きさらぎ駅

序章

序章一

………はぁ。
今日も疲れた。

心の中でそんな事を愚痴って、私は電車内の端っこの席に腰掛けて何をするでもなく深くため息をついた。

普段なら混み合う最終電車。

何故か今日は空いていて、こうしてまばらしか伺えない乗客を見るのは会社帰り、初めてのことだった。

都内での一人暮らし。
決して楽じゃない。

電車は行きも帰りも馬鹿みたいに混んでるし、こうして座れた事で至福を感じる。

それ程、私はこの町に染まっていて、それ程私は息抜きという息抜きをしてないのだと実感した。


今度の休みはどこかのんびりできる所にでも行こう。

そんな決心をして窓の外をぼんやり眺め続けた。

周りをチラリと見渡せば、他の乗客は荷物を抱え込みながら寝ていたり、音楽を聞きながら目を閉じていたりで、殆ど寝てるような状況。


地元と違って、都心の電車は寝てる人が多い。
皆疲れ切った顔をしてるし…。

最初こそそんな事を思っていたが、いつの間にか自身も疲れた顔をしていて、誤魔化しきれない顔が向こう側の窓にうっすら写っていた。

うん。
本当にリフレッシュして楽しまなきゃ駄目だなぁ。

………はぁ。

再びため息をついて目を閉じた。
降りる駅までまだまだだ。