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~物語のはじまり~

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ー電車の車内ー
帰宅ラッシュを過ぎ、電車は混雑していないが空いている席がない為、吊り革に掴まる1人の男性の姿があった。
男性は30代後半から40代半ばスーツにネクタイ、ビジネスバックといった、どこにでもいそうなサラリーマンのような風体である。
男性は深くため息をついてはまぶたを閉じ下を向いた。

ー自宅内倉庫部屋ー
小学5年生のヤマトは父と2人でこの家に住んでいる。
この部屋はオレからしたら父のガラクタ部屋だ。
オレが見た事無いような古いおもちゃやゲームそんなガラクタが色々置いてある。
父が言うにはこの部屋にあるものは、数々の冒険とたくさんの思い出の詰まった、いわゆる宝物らしいが、オレにとってはどれもガラクタにしか見えない。
確かに昔は、父と2人でこの部屋のおもちゃやゲームで遊んだり、父の思い出話を聞いて胸をワクワクさせるようなこともあったが、さすがに5年生にもなると現実がどんなものかくらいは想像ができる。
だから父の思い出話だって半分以上が作り話である事くらい分かっている。
ふと部屋の、奥へと入っていくと、父が昔使っていたであろう勉強机の上に、小型のゲームが置いてある。
ヤマトは机に近付きゲームを手に取ってみた。
ヤマト「???」
ゲームは片手に収まるサイズでキーホルダーの金具の様なものが付いている。
液晶画面は粗いドットでどこから見てもいわゆるレトロゲーと呼ばれるものだ。
ヤマト「父さんに見せてもらったことがないゲームだ…。」
ヤマトはゲームをポケットに入れ倉庫部屋を後にした。

ーヤマト自室ー
ヤマトは自室に戻ると父にゲームのことを聞いてみようと思ったが、父はまだ帰宅していなかった。
父のゲームに興味が出たのは何年ぶりだろう…。
小学校低学年の頃は、父と2人で、父の思い出のゲームやおもちゃで遊んでいたのにいつの間にかそういったものから興味が無くなっていった。
ガチャッと玄関のドアの空く音が聞こえ、父が帰宅したのがわかった。

ーリビングー
ヤマト「おかえり」
父「ただいまヤマト」
父はスーツを脱いでハンガーに掛けながらヤマトに挨拶をした。(電車に乗っていた男性はヤマトの父)
ヤマト「父さんコレなんだけど…」
ヤマトは倉庫部屋で見つけたゲームを父に見せる。
父「懐かしいな、前に探した時に見つからなかったけど、ヤマト、コレをどこで見つけたんだ?」
ヤマト「???倉庫部屋の机の上にあったよ?」
父「そんなはずはないんだけどな?」
父は頭を掻きむしるような仕草をした。
父「まぁいいか、コレはね、父さんが昔トモダチと冒険をした証であり、そのトモダチとの絆なんだよ。」
ヤマト「ん?友達と、このゲームで遊んだってこと?」
父「まぁ、そんなとこだ…それで父さんはそのトモダチとまた会いたくて今の仕事をしているんだよ。」
父の仕事は人探しとかは関係ない至って普通のIT企業の社員だ。
ヤマト「よくわかんないけど、とりあえず父さんにとって大事なモノなんでしょ?」
ヤマトは父にゲームを差し出した。
父「父さんトモダチと会えるよう頑張ってはいるけどなかなか難しいようだ…もしヤマトがコレに興味を示したなら少し遊んでみるといいさ。父さんも丁度ヤマトと同じ頃にこのゲームでトモダチと出会ったんだ。」
ヤマト「父さんがそう言うなら少し借りていいかな?よくわかんないけど気になったからさ。」
父が頷く。
ヤマトは早速ゲームを起動させようと色々ボタンを押してみるが、画面が出てこない。
父「随分長い間置いてあったから電池切れかな?」
ヤマト「明日買ってきてみるよ。」
父「そうしてくれるとありがたい。明日も仕事で遅くなりそうだから…ちなみにどんなゲームかは」
ヤマト「自分でやってみるからいいよ」
父の言葉を遮るようにヤマトは言った。
父「そうか…楽しんでくれたら父さんもトモダチも嬉しいよ。」
ヤマト「…。まぁとりあえずやってみてかな?」
父「そうだな。そういえばヤマトご飯は?」
ヤマト「いつも通り簡単なもの作って食べたよ、父さんの分も冷蔵庫。」
父「いつもすまないなぁ…」
ヤマト「オトコ2人で大変だけどオレがやれることはやるよ。」
父「ありがとうヤマト…」
ヤマト「今日はもう遅いから寝るよ、明日は終業式だし。」
父「そうか、夏休みか…」
夏休みというワードを言いながら父は遠い目をした。
ヤマト「じゃ、おやすみ父さん」
父「おやすみヤマト」
ヤマトは自室に引き上げていった。
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