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第4章
第2話(2)
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「ねえ、先生、こんあと、うちらとお茶せん? もっといろいろ聞かせちよ」
「あ! それいいやん! どうせならカラオケやらも行く?」
「あ、え~と、ごめんね。明日の準備もあるから、ちょっと無理かな」
「え~っ、つまらぁん! もっと話ししてえっ」
「先生、付き合うちょん人やらおらんの? 恋バナしよ、恋バナ!」
「あ~、それメッチャ気になる~~~っっ!!」
「莉音先生んごたる人が好きになるって、どげな人やろ」
「あ、えっと、そういうのは……」
「こぉら、おまえら、いい加減そのへんにしちょけよ」
莉音が女子高生たちの勢いにすっかり押され気味になっていたところへ、タイミングよく助け船が入った。振り返ったひとりが「げっ、出た……」と呟く。会話に割って入ったのは田中家の長男、達哉だった。
「なんや優那、人ん顔見るなり『げっ』ってんな」
「え~、だって、せっかくいいとこやったんに」
「せっかくじゃねえやろ。莉音先生、困っちょったやろうが」
「そんなことないもん。楽しく話してただけだもん」
ねえ?と同意を求められて、莉音は「いや、まあ……」と口を濁した。
「でも、ごめんね。誘ってもらえたのは嬉しいけど、このあともいろいろやることがあるから」
「ほらな。おまえらと違うち莉音先生は忙しいんちゃ。大体おまえらも、せっかく作った料理、早う持っち帰らなダメになるやろ」
「え~、でも先生の恋バナぁ!」
「料理以外ん質問は受けつけちょりませぇん」
「もぉっ、なんでタツ兄が仕切っちょんの」
帰れ帰れと追い払われて、少女たちは不平を鳴らしながらも調理台に荷物を取りに行く。タッパーに蓋をしてバッグにしまう途中で、優那と呼ばれた少女が顔を上げた。
「あ、そうだ先生、うちら明日もまた来るけん。っちゅうか、最終日まであと三日、全部来るつもりやけん、そんつもりでいて」
その言葉に莉音は目をまるくした。
「え、でも参加費用、一回二千円だよ? 大丈夫?」
少女たちはイベント二日目から参加していて、今日で三日目である。さすがに負担が大きいのではと心配になった。だが、彼女たちはあっけらかんと笑った。
「平気~! なんかね、変なとこ行っち危ねえ奴らとつるむ、やらになるより健全で全然いいっち、お父さんが参加費出しちくれた」
「うちも~。花嫁修業ん一環やち思やあ高うねえっち」
「うちは帰宅部だから、夏休み中バイトしまくっち結構稼いだけん大丈夫」
それぞれに言って、だから明日も来るねと手を振る。
「莉音先生はうちらの推しやけん、推し活~!」
賑やかに言って帰っていった。達哉が、なにを言ってるんだかと苦笑する。その隣で莉音も笑った。
優那の兄と達哉は高校時代の同級生で、彼女が小学生のころからの顔馴染みであったらしい。
参加者が引き上げたところから、忘れ物の確認も兼ねて役所の担当者が清掃をはじめているので、莉音も大急ぎで片付けに入った。
「すみません、達哉さん。今日も送り迎えしていただいて」
作業をしながら莉音が言うと、達哉はいやいやとおおらかに笑った。
「家におってもどうせ暇やし、なんなら畑ん手伝いさせらるるけん、莉音くんの運転手させてもらうほうが全然いいんでなぁ」
お盆休みは気が向いたら帰る。優子との電話口でそう言っていた達哉は、料理教室初日の夜に大阪から帰省したそうだ。そんなわけで、初日は優子の送迎でキッチンスタジオと祖父の家を往き来したが、二日目以降から、優子の命令で達哉が車を出してくれることになっていた。
せっかくの帰省で、地元の友人たちとも予定があるのではないかと恐縮したが、皆、都心部で就職していたり、地元にいても昼間は仕事だったりで夜に集まるほうが多いらしい。再会できたのが嬉しいからと、達哉は快く運転手役を買って出てくれた。
「あ! それいいやん! どうせならカラオケやらも行く?」
「あ、え~と、ごめんね。明日の準備もあるから、ちょっと無理かな」
「え~っ、つまらぁん! もっと話ししてえっ」
「先生、付き合うちょん人やらおらんの? 恋バナしよ、恋バナ!」
「あ~、それメッチャ気になる~~~っっ!!」
「莉音先生んごたる人が好きになるって、どげな人やろ」
「あ、えっと、そういうのは……」
「こぉら、おまえら、いい加減そのへんにしちょけよ」
莉音が女子高生たちの勢いにすっかり押され気味になっていたところへ、タイミングよく助け船が入った。振り返ったひとりが「げっ、出た……」と呟く。会話に割って入ったのは田中家の長男、達哉だった。
「なんや優那、人ん顔見るなり『げっ』ってんな」
「え~、だって、せっかくいいとこやったんに」
「せっかくじゃねえやろ。莉音先生、困っちょったやろうが」
「そんなことないもん。楽しく話してただけだもん」
ねえ?と同意を求められて、莉音は「いや、まあ……」と口を濁した。
「でも、ごめんね。誘ってもらえたのは嬉しいけど、このあともいろいろやることがあるから」
「ほらな。おまえらと違うち莉音先生は忙しいんちゃ。大体おまえらも、せっかく作った料理、早う持っち帰らなダメになるやろ」
「え~、でも先生の恋バナぁ!」
「料理以外ん質問は受けつけちょりませぇん」
「もぉっ、なんでタツ兄が仕切っちょんの」
帰れ帰れと追い払われて、少女たちは不平を鳴らしながらも調理台に荷物を取りに行く。タッパーに蓋をしてバッグにしまう途中で、優那と呼ばれた少女が顔を上げた。
「あ、そうだ先生、うちら明日もまた来るけん。っちゅうか、最終日まであと三日、全部来るつもりやけん、そんつもりでいて」
その言葉に莉音は目をまるくした。
「え、でも参加費用、一回二千円だよ? 大丈夫?」
少女たちはイベント二日目から参加していて、今日で三日目である。さすがに負担が大きいのではと心配になった。だが、彼女たちはあっけらかんと笑った。
「平気~! なんかね、変なとこ行っち危ねえ奴らとつるむ、やらになるより健全で全然いいっち、お父さんが参加費出しちくれた」
「うちも~。花嫁修業ん一環やち思やあ高うねえっち」
「うちは帰宅部だから、夏休み中バイトしまくっち結構稼いだけん大丈夫」
それぞれに言って、だから明日も来るねと手を振る。
「莉音先生はうちらの推しやけん、推し活~!」
賑やかに言って帰っていった。達哉が、なにを言ってるんだかと苦笑する。その隣で莉音も笑った。
優那の兄と達哉は高校時代の同級生で、彼女が小学生のころからの顔馴染みであったらしい。
参加者が引き上げたところから、忘れ物の確認も兼ねて役所の担当者が清掃をはじめているので、莉音も大急ぎで片付けに入った。
「すみません、達哉さん。今日も送り迎えしていただいて」
作業をしながら莉音が言うと、達哉はいやいやとおおらかに笑った。
「家におってもどうせ暇やし、なんなら畑ん手伝いさせらるるけん、莉音くんの運転手させてもらうほうが全然いいんでなぁ」
お盆休みは気が向いたら帰る。優子との電話口でそう言っていた達哉は、料理教室初日の夜に大阪から帰省したそうだ。そんなわけで、初日は優子の送迎でキッチンスタジオと祖父の家を往き来したが、二日目以降から、優子の命令で達哉が車を出してくれることになっていた。
せっかくの帰省で、地元の友人たちとも予定があるのではないかと恐縮したが、皆、都心部で就職していたり、地元にいても昼間は仕事だったりで夜に集まるほうが多いらしい。再会できたのが嬉しいからと、達哉は快く運転手役を買って出てくれた。
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