あの娘が呪いのビキニ鎧を着てしまったら!?

親友宅を家宅捜査

「そういえば、ネッド君、あんたのご近所だったわね」

　貴族の邸宅が並ぶ通りにある、ネッド家の前で。
　向かいに建つライザの屋敷を見ながら、エレナは呟いた。

　華美な装飾がゴテゴテと飾ってあり、成金趣味のモデル住宅、といった感じだ。　

「フッ。迷惑な話ね。
　エログッズまみれの変態屋敷が近くにあると、我が家の品位まで落ちてしまうわ」

　顎をそらして、いまいましげに呟くライザ。

　･･････それはお互い様だと思うが。

　心の中で俺はつぶやく。

「それじゃ、あたしは裏口に回っておくわ。
　まさかとは思うけど、一応、逃げられないように、ね」

　言うとエレナは、裏口の方に駆け出した。

　まあ、その用心は当然だろう。
　性格はともかく。ネッドは『疾風のハーフエルフ』と異名をとるほどの、精霊魔法の使い手なのだ。
　･･････もっとも、『疾風』は、逃げ足がめちゃめちゃ速い、という皮肉であり、その卓越した移動力を、諸国のエログッズ集めにしか使ってないのだが。

「では、リズ様は下がっててください」

「は、はい」

　慌てて王女が離れたのを確かめたあと。俺はライザと目を合わせ、うなずき――

　とんとんっ。

「よっ、ネッド。俺だよ、開けてくれ」

　ドアを叩いてしばらくすると、中で人の気配がして、

　がちゃり。

「おー、レイ。いいとこに来たな。
　さっき、極上のエロ書物が手に入って･･････」

　ネッドが扉を開けるや否や、

「成敗っ！」

　ばきっ！

　ライザのまわし蹴りが、ネッドの顎をまともにとらえた。

「ぐはっ!?」

　二メートルほど吹っ飛び、白目をむいて倒れるネッド。

「ふーっ。
　これで被疑者の身柄を確保ね」

「･･････お前、いきなりなんちゅうことを」

　満足げに、額の汗ぬぐうライザに、俺は眉をひそめて、

「これで無関係だったらどーすんだ？」

「別に？
　どうもしないわよ、ネッドごときに」

　･･････やっぱこいつ、絶対事件捜査に向いてねー。

　あっさり言ってのけるライザに、俺は胸のうちでつぶやいたのだった。