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第4章

世界の調和と盟主の役割(6)

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「あ、いや。誓って変な意味はない。あんたにとっては、エルディラントこそが唯一の相手だってことは俺もちゃんとわかってる。ただ、あんたもこうして倒れてるだろ? それなら、互いのエネルギーの飽和状態を解消していく必要があるんじゃないかと思ったんだ。もちろん、さっき躰を密着させたことで体調が落ち着いたなら、それでかまわない」
 言って離れようとすると、白い指先がすがるように服の裾を掴んだ。

「あっ! えっと……、その……」
 自分で自分の行動に驚いたようにリュシエルはパッと手を引っこめた。反射的なものだったのだろう。

「ひょっとして、まだ完全にはよくなってないか?」
 尋ねると、リュシエルは気まずそうに視線を落としながらも頷いた。

「わかった。いまの俺でも、あんたの体調を整えてやれるってことでいいんだよな?」
 その問いかけにも小さく頷く。
「それで俺は、どうすればいい? というか、やりかたは? さっきみたいに抱きしめて、躰を密着させればいいのか? それとも、あんたが俺にしてくれたのとおなじ方法?」

 その質問には、小さな声が返ってきた。

「その、そなたは……、嫌ではないのか?」
「嫌? なにに対して?」
「だから、我とそ、ういう…こと、を……するのが」
「あ~、つまり、抱き合ったりキスしたりってこと?」

 言いかたが直截ちょくせつすぎたのか、リュシエルは首を竦めてギュッと目を瞑り、顔を赤くしながらうんうんと何度も頷いた。

「いや、これが性的なニュアンスを含んでるならさすがにまずいかなって思うけど、普通に治療の一環ってことだろ? おたくだって、それで俺に処置してくれたわけだし。今後のためにも、お互い不調になるのを防げるなら必要な対応かと思ったんだが、間違った認識だったか?」
「ま、ちがっては、いない」
「うん、ならよかった。あ、あとあんたが倒れる原因になったエルディラントの手記を探る件だが、あんたがあそこまで嫌がって反対するなら、無理にはしない。なにか別の手段を考えよう」

 青い瞳が驚いたようにまっすぐこちらに向けられる。だが、すぐに視線が落ちた。

「その件については、我も少し、感情的になりすぎたと反省してる。そなたが最善と考えるなら、任せようと思う」
「それは、実際に見つけたら、中身を確認してもかまわないってことか?」
 リュシエルは頷いた。

「わかった、それなら探してみることにする。エルディラントが無事に戻ってきたら、俺が勝手にやったってことにしてもらってかまわないから。実際、思いついたのも、私物を漁るのも俺だしな」
「そ、そなたひとりの責任にはできない。そなたの提案を受け入れたのは我だから」
「そうか。それじゃあとりあえず、連帯責任ってことにしておくか。まあ、なりゆき次第では、俺が全責任をかぶるほうがまるくおさまるかもしれないし、そのときはそのときってことで」
 リュシエルはわかったと了承した。

「よし。そうすると、まずは体調を整えることからはじめないとな。お互い、いつ倒れるかわからない状態だと問題解決どころの話じゃなくなるし、おたくの従兄の監視の目が、これ以上厳しくなるのも困る。それ以前に、襲撃にも対処できるようにしておかないとな」
 体調が万全でなかったばっかりに、襲われて借り物の躰に致命傷を負うなんてことは避けたいし、リュシエルを護りきれなかったなんてのは論外だった。
 いろいろ厄介だと苦笑が漏れた。
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