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第10話 姫姉妹(2)

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「で……おぬしは誰じゃ?」
「は、はい!?」
「しかも……我が妹の手を握るとは……」

 だが、そんなトワイライトがクローナの傍らのアークスをギロリと睨みつける。
 その殺気に思わずアークスも身震いし、先ほどのキカイたちに感じたときのような恐怖を抱いてしまった。
 
「んもぅ、お姉様、睨んではなりません。彼はキカイに襲われていたのです」
「キカイ……やはりか。先ほど結界の内側に入り込んだのは感じていたが、そちらにも行っておったか」
「はい。今も追いかけてきてます」
「分かった。既に撤退の準備はできておる。この近辺の村人たちは既に避難させておる」

 だが、そこは上に立つ者。


「全軍に告ぐ! 只今より『エデン』に帰還する!」

「「「「「オオオオオオオオッッ!!」」」」」


 今はそんなことよりも優先すべきことをちゃんと理解し、即座に指示を出し、部下の者たちはその言葉に迅速に従って動き出す。
 そして……

「さて、おぬしは……左の半身は……義眼? 義手? 分からぬが……魔族ではないようだな。猿の獣人……? 体毛の少ない猿か? とりあえず、今の時世だ。魔族と一緒でも我慢してもらおう。そして話もあとだ。今から儂らから離れず行動するように」
「は、はい……」
「安心するがよい。種族違えど同盟に基づき、そして世界連合軍の名に懸けて、おぬしは儂らが守ろう」
「あっ……」

 そう言って、姫という高位の身分でありながら、トワイライトもクローナ同様にアークスに触れた。
 触れたのは右頬。
 鋼の左半身と違い、トワイライトの温もりがアークスに直接伝わった。
 その言葉はまさにクローナに言われた言葉であり、確かな力強さを感じさせた。
 その瞬間、やはり目の前の女はクローナの姉なのだと、アークスも恐怖が失せて安心した。

「あ……」
「儂らを信じろ」

 思わずアークスは改めて見惚れた。
 美しさだけでなく、カッコよさを感じた瞬間だった。

「……アークスを保護したのは私ですから、アークスを守ってあげるのは私ですよ?」
「……おっと。そうか」

 そんな姉であるトワイライトに見惚れているアークスを、ちょっとおもしろくないと思ったのか、クローナはアークスの右手を引っ張って引き寄せた。 
 だが、その時だった。

「トワイライト姫! キカイたちが後方から近づいています! 多いです!」
「来たか……キカイども……」

 やはり安心している状況ではなかった。
 追いかけてきたキカイの存在に、トワイライトも他の兵たちも殺気立つ。


「全軍、キカイたちを牽制しながら離脱する! 儂が殿《しんがり》を務める!」

「姫様、危険です! 姫は世界の希望の一人! そういった役は我々が……」

「おぬしらが殺される方が儂の心を抉る。構わず退却するのだ! 儂もすぐに追いか……ッ、気をつけろ! 攻撃が来るぞ!」


 そして、まだそれなりに距離が離れていたというのに、キカイたちは一斉に両腕を前に突き出して、その腕の形を妙な筒のようなものに変形させて攻撃を仕掛けてきた。
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