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第3章
第1話(4)
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「本当ん娘んごつ思うちょったけん、武造さんも随分気落ちしちなぁ。なにより、独り遺された孫が不憫やと心配じ堪らんようやった」
だからこそ、祖父母は新盆に合わせてわざわざ訪ねてきてくれたのだ。突然引っ越したことも、さらなる心配に繋がったのだろう。
「突然東京に来るって連絡があったときはびっくりしたけど、でも、初盆に合わせて来てもらって、すごく嬉しかったです」
莉音の言葉に、老人はそうやろそうやろと目を細めた。
「心配やったんもあったやろうけんど、まじいちばんに、あんたに会いたかったんじゃろうねぇ」
思い出したように老人は笑った。
「最初はすぐ帰るっち言いよったんに、途中でんうしばらくこっちにおるって連絡が来たもんやけん、畑ん様子はこっちで見ちゃん。せっかくやけん、孫とゆっくり楽しんじこいっち言うたら、武造さん、そりゃもう嬉しそうに、ほいだら頼むわっち言うちなぁ」
あげえはしゃいだ様子んあん人は、はじめてやった。
楽しげに笑う老人の話を聞いて、莉音は胸が痛くなった。
そうだ、祖母も祖父も、ずっと楽しそうにしてくれていた。最後の最後であんなことになって、祖父に頭ごなしに否定され、ひどい言葉を浴びせられたことに腹を立てていたけれど、それだけ祖父は、自分を心配してくれたということなのだろう。
祖父の言葉と態度には深く傷ついたが、祖父もまた、受け容れがたい事実をまえに混乱し、どうしていいかわからなくなっていたのだ。祖父からすれば、期待を裏切ったのは自分のほうだったのかもしれない。それでも。
やはり自分は、ヴィンセントとの関係を断ち切ることはできないと思った。
祖父には、到底理解できないことだろう。自分でさえも、ヴィンセントと出逢うまで、同性を好きになる日がくるとは思いもしなかったのだから。
けれども、だれにどれだけ反対されたとしても、彼を求める気持ちに蓋をすることはできなかった。そういう相手と、自分は出逢ってしまったのだ。
自分が傷ついたように、祖父もショックを受けたに違いない。
たとえ認めてもらうことができないとしても、自分を想ってくれる祖父の気持ちを踏みにじることだけはしたくなかった。少しでもわかってもらえるように、自分から歩み寄る努力をしてみよう。あらためてそう思った。
「あんた、お母さんと一緒じ料理が上手らしいなあ。武造さんが以前、自慢しちょった」
よかったら持っていけと、老人は収穫したばかりの夏野菜を足もとにあった段ボールに詰めて莉音に差し出した。トウモロコシ、茄子、トマト、キュウリ、ピーマン、ズッキーニ。
「えっ、あ、いえっ。そんな……」
「いいけんいいけん」
老人は遠慮する暇も与えぬうちに、莉音の腕の中に箱を押しつけてくる。
「まあ、武造さんとこん畑でん作っちょんけんど、儂ん気持ちやち思うち持っちいけ」
「い、いいんですか? せっかく収穫されたのに、こんなにたくさん……」
「いいけんいいけん。武造さんな茄子が好きやけん、なにか美味えもんでん作っちやっちくりい」
「ありがとうございます。あの、それじゃあ遠慮なく」
ずっしりと重い段ボール箱を抱えたまま莉音が頭を下げると、老人は細い目をさらにしわしわにしながら細めて満足げに頷いた。
だからこそ、祖父母は新盆に合わせてわざわざ訪ねてきてくれたのだ。突然引っ越したことも、さらなる心配に繋がったのだろう。
「突然東京に来るって連絡があったときはびっくりしたけど、でも、初盆に合わせて来てもらって、すごく嬉しかったです」
莉音の言葉に、老人はそうやろそうやろと目を細めた。
「心配やったんもあったやろうけんど、まじいちばんに、あんたに会いたかったんじゃろうねぇ」
思い出したように老人は笑った。
「最初はすぐ帰るっち言いよったんに、途中でんうしばらくこっちにおるって連絡が来たもんやけん、畑ん様子はこっちで見ちゃん。せっかくやけん、孫とゆっくり楽しんじこいっち言うたら、武造さん、そりゃもう嬉しそうに、ほいだら頼むわっち言うちなぁ」
あげえはしゃいだ様子んあん人は、はじめてやった。
楽しげに笑う老人の話を聞いて、莉音は胸が痛くなった。
そうだ、祖母も祖父も、ずっと楽しそうにしてくれていた。最後の最後であんなことになって、祖父に頭ごなしに否定され、ひどい言葉を浴びせられたことに腹を立てていたけれど、それだけ祖父は、自分を心配してくれたということなのだろう。
祖父の言葉と態度には深く傷ついたが、祖父もまた、受け容れがたい事実をまえに混乱し、どうしていいかわからなくなっていたのだ。祖父からすれば、期待を裏切ったのは自分のほうだったのかもしれない。それでも。
やはり自分は、ヴィンセントとの関係を断ち切ることはできないと思った。
祖父には、到底理解できないことだろう。自分でさえも、ヴィンセントと出逢うまで、同性を好きになる日がくるとは思いもしなかったのだから。
けれども、だれにどれだけ反対されたとしても、彼を求める気持ちに蓋をすることはできなかった。そういう相手と、自分は出逢ってしまったのだ。
自分が傷ついたように、祖父もショックを受けたに違いない。
たとえ認めてもらうことができないとしても、自分を想ってくれる祖父の気持ちを踏みにじることだけはしたくなかった。少しでもわかってもらえるように、自分から歩み寄る努力をしてみよう。あらためてそう思った。
「あんた、お母さんと一緒じ料理が上手らしいなあ。武造さんが以前、自慢しちょった」
よかったら持っていけと、老人は収穫したばかりの夏野菜を足もとにあった段ボールに詰めて莉音に差し出した。トウモロコシ、茄子、トマト、キュウリ、ピーマン、ズッキーニ。
「えっ、あ、いえっ。そんな……」
「いいけんいいけん」
老人は遠慮する暇も与えぬうちに、莉音の腕の中に箱を押しつけてくる。
「まあ、武造さんとこん畑でん作っちょんけんど、儂ん気持ちやち思うち持っちいけ」
「い、いいんですか? せっかく収穫されたのに、こんなにたくさん……」
「いいけんいいけん。武造さんな茄子が好きやけん、なにか美味えもんでん作っちやっちくりい」
「ありがとうございます。あの、それじゃあ遠慮なく」
ずっしりと重い段ボール箱を抱えたまま莉音が頭を下げると、老人は細い目をさらにしわしわにしながら細めて満足げに頷いた。
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