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第三章 緑と黒――そして集まる五人
第92話 扉の先で待つ者
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ギウス四天王を倒した後、千紘たちは部屋の奥に階段を見つけた。
それをまた五人揃って上っていく。
そろそろ最上階に着くかと思った頃、広い廊下に出た。
「あっちに何かすごい大きな扉があるけど」
ノアがそう言って少し先を指差すと、全員がそちらに顔を向ける。
視線の先にあったのは、ひときわ大きい両開きの扉だ。
それは木製であることには変わりがないのだが、これまでのものとはまるで違って、装飾がとにかく豪華である。
センス云々は置いておくとして、その豪華さは明らかに他とは異なっていた。
「んー、この先は絶対怪しいよな。何か『ようこそ』って言われてるような気がする……」
大きな扉の前に立った秋斗が、両手を腰に当てながら唸る。
秋斗だけでなく、ここにいる誰もがきっと同じことを思っているだろう。
「むしろ、ここしか怪しいところはないんじゃないか?」
皆の考えを代弁した千紘は腕を組み、周囲に視線を走らせた。
やはり、近くに怪しいところは他に見当たらない。ただ目の前の扉だけが異質なのだ。
どう考えても「ここに何かがありますよ」と言わんばかりの怪しい扉だが、目的地――黒幕の居場所はきっとこの先だろうと目星をつけ、千紘たちは一も二もなくその扉を開けることにしたのである。
※※※
不用心なのか、それとも千紘たちを誘うためか、豪奢な扉に鍵はかかっていない。
慎重に扉を開いた先に広がっていたのは、大広間だった。
「うわ、すごい広いな……」
中に一歩踏み込んだ途端、瞠目した秋斗が小さく声を漏らす。
地下にあった広間よりもずっと広いそこは、謁見の間とでも呼べばいいだろうか。
この城はとうの昔に廃城になっているのだから、謁見の間としての機能もすでに失っているはずだが、一番奥の玉座らしき椅子には誰かが座しているようだった。
千紘が懸命に目を凝らす。
「誰だ……?」
そこで玉座にいる人物が立ち上がった。
「五人で現れたということは、グリーンの洗脳が解けたってことだね」
静かに発せられた低い声に、千紘たちは息を呑んで、足を止める。
冷徹な中にもわずかに優しさを含んでいるように錯覚させる声音は、千紘たち全員がよく知ったものだった。
「お前は……まさか、ギウスデス!」
「私のことを覚えていてくれたんだね、嬉しいよ」
千紘が声を張り上げると、大きな体躯に黒を纏ったギウスデスはほんの一瞬だけではあるが、微笑んだように見えた。もちろん遠目にそう見えただけで、本当に笑ったのかは定かでない。
ギウスデスは『宇宙化学組織ギウス』を作った張本人で、千紘たちスターレンジャーが倒さなければならないラスボスだ。
四天王と同様に年齢は不明だが、見た目はだいたい三十歳前後、ノアよりも少し年上に見える。
ちなみに、『ギウスデス』という名前は組織を作った時から名乗っていて、誰も本名は知らないという設定になっている。ドラマの中に本名は一切出てこないので、設定すらされていない可能性が高い。
しかし、今はそんなことはどうでもいい。
「黒幕はやっぱりお前か」
呻くようにそう口にした千紘は、入り口に突っ立ったままで、奥歯を噛み締める。
ギウス四天王が具現化されていたのだから、ギウスデスも具現化されていて何らおかしくはない。
それはわかっている。
だが、できればあって欲しくなかったというのが千紘の本音だった。
まだ遠くにいるギウスデスは、ノアの洗脳が解けたことにも動じる様子はなく、ただその場に佇んでいるだけである。
「四天王と同じで、お前も具現化されてるんだろ?」
秋斗が千紘の隣に並び、冷静な口調でギウスデスに問う。
ギウスデスは無言で一つ大きく頷いてみせると、今度ははっきりと千紘たちにわかるように、不敵な笑みを浮かべたのだった。
それをまた五人揃って上っていく。
そろそろ最上階に着くかと思った頃、広い廊下に出た。
「あっちに何かすごい大きな扉があるけど」
ノアがそう言って少し先を指差すと、全員がそちらに顔を向ける。
視線の先にあったのは、ひときわ大きい両開きの扉だ。
それは木製であることには変わりがないのだが、これまでのものとはまるで違って、装飾がとにかく豪華である。
センス云々は置いておくとして、その豪華さは明らかに他とは異なっていた。
「んー、この先は絶対怪しいよな。何か『ようこそ』って言われてるような気がする……」
大きな扉の前に立った秋斗が、両手を腰に当てながら唸る。
秋斗だけでなく、ここにいる誰もがきっと同じことを思っているだろう。
「むしろ、ここしか怪しいところはないんじゃないか?」
皆の考えを代弁した千紘は腕を組み、周囲に視線を走らせた。
やはり、近くに怪しいところは他に見当たらない。ただ目の前の扉だけが異質なのだ。
どう考えても「ここに何かがありますよ」と言わんばかりの怪しい扉だが、目的地――黒幕の居場所はきっとこの先だろうと目星をつけ、千紘たちは一も二もなくその扉を開けることにしたのである。
※※※
不用心なのか、それとも千紘たちを誘うためか、豪奢な扉に鍵はかかっていない。
慎重に扉を開いた先に広がっていたのは、大広間だった。
「うわ、すごい広いな……」
中に一歩踏み込んだ途端、瞠目した秋斗が小さく声を漏らす。
地下にあった広間よりもずっと広いそこは、謁見の間とでも呼べばいいだろうか。
この城はとうの昔に廃城になっているのだから、謁見の間としての機能もすでに失っているはずだが、一番奥の玉座らしき椅子には誰かが座しているようだった。
千紘が懸命に目を凝らす。
「誰だ……?」
そこで玉座にいる人物が立ち上がった。
「五人で現れたということは、グリーンの洗脳が解けたってことだね」
静かに発せられた低い声に、千紘たちは息を呑んで、足を止める。
冷徹な中にもわずかに優しさを含んでいるように錯覚させる声音は、千紘たち全員がよく知ったものだった。
「お前は……まさか、ギウスデス!」
「私のことを覚えていてくれたんだね、嬉しいよ」
千紘が声を張り上げると、大きな体躯に黒を纏ったギウスデスはほんの一瞬だけではあるが、微笑んだように見えた。もちろん遠目にそう見えただけで、本当に笑ったのかは定かでない。
ギウスデスは『宇宙化学組織ギウス』を作った張本人で、千紘たちスターレンジャーが倒さなければならないラスボスだ。
四天王と同様に年齢は不明だが、見た目はだいたい三十歳前後、ノアよりも少し年上に見える。
ちなみに、『ギウスデス』という名前は組織を作った時から名乗っていて、誰も本名は知らないという設定になっている。ドラマの中に本名は一切出てこないので、設定すらされていない可能性が高い。
しかし、今はそんなことはどうでもいい。
「黒幕はやっぱりお前か」
呻くようにそう口にした千紘は、入り口に突っ立ったままで、奥歯を噛み締める。
ギウス四天王が具現化されていたのだから、ギウスデスも具現化されていて何らおかしくはない。
それはわかっている。
だが、できればあって欲しくなかったというのが千紘の本音だった。
まだ遠くにいるギウスデスは、ノアの洗脳が解けたことにも動じる様子はなく、ただその場に佇んでいるだけである。
「四天王と同じで、お前も具現化されてるんだろ?」
秋斗が千紘の隣に並び、冷静な口調でギウスデスに問う。
ギウスデスは無言で一つ大きく頷いてみせると、今度ははっきりと千紘たちにわかるように、不敵な笑みを浮かべたのだった。
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