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29.叶えられた願い
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「ああ、嬉しいわ、リアン」
――あなただけの騎士になる。
リアンの誓いに、アリシアは恋する少女のように頬を赤らませた。感極まった様子で椅子から立ち上がり、侍女や他の騎士がいるというのにリアンに抱き着いてしまう。
「嬉しい。ようやく、ようやくわたくしの想いを受け取って下さったのね!」
「……王女殿下」
「だめよ。これからはアリシアと呼んで」
顔を上げて、子どものようにリアンにお願いすると、彼はほんの一瞬躊躇った後、「アリシア様」と呼んだ。
「アリシアだけでいいのに……でもいいわ。今はそれで許してあげる」
アリシアは嬉しかった。ずっと欲しかった彼が、ようやく自分だけのものになった。ようやく自分だけを見てくれる。あの忌まわしい女から引きはがすことができた!
(これもすべて、ジョナスのおかげね)
ちらりと後ろに控えているジョナスに目をやれば、彼は祝福するように微笑んでくれた。
「アリシア様。申し訳ありませんが、このことを国王陛下に報告しなければならないのです。少し席を外してもよろしいでしょうか」
「まぁ、そんなの他の騎士に任せればいいわ。おまえはわたくしのそばにいてちょうだい」
「自分の口で直接お伝えしたいのです」
じっと見つめられ、アリシアの胸はときめく。真摯な彼の態度はまるで結婚の報告をするようで、恋する少女はうっとりとした表情で頷いた。
「わかったわ。でもすぐ戻ってきてね」
「仰せのままに」
失礼します、と去っていく騎士の後ろ姿と入れ替わるようにして、ジョナスがそばへ寄ってきた。
「王女殿下。よかったですね」
「ええ。おまえのおかげよ、ジョナス」
やっぱり彼は頼りになる。彼がいれば、何でもアリシアの願いは叶う。
(リアンと結婚することも、夢じゃないかもしれないわ)
ジョナスも一度は反対したけれど、自分とリアンの仲を見れば考えを変えてくれるかもしれない。
「そういえば王女殿下。リアンはナタリー様のことに一言も触れませんでしたね」
「そうね。でも当然だわ。リアンはわたくしだけに忠誠を誓ったんですもの」
忠誠だけでなく、一人の女として愛される権利も。
「では王女殿下。聖女様はたった一人の幼馴染にも見捨てられてしまったということになりますね。今も必死に病人を治し続けているというのに」
「まぁ、そうなの?」
わざとらしく、アリシアは言った。いや、本当にナタリーのことなど忘れていたのだ。王都で流行っている原因不明の病も、自分に罹っていなければ関係のないことであった。
「彼女も気の毒ね」
「はい。彼女が疲労し続けても力を使えるのは、リアンというたった一人の味方がいるからです」
「あら、ではそれもお終いね。リアンはわたくしを選んだのですもの」
実際はアリシアがそう仕組ませたのだが、彼女は都合よく事実を書き換えた。自分の命令ではなく、リアン自らの意思でナタリーを捨て、アリシアを選んだのだと。
「絶望したナタリー様は自ら命を絶つかもしれません。愛する男に振られ、美しい王女殿下をお選びになったのですから」
ジョナスの悲嘆に満ちた声は、アリシアを寛大にさせた。リアンを手に入れたという満足感が、憐れんでやろうという気持ちにさせた。
「そうね。それはあまりにも可哀想だわ。少し、気にかけてやりなさい」
「お優しい王女殿下。リアンは見捨てたのに、あなただけは気にかけて差し上げる」
「ええ。もちろんよ。わたくしは王女なのですからね」
アリシアの答えに、ジョナスは満足そうに頷いたのだった。
――あなただけの騎士になる。
リアンの誓いに、アリシアは恋する少女のように頬を赤らませた。感極まった様子で椅子から立ち上がり、侍女や他の騎士がいるというのにリアンに抱き着いてしまう。
「嬉しい。ようやく、ようやくわたくしの想いを受け取って下さったのね!」
「……王女殿下」
「だめよ。これからはアリシアと呼んで」
顔を上げて、子どものようにリアンにお願いすると、彼はほんの一瞬躊躇った後、「アリシア様」と呼んだ。
「アリシアだけでいいのに……でもいいわ。今はそれで許してあげる」
アリシアは嬉しかった。ずっと欲しかった彼が、ようやく自分だけのものになった。ようやく自分だけを見てくれる。あの忌まわしい女から引きはがすことができた!
(これもすべて、ジョナスのおかげね)
ちらりと後ろに控えているジョナスに目をやれば、彼は祝福するように微笑んでくれた。
「アリシア様。申し訳ありませんが、このことを国王陛下に報告しなければならないのです。少し席を外してもよろしいでしょうか」
「まぁ、そんなの他の騎士に任せればいいわ。おまえはわたくしのそばにいてちょうだい」
「自分の口で直接お伝えしたいのです」
じっと見つめられ、アリシアの胸はときめく。真摯な彼の態度はまるで結婚の報告をするようで、恋する少女はうっとりとした表情で頷いた。
「わかったわ。でもすぐ戻ってきてね」
「仰せのままに」
失礼します、と去っていく騎士の後ろ姿と入れ替わるようにして、ジョナスがそばへ寄ってきた。
「王女殿下。よかったですね」
「ええ。おまえのおかげよ、ジョナス」
やっぱり彼は頼りになる。彼がいれば、何でもアリシアの願いは叶う。
(リアンと結婚することも、夢じゃないかもしれないわ)
ジョナスも一度は反対したけれど、自分とリアンの仲を見れば考えを変えてくれるかもしれない。
「そういえば王女殿下。リアンはナタリー様のことに一言も触れませんでしたね」
「そうね。でも当然だわ。リアンはわたくしだけに忠誠を誓ったんですもの」
忠誠だけでなく、一人の女として愛される権利も。
「では王女殿下。聖女様はたった一人の幼馴染にも見捨てられてしまったということになりますね。今も必死に病人を治し続けているというのに」
「まぁ、そうなの?」
わざとらしく、アリシアは言った。いや、本当にナタリーのことなど忘れていたのだ。王都で流行っている原因不明の病も、自分に罹っていなければ関係のないことであった。
「彼女も気の毒ね」
「はい。彼女が疲労し続けても力を使えるのは、リアンというたった一人の味方がいるからです」
「あら、ではそれもお終いね。リアンはわたくしを選んだのですもの」
実際はアリシアがそう仕組ませたのだが、彼女は都合よく事実を書き換えた。自分の命令ではなく、リアン自らの意思でナタリーを捨て、アリシアを選んだのだと。
「絶望したナタリー様は自ら命を絶つかもしれません。愛する男に振られ、美しい王女殿下をお選びになったのですから」
ジョナスの悲嘆に満ちた声は、アリシアを寛大にさせた。リアンを手に入れたという満足感が、憐れんでやろうという気持ちにさせた。
「そうね。それはあまりにも可哀想だわ。少し、気にかけてやりなさい」
「お優しい王女殿下。リアンは見捨てたのに、あなただけは気にかけて差し上げる」
「ええ。もちろんよ。わたくしは王女なのですからね」
アリシアの答えに、ジョナスは満足そうに頷いたのだった。
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