8 / 47
8、カトリーナのお願い
しおりを挟む
次の日、ヴェロニカは空がまだ暗いうちに目を覚ました。夫はすでに起きて身支度をしていた。
「もう起きたのか」
「ええ。……あなた、いつもこんなに早いの?」
「いいや。上司に呼ばれた。仕事で少し問題が起きたらしい」
寝台から降りて着がえる準備を手伝う。
「終わったらすぐにまた戻ってくる」
「大丈夫よ。朝食が済んだら、すぐに帰らせてもらうわ」
本当は今すぐにでも帰りたかったが、挨拶もしないで帰ることはさすがに憚られる。
「あなたはお仕事に専念して」
「いや、心配だ」
「なによ。そんなに私が信用できない?」
そうじゃない、と夫はヴェロニカの肩に手を置いた。
「ここは多くの人間の陰謀が渦巻いている。大丈夫だと思っていても裏をかかれ、何が起こるかわからない。だから、なるべく一人でいさせたくないんだ」
噛んで言い聞かせるような言い方に、ハロルドの心配が伝わってくる。妻を気遣う言葉。それだけで、ヴェロニカは嬉しいと思った。と同時に不安も押し寄せてくる。
「わかった。十分気をつけるわ。でも、そんな大げさにとらえなくても大丈夫よ」
「……そうだな。心配しすぎなだけかもしれない」
行ってくるよ、と彼は軽く頬に口づけして出て行った。また後でと言い残して。
(ハロルドの考えすぎだわ……)
けれどその日、国王陛下とカトリーナが朝食として起きだした時刻は正午過ぎであり、急ぎの用事が入ったと言われて会うことは叶わず、ヴェロニカの帰宅も許されなかった。そしてハロルドも、ヴェロニカのもとへ戻って来ることはなかった。
一日、また王宮に泊まることになった。こうなってはさすがに少しおかしいと思い始める。
「お願い。帰して」
「申し訳ありません。国王陛下のご命令なのです」
何度ヴェロニカが頼んでも、侍女はそう繰り返した。
「じゃあせめて夫を連れてきて!」
「セヴェランス様は勤務中です。終わるまでお待ちください」
話にならないとヴェロニカは立ち上がった。こうなったら直接ハロルドのもとまで行こう。勝手に部屋を出て行こうとするヴェロニカに、侍女が焦って呼び止める。そこへカトリーナが現れた。
「ヴェロニカ様。不自由をおかけして、申し訳ございません」
「カトリーナ様」
腰を折って、彼女はヴェロニカに非礼を詫びた。
「陛下は今、どうしても外せない用事がおありなのです。ハロルドも同じですわ。事情は詳しく説明できませんが、今はどうか城から出ないで欲しいのです」
「……そんなこと、私は聞いていないわ」
どうしてカトリーナの口から理由を聞かなければならない。ハロルドがするべきだろう。彼はヴェロニカの妻なのだから。
「ヴェロニカ様。どうか今は辛抱して下さい」
お願いします、とカトリーナはヴェロニカの手を取り、じっと見上げた。可憐な王妃に見つめられ、ヴェロニカも強く振り払うことが躊躇われる。
「……わかりました」
「ありがとうございます」
カトリーナはほっと安堵の表情を浮かべ、お茶でもしようなどと呑気に言い出す。そんなこととてもする気にはなれなかったけれど、他にすることもなく、待つ時間も苛立ちを募らせるだけなので、ヴェロニカは頷くしかなかった。
「こちらは陛下がよく好んで飲む北方の茶葉なんです」
カトリーナは楽しげに話をしてくれるが、ヴェロニカは置いてきた子どもたちのばかり考えてしまい、上の空で相槌を打っていた。
「……ごめんなさい、ヴェロニカ様」
悲しげに俯くカトリーナの横顔に、ヴェロニカは罪悪感を刺激される。別にヴェロニカが留まる原因となったのは、彼女のせいではない。
「カトリーナ様が謝る必要はありませんわ」
「……わたくしが陛下に頼んだんです」
「えっ?」
顔を上げ、潤んだような瞳でカトリーナはヴェロニカを見つめた。
「わたくし、お友達が欲しかったんですの」
「お友達?」
「ええ。気の許せる、いろんな話をできるお友達が」
王妃の話は突然であった。ヴェロニカはどうして、と困惑した顔でたずねる。
「私ではなくとも……あなたには茶会に招くだけのご友人がたくさんいらっしゃるでしょう?」
「ええ。でもその方たちは心からわたくしの話を聞きたいと思っている方々ではありません。みなさん何かしらの情報を得ようと思って、参加していますのよ」
疲れた表情でカトリーナは呟く。ヴェロニカは大変なのねと同情しながらも、それが自分たちの役目でもあろうと思った。
夫と日頃親しくしている男性の妻と話して、親睦を深める。情報を集めて、夫の有利になるよう口添えしたり……たいしたことはできなくても、結局はそれも妻の役目なのだとヴェロニカは教えられた。
カトリーナだってよくわかっているはずだろうに。
「どうして、って言いたげな顔ですね」
「いえ、そんな、」
「ふふ。ヴェロニカ様は思っていることが素直に顔に出ますもの。隠そうとしても、わかってしまいますわ」
夫と同じことを言う。
「ええ、わたくしもわかっています。けれどね、時々どうしようもなく虚しくなってしまって……一人くらい、心から話せるお友達が欲しいと、思ってしまったんです」
「……それが私だと?」
「ええ」
「どうして私なんでしょうか」
カトリーナと会って話したことは過去に一度もない。親同士が知り合いだったわけでもない。
(いや、繋がりというならば……)
「あなたがハロルドの奥方だから」
どきりとする。
「それってどういう……」
「わたくしにも、陛下の考えていることはよくわかりません。ただ……ハロルドの奥方なら、きっと彼と同じように真面目で優しい方だと陛下は思われたんじゃないでしょうか」
えっ、とヴェロニカは思った。
「陛下が、ってことは、ジュリアン様が私をカトリーナ様のご友人に選ばれたということですか」
「そうなんです。わたくしも驚きましたわ。まさかハロルドの奥方をお連れするなんて……」
カトリーナは嘘をついている様子はなかった。ここへ来た経緯を思い返せば、すべて国王の強引な行動が招いたと考える方が自然な気がした。
「ごめんなさいね、ヴェロニカ様。陛下がわたくしに、何か欲しいものや叶えて欲しいことはないのかと何度もお尋ねになられるから……ついそんなことを言ってしまったんです……」
ごめんなさい、とカトリーナは繰り返した。その様子は本当に打ちひしがれており、悪いことは何もしていないというのにヴェロニカはひどく落ち着かなくなる。
「事情はわかりましたわ。ですからもう謝らないで下さい」
「でも……」
「私が貴女のような方の友人に相応しいかはわかりませんが……お話に付き合うくらいのことはできますわ」
「わたくしと、お友達になってくれますの?」
「はい」
ヴェロニカの答えに、カトリーナは微笑んだ。美しく、可憐であった。ジュリアンが彼女を寵愛し、何でも願いを叶えてやるといった気持ちがわかる笑みであった。
「また、ここへ来て下さる?」
嬉しいのに、不安に揺れる瞳。
「それは……ええ、もちろんです」
「嬉しい……絶対よ、ヴェロニカ様」
「はい」
「約束よ、ヴェロニカ様」
カトリーナは隣に座るヴェロニカの手をぎゅっと握った。ヴェロニカの手よりとても小さいのに、なぜか簡単には振り解けない力強さを感じるのだった。
「もう起きたのか」
「ええ。……あなた、いつもこんなに早いの?」
「いいや。上司に呼ばれた。仕事で少し問題が起きたらしい」
寝台から降りて着がえる準備を手伝う。
「終わったらすぐにまた戻ってくる」
「大丈夫よ。朝食が済んだら、すぐに帰らせてもらうわ」
本当は今すぐにでも帰りたかったが、挨拶もしないで帰ることはさすがに憚られる。
「あなたはお仕事に専念して」
「いや、心配だ」
「なによ。そんなに私が信用できない?」
そうじゃない、と夫はヴェロニカの肩に手を置いた。
「ここは多くの人間の陰謀が渦巻いている。大丈夫だと思っていても裏をかかれ、何が起こるかわからない。だから、なるべく一人でいさせたくないんだ」
噛んで言い聞かせるような言い方に、ハロルドの心配が伝わってくる。妻を気遣う言葉。それだけで、ヴェロニカは嬉しいと思った。と同時に不安も押し寄せてくる。
「わかった。十分気をつけるわ。でも、そんな大げさにとらえなくても大丈夫よ」
「……そうだな。心配しすぎなだけかもしれない」
行ってくるよ、と彼は軽く頬に口づけして出て行った。また後でと言い残して。
(ハロルドの考えすぎだわ……)
けれどその日、国王陛下とカトリーナが朝食として起きだした時刻は正午過ぎであり、急ぎの用事が入ったと言われて会うことは叶わず、ヴェロニカの帰宅も許されなかった。そしてハロルドも、ヴェロニカのもとへ戻って来ることはなかった。
一日、また王宮に泊まることになった。こうなってはさすがに少しおかしいと思い始める。
「お願い。帰して」
「申し訳ありません。国王陛下のご命令なのです」
何度ヴェロニカが頼んでも、侍女はそう繰り返した。
「じゃあせめて夫を連れてきて!」
「セヴェランス様は勤務中です。終わるまでお待ちください」
話にならないとヴェロニカは立ち上がった。こうなったら直接ハロルドのもとまで行こう。勝手に部屋を出て行こうとするヴェロニカに、侍女が焦って呼び止める。そこへカトリーナが現れた。
「ヴェロニカ様。不自由をおかけして、申し訳ございません」
「カトリーナ様」
腰を折って、彼女はヴェロニカに非礼を詫びた。
「陛下は今、どうしても外せない用事がおありなのです。ハロルドも同じですわ。事情は詳しく説明できませんが、今はどうか城から出ないで欲しいのです」
「……そんなこと、私は聞いていないわ」
どうしてカトリーナの口から理由を聞かなければならない。ハロルドがするべきだろう。彼はヴェロニカの妻なのだから。
「ヴェロニカ様。どうか今は辛抱して下さい」
お願いします、とカトリーナはヴェロニカの手を取り、じっと見上げた。可憐な王妃に見つめられ、ヴェロニカも強く振り払うことが躊躇われる。
「……わかりました」
「ありがとうございます」
カトリーナはほっと安堵の表情を浮かべ、お茶でもしようなどと呑気に言い出す。そんなこととてもする気にはなれなかったけれど、他にすることもなく、待つ時間も苛立ちを募らせるだけなので、ヴェロニカは頷くしかなかった。
「こちらは陛下がよく好んで飲む北方の茶葉なんです」
カトリーナは楽しげに話をしてくれるが、ヴェロニカは置いてきた子どもたちのばかり考えてしまい、上の空で相槌を打っていた。
「……ごめんなさい、ヴェロニカ様」
悲しげに俯くカトリーナの横顔に、ヴェロニカは罪悪感を刺激される。別にヴェロニカが留まる原因となったのは、彼女のせいではない。
「カトリーナ様が謝る必要はありませんわ」
「……わたくしが陛下に頼んだんです」
「えっ?」
顔を上げ、潤んだような瞳でカトリーナはヴェロニカを見つめた。
「わたくし、お友達が欲しかったんですの」
「お友達?」
「ええ。気の許せる、いろんな話をできるお友達が」
王妃の話は突然であった。ヴェロニカはどうして、と困惑した顔でたずねる。
「私ではなくとも……あなたには茶会に招くだけのご友人がたくさんいらっしゃるでしょう?」
「ええ。でもその方たちは心からわたくしの話を聞きたいと思っている方々ではありません。みなさん何かしらの情報を得ようと思って、参加していますのよ」
疲れた表情でカトリーナは呟く。ヴェロニカは大変なのねと同情しながらも、それが自分たちの役目でもあろうと思った。
夫と日頃親しくしている男性の妻と話して、親睦を深める。情報を集めて、夫の有利になるよう口添えしたり……たいしたことはできなくても、結局はそれも妻の役目なのだとヴェロニカは教えられた。
カトリーナだってよくわかっているはずだろうに。
「どうして、って言いたげな顔ですね」
「いえ、そんな、」
「ふふ。ヴェロニカ様は思っていることが素直に顔に出ますもの。隠そうとしても、わかってしまいますわ」
夫と同じことを言う。
「ええ、わたくしもわかっています。けれどね、時々どうしようもなく虚しくなってしまって……一人くらい、心から話せるお友達が欲しいと、思ってしまったんです」
「……それが私だと?」
「ええ」
「どうして私なんでしょうか」
カトリーナと会って話したことは過去に一度もない。親同士が知り合いだったわけでもない。
(いや、繋がりというならば……)
「あなたがハロルドの奥方だから」
どきりとする。
「それってどういう……」
「わたくしにも、陛下の考えていることはよくわかりません。ただ……ハロルドの奥方なら、きっと彼と同じように真面目で優しい方だと陛下は思われたんじゃないでしょうか」
えっ、とヴェロニカは思った。
「陛下が、ってことは、ジュリアン様が私をカトリーナ様のご友人に選ばれたということですか」
「そうなんです。わたくしも驚きましたわ。まさかハロルドの奥方をお連れするなんて……」
カトリーナは嘘をついている様子はなかった。ここへ来た経緯を思い返せば、すべて国王の強引な行動が招いたと考える方が自然な気がした。
「ごめんなさいね、ヴェロニカ様。陛下がわたくしに、何か欲しいものや叶えて欲しいことはないのかと何度もお尋ねになられるから……ついそんなことを言ってしまったんです……」
ごめんなさい、とカトリーナは繰り返した。その様子は本当に打ちひしがれており、悪いことは何もしていないというのにヴェロニカはひどく落ち着かなくなる。
「事情はわかりましたわ。ですからもう謝らないで下さい」
「でも……」
「私が貴女のような方の友人に相応しいかはわかりませんが……お話に付き合うくらいのことはできますわ」
「わたくしと、お友達になってくれますの?」
「はい」
ヴェロニカの答えに、カトリーナは微笑んだ。美しく、可憐であった。ジュリアンが彼女を寵愛し、何でも願いを叶えてやるといった気持ちがわかる笑みであった。
「また、ここへ来て下さる?」
嬉しいのに、不安に揺れる瞳。
「それは……ええ、もちろんです」
「嬉しい……絶対よ、ヴェロニカ様」
「はい」
「約束よ、ヴェロニカ様」
カトリーナは隣に座るヴェロニカの手をぎゅっと握った。ヴェロニカの手よりとても小さいのに、なぜか簡単には振り解けない力強さを感じるのだった。
112
お気に入りに追加
1,067
あなたにおすすめの小説
【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
結婚はするけれど想い人は他にいます、あなたも?
灯森子
恋愛
度重なる不幸で家族を亡くし、一人ぼっちになってしまった少女エレノア。女手ひとつ歯を食いしばって領地を守ってきた。
その能力を買われどうしてもと言うから、断りきれずに公爵家へと嫁いだ。
切望されて嫁いだはずだったのに。
式当日の朝、新郎は迎えにこない。誓いのキスはくちびるではなくおでこだし、結婚披露パーティーのダンスはあなたとは踊れないと言われてしまった。え?踊らないって?わたしたち主役ですけど、どうするの?
どうやら夫レオンはこの結婚を望んでいなかったらしい。
ま、いいか。わたしにも想い続けている人がいますから。
貴方の事を愛していました
ハルン
恋愛
幼い頃から側に居る少し年上の彼が大好きだった。
家の繋がりの為だとしても、婚約した時は部屋に戻ってから一人で泣いてしまう程に嬉しかった。
彼は、婚約者として私を大切にしてくれた。
毎週のお茶会も
誕生日以外のプレゼントも
成人してからのパーティーのエスコートも
私をとても大切にしてくれている。
ーーけれど。
大切だからといって、愛しているとは限らない。
いつからだろう。
彼の視線の先に、一人の綺麗な女性の姿がある事に気が付いたのは。
誠実な彼は、この家同士の婚約の意味をきちんと理解している。だから、その女性と二人きりになる事も噂になる様な事は絶対にしなかった。
このままいけば、数ヶ月後には私達は結婚する。
ーーけれど、本当にそれでいいの?
だから私は決めたのだ。
「貴方の事を愛してました」
貴方を忘れる事を。
政略結婚だなんて、聖女さまは認めません。
りつ
恋愛
聖女メイベルは婚約者である第一王子のサイラスから、他に好きな相手がいるからお前とは結婚できないと打ち明けられ、式の一週間前に婚約を解消することとなった。代わりの相手をいろいろ紹介されるものの、その相手にも婚約者がいて……結局教会から女好きで有名なアクロイド公爵のもとへ強引に嫁がされることとなった。だが公爵の屋敷へ行く途中、今度は賊に襲われかける。踏んだり蹴ったりのメイベルを救ったのが、辺境伯であるハウエル・リーランドという男であった。彼はアクロイド公爵の代わりに自分と結婚するよう言い出して……
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?
よどら文鳥
恋愛
デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。
予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。
「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」
「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」
シェリルは何も事情を聞かされていなかった。
「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」
どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。
「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」
「はーい」
同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。
シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。
だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。
前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。
真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。
一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。
侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。
二度目の人生。
リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。
「次は、私がエスターを幸せにする」
自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。
【完結】二度目の恋はもう諦めたくない。
たろ
恋愛
セレンは15歳の時に16歳のスティーブ・ロセスと結婚した。いわゆる政略的な結婚で、幼馴染でいつも喧嘩ばかりの二人は歩み寄りもなく一年で離縁した。
その一年間をなかったものにするため、お互い全く別のところへ移り住んだ。
スティーブはアルク国に留学してしまった。
セレンは国の文官の試験を受けて働くことになった。配属は何故か騎士団の事務員。
本人は全く気がついていないが騎士団員の間では
『可愛い子兎』と呼ばれ、何かと理由をつけては事務室にみんな足を運ぶこととなる。
そんな騎士団に入隊してきたのが、スティーブ。
お互い結婚していたことはなかったことにしようと、話すこともなく目も合わせないで過ごした。
本当はお互い好き合っているのに素直になれない二人。
そして、少しずつお互いの誤解が解けてもう一度……
始めの数話は幼い頃の出会い。
そして結婚1年間の話。
再会と続きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる