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第37話 ファクトリー(1)

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――超金属メチャカテー、陸海空、耐電、耐熱、耐水、耐衝撃、あらゆるテストもクリア。おまけにローコストで大量生産大量消費。ロボットも安くなったもんだぜ

 それは、時折聞こえてくる名前も顔も思い出せない、だけれど自分と近しいと思われる「誰か」の溜息交じりの言葉。


――ロボット? あれは俺と同じ改造人間じゃないの?

――ちげーよ。何度も言わせんな。改造人間は人間なんだよ。肉体組織の一部を機械に代用して強化しているものさ。だからこそ、人として必要な血液や酸素や栄養も必要になる……まぁ、接種する栄養がちょっとまた……だが、心もある! でも、アレは違ぇ


 そのとき、不鮮明ながらも脳裏にある光景が思い浮かんだ。
 それは多くの「機械」が並び白衣を着た「人間」たちが「コンピューター」の前で製造物のチェックを行っている。


――調査用、軍事利用、作業用、色々とあるが、ロボットの最大の強みは人が遠隔で操作し、ロボットを通して得た情報は本部と共有できるし、いくらでもバックアップできる

――そうなんだ……

――いつか人間たちの究極の戦争は巨大ロボット対決になるかもな。ロマンだぜ!


 大きな「ベルトコンベア」で流されてくる人型の鉄人形。
 その姿は……

――だが、もっとも恐ろしいのはロボットというよりも……プログラム入力すればあとは自動でロボットを製造してくれるこのファクトリーとハイパーコンピューターだ。今はチェックのために我々が居るが、近い将来には完全無人化で稼働できるようになる。ある程度破損したロボットも動けるだけの力があれば、自動でファクトリーに戻ってきて自動修繕される。便利なもんだろう? 言うなれば、俺たちが部屋でピザ食べて映画でも見ている間に、勝手に世界を――――

 そして、ツギハギだらけの夢がそこで覚めた。

「そうだ……ファクトリーとコンピューター……アレを破壊しない限り……あいつらはこれからも現れ続ける」

 目が覚めたアークスは森の中に居た。
 昨日は鉄の残骸を大量に摂取し、満腹になったことでそのまま寝てしまったのだ。

「……止めなきゃ……壊さなきゃ……そうしなければいつまでたっても……ん?」
 
 この数日、目の前で起こってきた悲劇を止めるには、その母体を叩かなければ意味がない。 
 それを破壊することが己の使命だと感じたアークスだったが、ふと思ってしまった。
 何でそれが自分の使命なのだ? と。
 
「ん~……ん……」
「っ!? え?」

 そのとき、すぐ傍から寝息が聞こえた。
 驚いて隣を見ると、自分と寄り添うようにクローナが無防備に寝息を立てていた。

「あ……」
「す~……ん……」

 一瞬驚いたアークスだったが、昨晩のことを思い出して納得。
 そして、まだ起きる様子がないほど深く眠っているクローナを見て、ほんとうに色々とあって気も抜けて疲れてしまったのだろうと感じた。

「……かわいいな……」

 いつもニコニコ笑顔な印象のクローナ。
 しかし、本当は精神もずっと張り詰めたまま、いつ自分や近しい者が死ぬかもわからない状況に常に身を置きながら戦い、その上で仲間や部下、そして力のない民や子供たちのために尽くしてきたのだ。
 だからこそ、昨日の人類初勝利という戦果はクローナのこれまでの緊張の糸を解いてしまうぐらいのことだったのだろうと、アークスは理解した。

「……守ってあげたいな……」

 その上で、昨晩のクローナとの出来事を思い出す。
 記憶がないことの不安や恐怖。
 自分が人とは違うということで暗くなりかけた自分の心を救ってくれた。
 温かかった。
 嬉しかった。
 だからこそ……

「よく分からないけど……クローナたちのために……ファクトリーを見つけて破壊しないと……それに……俺のことが何か分かるかもしれないし……」

 理由はそれで十分だった。

「でも、ファクトリーはどこに……ん?」

 そして、今一度アークスはあることを思い出した。
 断片的な夢の中で「誰か」が言っていた。

――破損したロボットも動けるだけの力があれば、自動でファクトリーに戻ってきて自動修繕される

 ……という部分。
 それを思い出し、アークスはハッとした。

「そうか、帰投ポイント! それに、昨日撤退したやつらも……撤退したってことは……そこにファクトリーがあるってことじゃないか!」

 どこにあるか分からないファクトリー。
 しかし、それのヒントは奴らが持っている。
 
「なら……行かないと……。人を引っ越しさせたり、昨日みたいに十体、二十体倒すだけじゃダメだ……元を絶たないと。そしてそれは……俺にしかできない」
「その、ふぁくとりーというものは分かりませんが、本拠地みたいなものですか?」
「うん」
「なるほど……キカイが撤退した先にキカイの本拠地……それは気付きませんでした。確かに、そこを叩くことさえできれば……」
「ああ。そこを叩きさえ……すれ……ば?」

 そこでアークスは再びハッとして隣を見る。
 そこには自分の隣で横たわりながらも、バッチリと目を開けているクローナがいた。
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