、ありがとうございます。一週間あった特別イベントも、今日を入れて残すところあと二日となってしまいました」
料理教室がはじまると同時に、莉音は講師用の調理台わきにあるホワイトボードのまえから挨拶をした。
「今日、はじめて参加される方も、期間中、何度もリピートしてくださっている皆さんも楽しい思い出になるよう、素敵な時間を一緒に過ごしていきましょう。残念ながら定員枠から漏れてしまって、それでも足を運んでくださった方にもレシピをお配りしていますので、ご自宅で実践していただけるようわかりやすい説明を心がけますね。なにかわからないことや気になることがあれば、見学の方でもかまいませんので遠慮なくお声がけください。本日もどうぞよろしくお願いします。それでは早速、今日のメニューについて簡単に流れを説明していきますが――」
今日も参加者は定員に達しており、見学者は二十人ほどまで増えている。
もう絶対に中途半端な内容にはしない。
気持ちを引き締めて、莉音は調理台に移動した。
週刊誌のスクープを目にして二日。キッチンスタジオへ向かう車の中で、達哉が遠慮がちに話しかけてきた。
昨日の料理教室はさんざんだった。もちろん、手順を間違うなどの大きなミスはしていない。それでも懸命に笑顔で進行し、注意点を踏まえながら見本を示し、各調理台の様子を見てまわりながらアドバイスをしてとこれまでどおりに振る舞っていても、頭の中にずっとあの記事のことが占めていて離れなかった。
「莉音先生、もしかしち今日、調子悪い? 目ん下クマできちょんちゃ」
いつも教室がお開きになると真っ先に莉音の許へ飛んできて、大騒ぎしていく優那たち女子高生グループが、昨日は遠慮がちにそう訊ねて早々に引き上げていった。そんなことはないよ、大丈夫だからと応えたものの、なにか感じるところがあったのだろう。
まえの日の夜は、熱愛に関するネット記事をひと晩中検索していて一睡もできなかった。記事の中には、ふたりが抱き合っているところやキスをしているところも撮られていて、一緒に掲載されていた。
昨晩も頭が変に冴えてしまって、あまり眠れていない。ヴィンセントから毎日届いていたメッセージは、週刊誌が発売になった日からピタリと届かなくなった。おそらくは今日も、来ないだろう。
「すみません、達哉さん。ご心配おかけして。でも、大丈夫です」
「けど……」
信号で停止したタイミングで、達哉はなにか言いたげに助手席の莉音を見た。だが莉音はもう一度、大丈夫ですと告げた。
一週間つづいた料理教室も、明日で終わる。莉音が東京から来た今回かぎりの臨時講師ということもあって、イベントは思いのほかたくさんの関心を集め、盛り上がった。
睡眠は足りていないけれども、せっかく参加費を払って足を運んでくれる人たちに昨日のような醜態を見せるわけにはいかない。昨日のぶんを挽回するつもりで、残り二回、全力を出し切ろうと己に言い聞かせた。
これからのことについて結論を出すのは、そのあとでいい。ふた晩考えて、莉音の中ではある程度の気持ちはさだまっていた。
「こんにちは。講師を務めさせていただきます、佐倉です。今日もたくさんのご参加、ありがとうございます。一週間あった特別イベントも、今日を入れて残すところあと二日となってしまいました」
料理教室がはじまると同時に、莉音は講師用の調理台わきにあるホワイトボードのまえから挨拶をした。
「今日、はじめて参加される方も、期間中、何度もリピートしてくださっている皆さんも楽しい思い出になるよう、素敵な時間を一緒に過ごしていきましょう。残念ながら定員枠から漏れてしまって、それでも足を運んでくださった方にもレシピをお配りしていますので、ご自宅で実践していただけるようわかりやすい説明を心がけますね。なにかわからないことや気になることがあれば、見学の方でもかまいませんので遠慮なくお声がけください。本日もどうぞよろしくお願いします。それでは早速、今日のメニューについて簡単に流れを説明していきますが――」
今日も参加者は定員に達しており、見学者は二十人ほどまで増えている。
もう絶対に中途半端な内容にはしない。
気持ちを引き締めて、莉音は調理台に移動した。
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