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31、選ばれる人間*
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マティルダが我慢できなかったのはオズワルドに媚薬入りの茶を飲ませられていたからだ。それに加えていつもの粒を中に入れて出かけられたから、待っている間彼女は気が狂いそうになった。
キースが以前よりも頻繁に訪問するようになってから、オズワルドの仕置きは厳しくなったように思う。また以前のように後ろから抱いてくれず、目を閉じることも許してくれなくなった。毎回明け方近くまで抱かれ続け、昼夜の感覚が狂わされる。
「今度、あなたが欲しがっていたものをあげます」
散々よがらされ、生まれたままの姿でマティルダはオズワルドに抱きしめられていた。
「なにかしら……」
「あなたが以前欲しいと口にしたものです」
ちらりとオズワルドの方を振り返る。彼の目は明るくなり始めた部屋の中で妖しく光って見えた。
「欲しいなら、俺の言うことを聞いてください」
『今まで私がシェイラを罰するのは、二人の間だけであった。オズワルドの前で試すようなことはしても、弟の前でシェイラを抱く勇気はなかった』
◇
「マティルダ。大丈夫……?」
「ええ、大丈夫、です……」
ゴトゴトと揺れる馬車の中、マティルダは薄っすらと汗をかきながらも向かいに座るシェイラに微笑んでみせた。
「辛いなら、私に寄りかかっているといい」
隣に座っていたオズワルドにそう言われたが、マティルダは緩く首を振った。
「大丈夫ですわ。少し、緊張しているだけですから……」
その時、ガタンと馬車が揺れた。
(っ……)
「マティルダ……?」
突然びくりと身体を震わせたマティルダにシェイラが困惑した声をあげる。マティルダは小さく息を吐きながらなんとか笑みを作ろうとする。
「何でもありません。だじょうぶ、です」
「……」
しかしシェイラの表情は晴れなかった。むしろ彼女の目は確信に近づいていく。
『オズワルドの前に発情したシェイラを差し出した。シェイラはオズワルドに助けを求めるか、オズワルドは極上の餌に飛びつくか……二人を試し、自身の心を粉々に砕こうとしていた』
「オズワルド。あなた……」
消え入りそうな声でシェイラが呟き、傷つき、怯えの混じった瞳でオズワルドを見つめる。だが、彼は気づかなかった。気づいても、もはやどうでもよかったのだ。
彼の関心は、マティルダがキースの前でどういう態度をとるかだけだったから。
かつてデイヴィッドが自分の妻にしたのと同じように。
「マティルダ!」
公爵邸に到着すると同時にキースがマティルダを迎えに現れた。いつもなら彼にエスコートを任せるところだが、今日は違った。
「失礼、インブリー公爵。妻はまだ病み上がりなので今日は私が付き添います。代わりにシェイラのエスコートをお願いします」
その言葉にキースだけでなく、中にいたシェイラも驚愕した。彼女の方が驚いたかもしれない。今までずっと正妻よりも自分を優先してきてくれたオズワルドが他の男に任せようとしている。
計り知れないほどの衝撃だっただろう。ちらりと振り返れば、信じられず呆然としていた。
「さぁ、行こう」
オズワルドは周りのことなど目に入っていない様子でマティルダの手を引く。
「マティルダ……っ」
我に返ったキースが慌てて声をかける。彼に触れられそうになって、とっさにマティルダはオズワルドに縋った。それにキースがはっきりと傷ついた表情を浮かべる。
「ごめんなさい、キース……また、後で話しましょう」
置き去りにされるキースたちからマティルダとオズワルドは遠ざかっていく。彼女は早く彼らから離れたかった。そうでなければ自分は……しな垂れかかるようにオズワルドにくっついて歩いていると、彼は腰に回していたスッと撫でてくる。
「っ……だめ、オズワルドさま……」
ここではやめて、と震える声で頼む。声もなく彼が笑って、囁いた。
「後で彼と話す時も気をつけてください」
そうでないとばれてしまいますよ、と言われマティルダは歯を食いしばった。
今回の夜会にはパメラが参加していなかった。そのことに安堵すると同時に、もし彼女がいたら自分の異変に真っ先に気づいてくれたかもしれないと夫人たちに囲まれながら思った。
「マティルダ? どうしたの?」
「いえ、何でもないわ」
「もう。さっきからそればっかり!」
オズワルドは最初こそエスコートしてくれたが、途中で知り合いに呼びとめられ、マティルダも友人に声をかけられて別行動となった。そして結局シェイラが今はオズワルドの隣にいる。
彼の考えていることがわからない。ただ、自分を苦しめたいだけなのか。それとも……。
「喉でも乾いたの? 顔が赤いわよ」
冷たい飲み物を勧められ、ありがとうと微笑む。
(このまま、ここにいればなんとか……)
しかし飲み物を口にしてしばらくすると、先ほどよりも身体が火照ってきた。喉が渇いて、また口にするが、一向に熱が収まらない。その逆になる。
(これ……お酒だわ……)
酒を飲んだことがないわけではないが、アルコール度数が高いのか、強い刺激となって身体を責め苛む。
「マティルダ。大丈夫かい」
遠目からずっと様子を見守っていたのか、キースがマティルダの隣に座ってくる。手がほんの少し触れただけで、ぴくりと肩を震わせた。
(だめ……)
理性が醜態を晒すなと訴えている。こんな人前で……
「熱でもあるんじゃないか」
キースが手を伸ばし、額に触れる。ひんやりとした冷たさが心地よくて……。
「キース……」
彼が息を呑んだ。自分は今、どんな顔をしているだろうか。
「……マティルダ。具合が悪いなら、無理しないで」
そう言って席を立たされる。幸い誰も疑っていない様子だった。
「マティルダ。あと少しだよ。すぐに楽になれる」
オズワルドがなぞった腰のくびれを今度はキースの指が支える。
(もう、だれでもいい……)
手を差し伸べてくれるのならば、この熱を冷ましてくれるなら……
「マティルダ」
しかしあと少しで人気のない廊下に出ようとしたところで、呼びとめられる。
「オズワルド。奥方が具合が悪いようだから部屋で休ませてくるよ。きみはそこにいるといい」
意趣返しなのか、キースの口調はどこか高圧的だった。オズワルドは何も言わず、ただ黙ってマティルダを見つめている。
(あぁ……)
夫の隣にはシェイラもいた。自分の隣にはキースもいる。
だがマティルダにはどちらの存在も目に映らなかった。
「マティルダ……?」
キースの声も無視して、マティルダはオズワルドのもとへふらふらと駆け寄り、その手を取った。そしてこっちへ来てというように引っ張った。
たぶんシェイラも、キースと同じ顔をしていただろう。奪い返したと思っていた存在をまた奪い返され、呆然とする顔を。
けれどそんなこと二人にはどうでもよかった。
キースの隣を通りすぎ、誰もいない小部屋に入ると、マティルダは噛みつくようにオズワルドに口づけした。まるで血に飢えた吸血鬼だ。はぁはぁと息を乱しながら彼に「とって」と掠れた声で言った。
「ずっとこれが欲しかったんじゃないんですか」
「いや……オズワルドさまのが欲しい……っ」
半分泣きながら言えば、オズワルドは壁にマティルダを押しつけ、ドレスを捲し上げる。まるで男性器がついているように彼女の下着は盛り上がっており、濡れて染みを作っていた。
オズワルドは視線だけでマティルダをさらに追いつめ、ずっと彼女を苦しめていた栓を引き抜いた。
「っ、ぅっ、ぁっ、あぁ……っ」
ごとりと何かが床に落ちる。オズワルドのものを模った張り形にはマティルダの愛液がたっぷりとついて濡れていた。
夜会に出かける前に突然咥えさせられ、少し動いただけでも地獄のような快楽を与え続けてきた玩具をようやく取り出され、マティルダは放心状態になる。そのままずるずると床に座り込みそうになるが、オズワルドに支えられて、そのまま抱き着いた。
「オズワルドさま……いかないで……まって……」
「どこにも行きませんよ」
身体をゆらゆら揺らしながら、マティルダは彼の下半身へと手を伸ばす。前を寛げさせ、濡れている男性器を愛撫した。耳にかかる彼の吐息に興奮が高まり、もう我慢できなくなる。
「いれていい……?」
「ええ……」
オズワルドはマティルダの脚と尻を支えてやりながら挿入を導いた。
「ぁ、あっ、オズワルドさまの、はいって、くる……っ」
恍惚とした表情でマティルダは快感に酔いしれた。きつい体勢でもあったが、もう彼と離れたくなかった。
「マティルダ……どう、ですか……」
「きもちいい、オズワルドさまの、すごくおっきくて、これより、ずっとすき……」
マティルダの言葉にオズワルドの目もどろりと蕩ける。仄暗い瞳に情欲さを宿し、満足気にマティルダの頬に口づけしてくる。
「オズワルドさま、うごいで、いっぱい、ついて」
「はぁ、いいですよ……っ」
「ぁっ、んっ、んっ、あんっ、あぁっ――」
二人は夢中で繋がり合った。ばちゅばちゅと淫靡な水音と抑えきれない嬌声を響かせて、ただ相手のことしか目に映っていなかった。――いや、オズワルドはどこかで理解していただろう。
扉の向こうで誰かが――二人が立ち聞きして、何が起きているかを知ることを。
キースが以前よりも頻繁に訪問するようになってから、オズワルドの仕置きは厳しくなったように思う。また以前のように後ろから抱いてくれず、目を閉じることも許してくれなくなった。毎回明け方近くまで抱かれ続け、昼夜の感覚が狂わされる。
「今度、あなたが欲しがっていたものをあげます」
散々よがらされ、生まれたままの姿でマティルダはオズワルドに抱きしめられていた。
「なにかしら……」
「あなたが以前欲しいと口にしたものです」
ちらりとオズワルドの方を振り返る。彼の目は明るくなり始めた部屋の中で妖しく光って見えた。
「欲しいなら、俺の言うことを聞いてください」
『今まで私がシェイラを罰するのは、二人の間だけであった。オズワルドの前で試すようなことはしても、弟の前でシェイラを抱く勇気はなかった』
◇
「マティルダ。大丈夫……?」
「ええ、大丈夫、です……」
ゴトゴトと揺れる馬車の中、マティルダは薄っすらと汗をかきながらも向かいに座るシェイラに微笑んでみせた。
「辛いなら、私に寄りかかっているといい」
隣に座っていたオズワルドにそう言われたが、マティルダは緩く首を振った。
「大丈夫ですわ。少し、緊張しているだけですから……」
その時、ガタンと馬車が揺れた。
(っ……)
「マティルダ……?」
突然びくりと身体を震わせたマティルダにシェイラが困惑した声をあげる。マティルダは小さく息を吐きながらなんとか笑みを作ろうとする。
「何でもありません。だじょうぶ、です」
「……」
しかしシェイラの表情は晴れなかった。むしろ彼女の目は確信に近づいていく。
『オズワルドの前に発情したシェイラを差し出した。シェイラはオズワルドに助けを求めるか、オズワルドは極上の餌に飛びつくか……二人を試し、自身の心を粉々に砕こうとしていた』
「オズワルド。あなた……」
消え入りそうな声でシェイラが呟き、傷つき、怯えの混じった瞳でオズワルドを見つめる。だが、彼は気づかなかった。気づいても、もはやどうでもよかったのだ。
彼の関心は、マティルダがキースの前でどういう態度をとるかだけだったから。
かつてデイヴィッドが自分の妻にしたのと同じように。
「マティルダ!」
公爵邸に到着すると同時にキースがマティルダを迎えに現れた。いつもなら彼にエスコートを任せるところだが、今日は違った。
「失礼、インブリー公爵。妻はまだ病み上がりなので今日は私が付き添います。代わりにシェイラのエスコートをお願いします」
その言葉にキースだけでなく、中にいたシェイラも驚愕した。彼女の方が驚いたかもしれない。今までずっと正妻よりも自分を優先してきてくれたオズワルドが他の男に任せようとしている。
計り知れないほどの衝撃だっただろう。ちらりと振り返れば、信じられず呆然としていた。
「さぁ、行こう」
オズワルドは周りのことなど目に入っていない様子でマティルダの手を引く。
「マティルダ……っ」
我に返ったキースが慌てて声をかける。彼に触れられそうになって、とっさにマティルダはオズワルドに縋った。それにキースがはっきりと傷ついた表情を浮かべる。
「ごめんなさい、キース……また、後で話しましょう」
置き去りにされるキースたちからマティルダとオズワルドは遠ざかっていく。彼女は早く彼らから離れたかった。そうでなければ自分は……しな垂れかかるようにオズワルドにくっついて歩いていると、彼は腰に回していたスッと撫でてくる。
「っ……だめ、オズワルドさま……」
ここではやめて、と震える声で頼む。声もなく彼が笑って、囁いた。
「後で彼と話す時も気をつけてください」
そうでないとばれてしまいますよ、と言われマティルダは歯を食いしばった。
今回の夜会にはパメラが参加していなかった。そのことに安堵すると同時に、もし彼女がいたら自分の異変に真っ先に気づいてくれたかもしれないと夫人たちに囲まれながら思った。
「マティルダ? どうしたの?」
「いえ、何でもないわ」
「もう。さっきからそればっかり!」
オズワルドは最初こそエスコートしてくれたが、途中で知り合いに呼びとめられ、マティルダも友人に声をかけられて別行動となった。そして結局シェイラが今はオズワルドの隣にいる。
彼の考えていることがわからない。ただ、自分を苦しめたいだけなのか。それとも……。
「喉でも乾いたの? 顔が赤いわよ」
冷たい飲み物を勧められ、ありがとうと微笑む。
(このまま、ここにいればなんとか……)
しかし飲み物を口にしてしばらくすると、先ほどよりも身体が火照ってきた。喉が渇いて、また口にするが、一向に熱が収まらない。その逆になる。
(これ……お酒だわ……)
酒を飲んだことがないわけではないが、アルコール度数が高いのか、強い刺激となって身体を責め苛む。
「マティルダ。大丈夫かい」
遠目からずっと様子を見守っていたのか、キースがマティルダの隣に座ってくる。手がほんの少し触れただけで、ぴくりと肩を震わせた。
(だめ……)
理性が醜態を晒すなと訴えている。こんな人前で……
「熱でもあるんじゃないか」
キースが手を伸ばし、額に触れる。ひんやりとした冷たさが心地よくて……。
「キース……」
彼が息を呑んだ。自分は今、どんな顔をしているだろうか。
「……マティルダ。具合が悪いなら、無理しないで」
そう言って席を立たされる。幸い誰も疑っていない様子だった。
「マティルダ。あと少しだよ。すぐに楽になれる」
オズワルドがなぞった腰のくびれを今度はキースの指が支える。
(もう、だれでもいい……)
手を差し伸べてくれるのならば、この熱を冷ましてくれるなら……
「マティルダ」
しかしあと少しで人気のない廊下に出ようとしたところで、呼びとめられる。
「オズワルド。奥方が具合が悪いようだから部屋で休ませてくるよ。きみはそこにいるといい」
意趣返しなのか、キースの口調はどこか高圧的だった。オズワルドは何も言わず、ただ黙ってマティルダを見つめている。
(あぁ……)
夫の隣にはシェイラもいた。自分の隣にはキースもいる。
だがマティルダにはどちらの存在も目に映らなかった。
「マティルダ……?」
キースの声も無視して、マティルダはオズワルドのもとへふらふらと駆け寄り、その手を取った。そしてこっちへ来てというように引っ張った。
たぶんシェイラも、キースと同じ顔をしていただろう。奪い返したと思っていた存在をまた奪い返され、呆然とする顔を。
けれどそんなこと二人にはどうでもよかった。
キースの隣を通りすぎ、誰もいない小部屋に入ると、マティルダは噛みつくようにオズワルドに口づけした。まるで血に飢えた吸血鬼だ。はぁはぁと息を乱しながら彼に「とって」と掠れた声で言った。
「ずっとこれが欲しかったんじゃないんですか」
「いや……オズワルドさまのが欲しい……っ」
半分泣きながら言えば、オズワルドは壁にマティルダを押しつけ、ドレスを捲し上げる。まるで男性器がついているように彼女の下着は盛り上がっており、濡れて染みを作っていた。
オズワルドは視線だけでマティルダをさらに追いつめ、ずっと彼女を苦しめていた栓を引き抜いた。
「っ、ぅっ、ぁっ、あぁ……っ」
ごとりと何かが床に落ちる。オズワルドのものを模った張り形にはマティルダの愛液がたっぷりとついて濡れていた。
夜会に出かける前に突然咥えさせられ、少し動いただけでも地獄のような快楽を与え続けてきた玩具をようやく取り出され、マティルダは放心状態になる。そのままずるずると床に座り込みそうになるが、オズワルドに支えられて、そのまま抱き着いた。
「オズワルドさま……いかないで……まって……」
「どこにも行きませんよ」
身体をゆらゆら揺らしながら、マティルダは彼の下半身へと手を伸ばす。前を寛げさせ、濡れている男性器を愛撫した。耳にかかる彼の吐息に興奮が高まり、もう我慢できなくなる。
「いれていい……?」
「ええ……」
オズワルドはマティルダの脚と尻を支えてやりながら挿入を導いた。
「ぁ、あっ、オズワルドさまの、はいって、くる……っ」
恍惚とした表情でマティルダは快感に酔いしれた。きつい体勢でもあったが、もう彼と離れたくなかった。
「マティルダ……どう、ですか……」
「きもちいい、オズワルドさまの、すごくおっきくて、これより、ずっとすき……」
マティルダの言葉にオズワルドの目もどろりと蕩ける。仄暗い瞳に情欲さを宿し、満足気にマティルダの頬に口づけしてくる。
「オズワルドさま、うごいで、いっぱい、ついて」
「はぁ、いいですよ……っ」
「ぁっ、んっ、んっ、あんっ、あぁっ――」
二人は夢中で繋がり合った。ばちゅばちゅと淫靡な水音と抑えきれない嬌声を響かせて、ただ相手のことしか目に映っていなかった。――いや、オズワルドはどこかで理解していただろう。
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