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アイドル王女が呪いのボンデージ鎧を着せられた件 その三

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「――ど、どういうことよっ!」

「まだシラをきる気?
 説明してあげるから観念しなさいっ」

 ライザの、やたら偉そうな説明によると――

 今朝、リズ様が目を覚ますと、見たこともないボンデージ下着を着せられていた、というのだ。
 しかも、それには強力な呪いがかかっていて、どうしても脱げない。
 内密に、最高導師バイロンに、呪いの解除を頼んだのだが、それでもダメだったらしい。

「――ふっ。どう?」 

 説明を終えるなり。ライザは、びしっ! とエレナを指差して、

「厳重な警備をすり抜け、王女に呪いの下着をつける・・・・・・これほどの能力を持った変態は、あなた達しかいないはず!」

「な、なんで私がそんなことするのよ!」

「ビキニ鎧のせいで、騎士をクビになった逆恨みね!」

「ふむ、一応筋は通って・・・・・・」

 ごっすっ!

 うなずきかけた俺の頭に、エレナの肘打ちが突き刺さる。

「じょ、冗談だって」

「つまんない冗談は、時と場所を選ばんかっ」

 エレナは、ジト目で俺を睨んだあと、憤然とライザに向き直り、

「そんなの、ただの言いがかりじゃない!

 そもそも、私はレイと違って変態じゃないし」

 こらこら、部下をあっさり見捨てるな。

 反論するエレナの言葉にも、

「ふふんっ。変態じゃない、ですって?
 ビキニ鎧なんか着てるくせに」

 小馬鹿にしたように鼻を鳴らすライザ。

「――うっ。
 こ、これは馬鹿レイのせいで・・・・・・というか」

 エレナは、じっとり目を細め、

「エッチな鎧ばかり着てる、あんたに言われたくないわ」

「ふっ、とぼけちゃって。
 わかってるのよ。あなたがビキニ鎧を着たのは――」

 ライザは、自分の胸に手をあて、

「私のセクシー鎧より、目立つためだってことぐらい!」

「対抗するかっ! あんたのエロ鎧なんかにっ」

「全く・・・・・・
 安易に露出度に走って、ビキニ鎧に手を出すとは・・・・・・
 浅はかにもほどがあるわね」

「だから違うって・・・・・・」

 やおら、ライザは、きっ、とエレナを睨みつけ、

「ふんっ! 
 それで今年のコンテスト、まんまと私の四連覇を阻んだくせに!」

「ああぁぁっ!
 思い出させないで、それだけはっ」

 赤面して頭を抱えるエレナ。

 ――今年のコンテスト?
 ああ、『エロい女剣士ベストテン』で一位になっちゃって、エレナがしばらく落ち込んでたっけ。
「だけど残念だったわね。

 あなたごときに、いつまでも遅れをとるあたしだと思って!」 

「ちょっとは聞け、人の話をっ」

 一人、盛りあがったツインテールは、やおら、鎧の留め金に手をかけると、

「この日のために特注した新型鎧、とくと目に焼き付けるがいいわっ!」

 高らかに言い放つや、バッ! と胸当てを脱ぎさった! どういう仕組みか、下半身の軽装鎧も同時に脱げて――

 その途端。

 ぶびゅるいっ!

 俺の鼻血が、勢いよく噴き出した。

 なんというか・・・・・・ヒモでした。
 紐状の布地が、かろうじて乳首を隠しているだけで、白いふくらみがほとんど剥き出しになっている
 後ろは、まるでふんどし状態。見事に上向いたヒップが、惜しげもなく晒されていた。
 これはもう、鎧どころか服のカテゴリーにも入らない。

「――ちょちょ、ちょっとあんたっ!」

「フフフ・・・・・・どう? この気品溢れるセクシー鎧は?」

 唖然として口ごもるエレナに、ライザは、自信たっぷり胸を張る。途端、ぷりんっ、とおっぱいが弾力たっぷりに揺れた。

 ――ちょっ!? 今、桜色の突起がっ!? 
「気品じゃなくて、恥ずかしいところがハミ出てるでしょ!

 てか、あんたが一番、露出で目立とうとしてるじゃないっ!」

 叫ぶエレナにも、しかし、ライザは、あきれたように首をふり、

「芸術的なラインを描くヒモ鎧と、低俗なビキニ鎧。
 その違いすら、わからないの?」

「ぅわかってたまるかぁぁぁぁっ!」

 ムキーッと、エレナは絶叫してから、

「――って、いつまで見てるのよ、このスケベはっ」

 俺の後頭部を、ぺしっ、とはたく。

 と、ちょうどそこに、

「ふぁぁぁぁぁ・・・・・・
 なんですか、騒々しい・・・・・・」

 不意に、むっくりと上体を起こしたリズ様は、寝ぼけ眼でこちらを見て、

「あ。みなさん。おはようございま・・・・・・」

 場違いにのんきな口調で言いかけて、ぴしっ、と固まる。

「あっ、王女様、お気づきになったんですか」

 エレナは、意味なくセクシーポーズを決めるツインテールを指差して、

「リズ様もアレに、何か言ってやってください」

「・・・・・・・・・・・・(ぼーぜん)」

「フフフ。
 さすがのリズ様も、あまりのセクシーさに声も出ないようね」

「あきれて言葉を失ってるの。
 てか、あんた。近衛隊長がこの格好で歩いてちゃアウトでしょ」

「――ふっ。甘いわね」

 ライザは、言ってごう然と胸をそらし、

「近衛兵の詰所で、副隊長に逮捕されかけたに決まってるでしょ!」

「いばらないでっ」

「それで仕方なく、地味めの鎧をはおって見逃してもらったの」

「いや、捕まえとけよ。近衛騎士の名誉のために」

 鼻を手で押さえつつ、俺も横からつっこみいれる。

 それにしても。蝶のピンク仮面とヒモ鎧で、出かけるつもりだったとは・・・・・・

「――とっ、とととにかくっ!」

 ぽかん、とフリーズしていたリズ様が、やおらうめいたかと思うと、

「早く服を着ないと死刑です! 王女命令ですからーっ!」

 顔を真っ赤にした王女の絶叫が、事務所の壁を震わせたのだった。
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