37 / 52
第4章
世界の調和と盟主の役割(6)
しおりを挟む
「あ、いや。誓って変な意味はない。あんたにとっては、エルディラントこそが唯一の相手だってことは俺もちゃんとわかってる。ただ、あんたもこうして倒れてるだろ? それなら、互いのエネルギーの飽和状態を解消していく必要があるんじゃないかと思ったんだ。もちろん、さっき躰を密着させたことで体調が落ち着いたなら、それでかまわない」
言って離れようとすると、白い指先が縋るように服の裾を掴んだ。
「あっ! えっと……、その……」
自分で自分の行動に驚いたようにリュシエルはパッと手を引っこめた。反射的なものだったのだろう。
「ひょっとして、まだ完全にはよくなってないか?」
尋ねると、リュシエルは気まずそうに視線を落としながらも頷いた。
「わかった。いまの俺でも、あんたの体調を整えてやれるってことでいいんだよな?」
その問いかけにも小さく頷く。
「それで俺は、どうすればいい? というか、やりかたは? さっきみたいに抱きしめて、躰を密着させればいいのか? それとも、あんたが俺にしてくれたのとおなじ方法?」
その質問には、小さな声が返ってきた。
「その、そなたは……、嫌ではないのか?」
「嫌? なにに対して?」
「だから、我とそ、ういう…こと、を……するのが」
「あ~、つまり、抱き合ったりキスしたりってこと?」
言いかたが直截すぎたのか、リュシエルは首を竦めてギュッと目を瞑り、顔を赤くしながらうんうんと何度も頷いた。
「いや、これが性的なニュアンスを含んでるならさすがにまずいかなって思うけど、普通に治療の一環ってことだろ? おたくだって、それで俺に処置してくれたわけだし。今後のためにも、お互い不調になるのを防げるなら必要な対応かと思ったんだが、間違った認識だったか?」
「ま、ちがっては、いない」
「うん、ならよかった。あ、あとあんたが倒れる原因になったエルディラントの手記を探る件だが、あんたがあそこまで嫌がって反対するなら、無理にはしない。なにか別の手段を考えよう」
青い瞳が驚いたようにまっすぐこちらに向けられる。だが、すぐに視線が落ちた。
「その件については、我も少し、感情的になりすぎたと反省してる。そなたが最善と考えるなら、任せようと思う」
「それは、実際に見つけたら、中身を確認してもかまわないってことか?」
リュシエルは頷いた。
「わかった、それなら探してみることにする。エルディラントが無事に戻ってきたら、俺が勝手にやったってことにしてもらってかまわないから。実際、思いついたのも、私物を漁るのも俺だしな」
「そ、そなたひとりの責任にはできない。そなたの提案を受け入れたのは我だから」
「そうか。それじゃあとりあえず、連帯責任ってことにしておくか。まあ、なりゆき次第では、俺が全責任をかぶるほうがまるくおさまるかもしれないし、そのときはそのときってことで」
リュシエルはわかったと了承した。
「よし。そうすると、まずは体調を整えることからはじめないとな。お互い、いつ倒れるかわからない状態だと問題解決どころの話じゃなくなるし、おたくの従兄の監視の目が、これ以上厳しくなるのも困る。それ以前に、襲撃にも対処できるようにしておかないとな」
体調が万全でなかったばっかりに、襲われて借り物の躰に致命傷を負うなんてことは避けたいし、リュシエルを護りきれなかったなんてのは論外だった。
いろいろ厄介だと苦笑が漏れた。
言って離れようとすると、白い指先が縋るように服の裾を掴んだ。
「あっ! えっと……、その……」
自分で自分の行動に驚いたようにリュシエルはパッと手を引っこめた。反射的なものだったのだろう。
「ひょっとして、まだ完全にはよくなってないか?」
尋ねると、リュシエルは気まずそうに視線を落としながらも頷いた。
「わかった。いまの俺でも、あんたの体調を整えてやれるってことでいいんだよな?」
その問いかけにも小さく頷く。
「それで俺は、どうすればいい? というか、やりかたは? さっきみたいに抱きしめて、躰を密着させればいいのか? それとも、あんたが俺にしてくれたのとおなじ方法?」
その質問には、小さな声が返ってきた。
「その、そなたは……、嫌ではないのか?」
「嫌? なにに対して?」
「だから、我とそ、ういう…こと、を……するのが」
「あ~、つまり、抱き合ったりキスしたりってこと?」
言いかたが直截すぎたのか、リュシエルは首を竦めてギュッと目を瞑り、顔を赤くしながらうんうんと何度も頷いた。
「いや、これが性的なニュアンスを含んでるならさすがにまずいかなって思うけど、普通に治療の一環ってことだろ? おたくだって、それで俺に処置してくれたわけだし。今後のためにも、お互い不調になるのを防げるなら必要な対応かと思ったんだが、間違った認識だったか?」
「ま、ちがっては、いない」
「うん、ならよかった。あ、あとあんたが倒れる原因になったエルディラントの手記を探る件だが、あんたがあそこまで嫌がって反対するなら、無理にはしない。なにか別の手段を考えよう」
青い瞳が驚いたようにまっすぐこちらに向けられる。だが、すぐに視線が落ちた。
「その件については、我も少し、感情的になりすぎたと反省してる。そなたが最善と考えるなら、任せようと思う」
「それは、実際に見つけたら、中身を確認してもかまわないってことか?」
リュシエルは頷いた。
「わかった、それなら探してみることにする。エルディラントが無事に戻ってきたら、俺が勝手にやったってことにしてもらってかまわないから。実際、思いついたのも、私物を漁るのも俺だしな」
「そ、そなたひとりの責任にはできない。そなたの提案を受け入れたのは我だから」
「そうか。それじゃあとりあえず、連帯責任ってことにしておくか。まあ、なりゆき次第では、俺が全責任をかぶるほうがまるくおさまるかもしれないし、そのときはそのときってことで」
リュシエルはわかったと了承した。
「よし。そうすると、まずは体調を整えることからはじめないとな。お互い、いつ倒れるかわからない状態だと問題解決どころの話じゃなくなるし、おたくの従兄の監視の目が、これ以上厳しくなるのも困る。それ以前に、襲撃にも対処できるようにしておかないとな」
体調が万全でなかったばっかりに、襲われて借り物の躰に致命傷を負うなんてことは避けたいし、リュシエルを護りきれなかったなんてのは論外だった。
いろいろ厄介だと苦笑が漏れた。
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛玩人形
誠奈
BL
そろそろ季節も春を迎えようとしていたある夜、僕の前に突然天使が現れた。
父様はその子を僕の妹だと言った。
僕は妹を……智子をとても可愛がり、智子も僕に懐いてくれた。
僕は智子に「兄ちゃま」と呼ばれることが、むず痒くもあり、また嬉しくもあった。
智子は僕の宝物だった。
でも思春期を迎える頃、智子に対する僕の感情は変化を始め……
やがて智子の身体と、そして両親の秘密を知ることになる。
※この作品は、過去に他サイトにて公開したものを、加筆修正及び、作者名を変更して公開しております。
王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺
高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる