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【セルヴィス視点】変なスライムを拾った日
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───リリアーナがいなくなって10年。
今更人の住む町に戻るつもりもない。どうせ迫害されるだけだろうし、それなら出来るだけリリアーナを感じていたかった俺は、リリアーナの家に住み続けた。
畑を世話し、森で採取した材料で薬を作り、魔物を狩る。
時々は町に出て薬や魔物の素材なんかを決まった店で売り捌き、必要な物を買って帰る。
極たまに町や森の中でリリアーナを通して知り合った冒険者に出会うが、基本は誰とも話さない日々。
……出会ったばかりの頃、リリアーナは口下手だったっけ。
思い出した姿に、つい微笑む。あの時は威圧しか感じなかったけど、内心ではきっとパニックになってたんだろな。
100年もこんな生活をしてたなら、それは話し方も忘れるよな。
リリアーナの墓の前で、かつてのリリアーナに想いを馳せる。
そんな何の変化もない日々を暮らすオレの前に、ソイツは現れた。
「ピ、ピィィ~?」
「……。何だよ、お前?」
家の前の畑で薬草の手入れをしていると、スライムがゆっくりと近づいてきた。
まるで春の空のような薄い水色の小さなスライム。いや、なんでここにスライムが?
「ピィ! ピィピ、ピィ!ピィィ!」
「やけに人懐っこいスライムだな。大抵の魔物はここには近寄れないはずだけど……、変だな。」
興奮してる?のか、やたら鳴きながら足にすり寄ってくるスライム。顔も何もない魔物だけど、なんとなく動きを見てると喜んでいるような?
でもいくら人懐こくても魔物だ。近くにある湖から漂う清浄な空気は、大抵の魔物には不快に感じるらしく近寄らないとリリアーナが昔言っていたし、実際に近寄ってくる魔物は見た事がない。
リリアーナのような魔族ならともかく、弱いスライムがなぜ?
(ん?)
見ると足元のスライムは、全身が汚れだらけだ。
「ピィ!?」
「お前、随分ボロボロだな。」
持ち上げてみると、所々抉られたような跡や、表面がザラザラになってる部分もある。怪我?スライムは傷ついてもすぐに治るイメージだったけど……小さいし、もしかしたら生まれたてで治癒力が弱いとか?
「獣や他の魔物にでも追われたか?…仕方ない、治療してやるか。」
「ピ……!?」
別に放っておいても良いけど、こいつはすり寄ってきた時の姿といい、ピーピー鳴いてる姿といい…、魔物というより人懐こい小動物みたいで可愛いし、ちょっとだけ特別扱いしてやろうって気になった。
そんな気まぐれを起こした俺に、スライムは何故か驚いたように鳴いた───人間の言葉が理解できるのか?
いや、まさかね。知能の低いスライムにそんな芸当できるわけないか。
家にスライムを入れるために結界を解き、汚れを落とし治癒力を高める薬草を与えてやる。生態もよく知らないスライムに出来る治療なんてこの程度だけど、元々治療なんて必要ないくらい治癒力の高い魔物なんだから大丈夫だろ。
治療も終わったしと外に出そうとすると、スライムは俺の手にしがみつくようにくっついて離れない。
「ほら。治療は済んだし、森に帰りなよ。」
引っぺがすとピーピー鳴いて体の一部を触手のように伸ばして腕にしがみつこうとする。なんか駄々をこねる子供に見えてきた。
「いい?俺はお前を飼うつもりはないの。諦めて帰れ。」
わかるわけない、と思いつつ諭しながら家の外まで連れて行く。
まだ必死でしがみつこうとするスライムから逃げて、さっさと家の中に引っ込み結界を張り直した。
これであのスライムは、もうこの家に入ってこれない。
全く、変なスライムだったな。
暫くして窓から外を覗いてみると、まだスライムは家の前でジッとしていた。
「……ウソでしょ。」
何でまだいるの。まるで扉が開くのを待ってるみたいに……知能の低いスライムが?
いつまで経ってもスライムは家の前から離れない。夜が近くなってようやく移動したと思ったら、庭の片隅にある物置小屋の屋根の下で動かなくなってしまった。
その姿はまるで庭で飼われる犬のよう。
───野良犬に餌をやると家に居ついてしまうって聞いた事あるけどさ。まさかスライムもそうなのか?
結局そのスライムは一週間、雨の日だろうとひたすら庭に居続けた。
俺の姿を見つける度に嬉しそうに寄ってきて懐いてくる姿に、最初こそ出来るだけ冷たくあしらってたけど……まぁ、徐々に絆されてしまったんだよね。
それにコイツを見てるとリリアーナを彷彿とさせる。
リリアーナも尻尾振りまくるバカ犬みたいに俺に纏わりついてたし、どっか似てるんだよ。
あの馬鹿に似たところがある、人懐こいスライム。
気付けば俺は、まるでリリアーナに本当はしてやりたかったように、スライムの事を甘やかすようになっていた。
今更人の住む町に戻るつもりもない。どうせ迫害されるだけだろうし、それなら出来るだけリリアーナを感じていたかった俺は、リリアーナの家に住み続けた。
畑を世話し、森で採取した材料で薬を作り、魔物を狩る。
時々は町に出て薬や魔物の素材なんかを決まった店で売り捌き、必要な物を買って帰る。
極たまに町や森の中でリリアーナを通して知り合った冒険者に出会うが、基本は誰とも話さない日々。
……出会ったばかりの頃、リリアーナは口下手だったっけ。
思い出した姿に、つい微笑む。あの時は威圧しか感じなかったけど、内心ではきっとパニックになってたんだろな。
100年もこんな生活をしてたなら、それは話し方も忘れるよな。
リリアーナの墓の前で、かつてのリリアーナに想いを馳せる。
そんな何の変化もない日々を暮らすオレの前に、ソイツは現れた。
「ピ、ピィィ~?」
「……。何だよ、お前?」
家の前の畑で薬草の手入れをしていると、スライムがゆっくりと近づいてきた。
まるで春の空のような薄い水色の小さなスライム。いや、なんでここにスライムが?
「ピィ! ピィピ、ピィ!ピィィ!」
「やけに人懐っこいスライムだな。大抵の魔物はここには近寄れないはずだけど……、変だな。」
興奮してる?のか、やたら鳴きながら足にすり寄ってくるスライム。顔も何もない魔物だけど、なんとなく動きを見てると喜んでいるような?
でもいくら人懐こくても魔物だ。近くにある湖から漂う清浄な空気は、大抵の魔物には不快に感じるらしく近寄らないとリリアーナが昔言っていたし、実際に近寄ってくる魔物は見た事がない。
リリアーナのような魔族ならともかく、弱いスライムがなぜ?
(ん?)
見ると足元のスライムは、全身が汚れだらけだ。
「ピィ!?」
「お前、随分ボロボロだな。」
持ち上げてみると、所々抉られたような跡や、表面がザラザラになってる部分もある。怪我?スライムは傷ついてもすぐに治るイメージだったけど……小さいし、もしかしたら生まれたてで治癒力が弱いとか?
「獣や他の魔物にでも追われたか?…仕方ない、治療してやるか。」
「ピ……!?」
別に放っておいても良いけど、こいつはすり寄ってきた時の姿といい、ピーピー鳴いてる姿といい…、魔物というより人懐こい小動物みたいで可愛いし、ちょっとだけ特別扱いしてやろうって気になった。
そんな気まぐれを起こした俺に、スライムは何故か驚いたように鳴いた───人間の言葉が理解できるのか?
いや、まさかね。知能の低いスライムにそんな芸当できるわけないか。
家にスライムを入れるために結界を解き、汚れを落とし治癒力を高める薬草を与えてやる。生態もよく知らないスライムに出来る治療なんてこの程度だけど、元々治療なんて必要ないくらい治癒力の高い魔物なんだから大丈夫だろ。
治療も終わったしと外に出そうとすると、スライムは俺の手にしがみつくようにくっついて離れない。
「ほら。治療は済んだし、森に帰りなよ。」
引っぺがすとピーピー鳴いて体の一部を触手のように伸ばして腕にしがみつこうとする。なんか駄々をこねる子供に見えてきた。
「いい?俺はお前を飼うつもりはないの。諦めて帰れ。」
わかるわけない、と思いつつ諭しながら家の外まで連れて行く。
まだ必死でしがみつこうとするスライムから逃げて、さっさと家の中に引っ込み結界を張り直した。
これであのスライムは、もうこの家に入ってこれない。
全く、変なスライムだったな。
暫くして窓から外を覗いてみると、まだスライムは家の前でジッとしていた。
「……ウソでしょ。」
何でまだいるの。まるで扉が開くのを待ってるみたいに……知能の低いスライムが?
いつまで経ってもスライムは家の前から離れない。夜が近くなってようやく移動したと思ったら、庭の片隅にある物置小屋の屋根の下で動かなくなってしまった。
その姿はまるで庭で飼われる犬のよう。
───野良犬に餌をやると家に居ついてしまうって聞いた事あるけどさ。まさかスライムもそうなのか?
結局そのスライムは一週間、雨の日だろうとひたすら庭に居続けた。
俺の姿を見つける度に嬉しそうに寄ってきて懐いてくる姿に、最初こそ出来るだけ冷たくあしらってたけど……まぁ、徐々に絆されてしまったんだよね。
それにコイツを見てるとリリアーナを彷彿とさせる。
リリアーナも尻尾振りまくるバカ犬みたいに俺に纏わりついてたし、どっか似てるんだよ。
あの馬鹿に似たところがある、人懐こいスライム。
気付けば俺は、まるでリリアーナに本当はしてやりたかったように、スライムの事を甘やかすようになっていた。
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