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序章
十三
しおりを挟む「はっ………っは…はぁっ」
呼吸がままならなくなっても、私は後ろを気にせずがむしゃらに走った。
後ろからは走る足音が聞こえていたり、怒鳴り声も聞こえていたがそれは徐々に遠ざかっていた。
それでも私は走った。
止まったらお終いだと本気で思ったからだ。
止まったら二度と走れなくなりそうで怖かった。
どのくらい走ったかわからないが、とっくに限界を超えてふらふらになってる前方にトンネルが見えた。
真っ暗な外より更に深い闇で覆われたトンネル………。
一瞬躊躇して、この時初めて走りながら後ろを振り返った。
遥か後方に松明のような眩い光が無数に漂っていて、直感で自分を捜してるのだと感じた。
躊躇を振り払い、闇へと足を踏み込む。
帰るにはこの線路を辿るしか術はないのだ……。
足を踏み入れて、トンネル独特の冷たい空気が頬を撫でた。
襲うのは恐怖、それと焦り。
望むのは帰宅だ。
当たり前のようなそれを今は望む。
足がもつれる。
トンネル内には私の足音が響きわたり木霊した。
それが一層私をせかす。
線路の上のトンネル内に入るなんてそうそうない事。
まるでたちの悪い肝試しをしてるみたいだった。
早く帰りたい。
ゆっくりお風呂につかってこの事を笑い話にして談笑したい。
自然と溢れる涙。
そのせいで見えない視界が更に見えにくくなり、呼吸もしにくくなった。
トンネルの壁に手を突いて、壁づたいに進み、走るのをその時になってようやくやめた。
胸か苦しくて、溜まらなくて、色んな感情が溢れて止まらない。
助けて欲しいのに助けなんてなくて、感じるのは僅かな絶望。
それでも帰りたくて、私はゆっくりゆっくり一歩を踏み出しながら前に……
トンネルの向こうを目指して進むのだった。
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