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第34話 宴(2)

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「童どもがどうした?」
「……はい……あの子たち……見てしまったようで……」
 
 子供たちに元気がない理由。それはキカイたちに襲われてショックを受けているからではない。
 子供たちはあの戦いの最中、クローナと同じように一番傍で、ある光景を見てしまったのだ。

――……オイシイ

 キカイの体に噛み付き、噛み千切り、そしてその部位を食べるアークスの姿を。
 死んだキカイの死骸を漁るようにムシャムシャと食べていく光景を。

「ああ……アレか……確かに最初は驚いたのう……なんという顎だだとな」
「ええ。でも……」
「たしかに、童には刺激が強すぎる光景じゃ。それに、冷静に考えれば……キカイを食う……そして、それを力として取り込んだり、キカイを倒せる武器を作ったり……得体のしれない救世主殿であることには変わらぬ……」

 そう、あの光景を見て何を思うかは人それぞれである。
 子供たちがアークスに恐怖を抱くのも無理はないのかもしれない。
 しかし、それは納得しながらも、クローナは自分の想いを再度見つめなおしたうえで、トワイライトに答える。


「私は……アークスが誰であれ、もっと知りたい……彼をもっと見ていたい……そう思います」

「そうか……」


 その想いに間違いはないと、クローナは断言して、トワイライトも納得したように頷いた。

「小生も同じです。救世主様のこと……おそらく、今後も見るものによって……さらには上層部もどう判断をされるかは分かりませぬが、これだけは言えます。我々は救世主様を決して手放してはならぬと」

 それはオルガスも同じ気持ちであり、たとえ何者であろうとアークスを手放すことはできないと断言した。

「うむ。とりあえず、今日はうかれるだけうかれさせて……あやつのことは考えねばな。親父殿や獣王殿にもどう報告するか……これで変な誤解を生んで、あやつを魔族と獣人で奪い合いとかそういうことにならぬようにせねばならんな」
「そうですね。それに、救世主様の意志もあるでしょうし……小生ら自身も救世主様に見限られぬよう、できる限り尽くさねばなりませぬ」

 そう、これまでキカイという脅威に対抗するため、これまで争っていた魔族と獣人が手を組んで今の連合軍が誕生した。
 しかし、今回のことで魔族の姫と将軍である自分たちは、キカイに対抗できる希望を手にしてしまった。
 しかしこれは「魔族が手にした」ということではなく「連合軍、そして人類が手にした」という解釈にしなければならない。
 これでアークスの存在を使ってせっかく手を組んだ魔族と獣人の対等な同盟関係にいらない問題を起こしてはならない。
 そのため、アークスの扱いや、その報告をどうするか、トワイライトたちは真剣に考えなければならなかった。

「アークス……」

 そして、クローナはもう一度アークスを見つめ、宴会の中心で皆からもみくちゃにされて苦笑しながらも、どこか元気がない様子で、更に料理にも一切手を出していないアークスに気付いた。
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