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第13話 栄冠
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「飛翔せよ、ゴルド!」
「ガウッ!」
ゴルドの手綱を退き、宙へと一旦逃れる。だが、一息ついたかと思えばすぐにタカラは剣を前に突き出す。
「行け、ゴルド! 風のように吹き荒れろ!」
「ガウガウッ!」
ただ翼で飛ぶだけでない。スピードに乗って、オレとカノンの周りをグルグルと飛ぶ。
「くっ、速いわ……!」
「……グルル……」
それは、人の身では捉えることのできない、鍛えられた騎獣の動き。
いかにカノンとて、そのスピードには目が追いつかなかった。
「オレ、気を付けて! タカラとゴルドの必殺はここから。タカラのウィンドカッターとゴルドのブレスを複合して……って、え~っと何て言えば……」
オレに気を付けるように指示を出そうとしても、細かい会話ができないオレにうまく伝えられない。
急造コンビであるために、タカラとゴルドのような意思疎通も難しい。
どうすればいいのかと頭を抱えるカノン。
だが……
「カノン!」
「え?」
「オレ、カノン、マモル! カーツ!」
オレは何も心配いらないという笑顔をカノンに向けた。
そして……
「行くぞ、騎獣一体必技・ビーストウィンドサークルッ!!」
周囲を、円を描くように飛びまわりながら、魔法のカマイタチと騎獣のブレスを隙間なく連射するタカラとゴルド。
「カノン、マモル!」
「ッ!?」
隙間なく時間差もなく連射される攻撃に対し、ガラ空きの真上にジャンプして回避。
それもまた、人間離れして校舎よりも高い跳躍。
だが……
「だろうな! だけど、空中では身動き取れないだろう!」
それをタカラは読んでいた。
笑みを浮かべてそのまま上空へ向けて再び風の刃とブレスを飛ばす。
「いけない! ウィンドカッターッ!」
オレの背でカノンも放たれた攻撃を迎撃するために同じ風の刃を飛ばすが、ゴルドのブレスだけは消せない。
「ぐっ、ゴルドのブレスが……避けて、オレ!」
「カノン、マモル!」
しかし、そのブレスに対してオレは何もしない。
空中で無理に体を仰け反らして回避したりするような様子はなく、ただ正面から、その背に背負っているカノンを一切傷つけないように、ゴルドのブレスを全て正面から受け止めた。
「ガルゥウウ、ウガウウウウッ!」
「ちょ……オ……オレッ!」
ゴルドの焼けつくようなブレスを生身で正面から全てを受ける。
蒼白するカノンの目には、褐色の肌に痛々しい痕を刻まれたオレの体。
しかし、オレはすぐに笑顔を見せ……
「カノン、マモル!」
「ッ!?」
その瞬間、カノンの全身に熱い何かが駆け巡った。
心臓を鷲掴みされ、無理やり激しく強く鼓動させるような衝撃を受け……
「オレ、あなたを皆に見せつけてやる! 私のツガイはとんでもないやつだってことを!」
そしてカノンは自らオレの背を足蹴にするように離れ、剣を振りかぶる。
「オレ、行って!」
「? ………ッ! ワカタ!」
カノンのやろうとしていることをオレも瞬時に理解。
剣を空中で俺めがけて振りぬくカノンの剣の腹をオレは足蹴にして、空中から勢いよくタカラとゴルド目がけて跳んだ。
「なっ、なんだ、そのメチャクチャな戦い方は……なんて醜く……華麗さも優雅さもなく……なんと…………美しい」
それは誇り高い公爵家として絶対にありえないメチャクチャな戦い方であった。
しかしタカラの目には、それはどこか否定する心以上に、どうしても見惚れてしまい……
「ガルラアアアアアアッ!」
「ッ、しまっ――――ッ!?」
タカラも、そしてゴルドも反応できずに、オレの突進を正面から受けてしまった。
まるで、馬車にでもぶつかったような激しい衝突。
「あ……がっ、かはっ、ぐっ……・」
ゴルドと共に地面に身体を強く打ち付けながら激しく転がって落馬するタカラ。
すぐに立ち上がれぬほどの痛みに顔を歪めながら、目を開けると……
「オレー、受け止めて! 受け止めて!」
「カノーン!」
激しい衝突をしたばかりというのに、落下してくるカノンに向かってすぐにオレは走り出して、そして両腕でしっかりと受け止める。
「オレ、二重マルありがと♪」
「カノン!」
カノンの礼に、嬉しそうに子供のように笑うオレ。
地面にひれ伏しているのは、タカラとゴルド。
勝ったのは、カノンとオレ。
現状誰の目にも明らかなこの状況下、タカラは表情を落としながら……
「……まいった……僕たちの……完敗だ……カノン……その……オレくん……」
完膚なきまでに敗れたことを認めたのだった。
そして、タカラのその宣言と共に、中庭に集った生徒たちから盛大な歓声が上がる。
そしてその一部始終を校長室から眺めていた校長とフラットは、ただただ呆然と立ち尽くしていた。
「ガウッ!」
ゴルドの手綱を退き、宙へと一旦逃れる。だが、一息ついたかと思えばすぐにタカラは剣を前に突き出す。
「行け、ゴルド! 風のように吹き荒れろ!」
「ガウガウッ!」
ただ翼で飛ぶだけでない。スピードに乗って、オレとカノンの周りをグルグルと飛ぶ。
「くっ、速いわ……!」
「……グルル……」
それは、人の身では捉えることのできない、鍛えられた騎獣の動き。
いかにカノンとて、そのスピードには目が追いつかなかった。
「オレ、気を付けて! タカラとゴルドの必殺はここから。タカラのウィンドカッターとゴルドのブレスを複合して……って、え~っと何て言えば……」
オレに気を付けるように指示を出そうとしても、細かい会話ができないオレにうまく伝えられない。
急造コンビであるために、タカラとゴルドのような意思疎通も難しい。
どうすればいいのかと頭を抱えるカノン。
だが……
「カノン!」
「え?」
「オレ、カノン、マモル! カーツ!」
オレは何も心配いらないという笑顔をカノンに向けた。
そして……
「行くぞ、騎獣一体必技・ビーストウィンドサークルッ!!」
周囲を、円を描くように飛びまわりながら、魔法のカマイタチと騎獣のブレスを隙間なく連射するタカラとゴルド。
「カノン、マモル!」
「ッ!?」
隙間なく時間差もなく連射される攻撃に対し、ガラ空きの真上にジャンプして回避。
それもまた、人間離れして校舎よりも高い跳躍。
だが……
「だろうな! だけど、空中では身動き取れないだろう!」
それをタカラは読んでいた。
笑みを浮かべてそのまま上空へ向けて再び風の刃とブレスを飛ばす。
「いけない! ウィンドカッターッ!」
オレの背でカノンも放たれた攻撃を迎撃するために同じ風の刃を飛ばすが、ゴルドのブレスだけは消せない。
「ぐっ、ゴルドのブレスが……避けて、オレ!」
「カノン、マモル!」
しかし、そのブレスに対してオレは何もしない。
空中で無理に体を仰け反らして回避したりするような様子はなく、ただ正面から、その背に背負っているカノンを一切傷つけないように、ゴルドのブレスを全て正面から受け止めた。
「ガルゥウウ、ウガウウウウッ!」
「ちょ……オ……オレッ!」
ゴルドの焼けつくようなブレスを生身で正面から全てを受ける。
蒼白するカノンの目には、褐色の肌に痛々しい痕を刻まれたオレの体。
しかし、オレはすぐに笑顔を見せ……
「カノン、マモル!」
「ッ!?」
その瞬間、カノンの全身に熱い何かが駆け巡った。
心臓を鷲掴みされ、無理やり激しく強く鼓動させるような衝撃を受け……
「オレ、あなたを皆に見せつけてやる! 私のツガイはとんでもないやつだってことを!」
そしてカノンは自らオレの背を足蹴にするように離れ、剣を振りかぶる。
「オレ、行って!」
「? ………ッ! ワカタ!」
カノンのやろうとしていることをオレも瞬時に理解。
剣を空中で俺めがけて振りぬくカノンの剣の腹をオレは足蹴にして、空中から勢いよくタカラとゴルド目がけて跳んだ。
「なっ、なんだ、そのメチャクチャな戦い方は……なんて醜く……華麗さも優雅さもなく……なんと…………美しい」
それは誇り高い公爵家として絶対にありえないメチャクチャな戦い方であった。
しかしタカラの目には、それはどこか否定する心以上に、どうしても見惚れてしまい……
「ガルラアアアアアアッ!」
「ッ、しまっ――――ッ!?」
タカラも、そしてゴルドも反応できずに、オレの突進を正面から受けてしまった。
まるで、馬車にでもぶつかったような激しい衝突。
「あ……がっ、かはっ、ぐっ……・」
ゴルドと共に地面に身体を強く打ち付けながら激しく転がって落馬するタカラ。
すぐに立ち上がれぬほどの痛みに顔を歪めながら、目を開けると……
「オレー、受け止めて! 受け止めて!」
「カノーン!」
激しい衝突をしたばかりというのに、落下してくるカノンに向かってすぐにオレは走り出して、そして両腕でしっかりと受け止める。
「オレ、二重マルありがと♪」
「カノン!」
カノンの礼に、嬉しそうに子供のように笑うオレ。
地面にひれ伏しているのは、タカラとゴルド。
勝ったのは、カノンとオレ。
現状誰の目にも明らかなこの状況下、タカラは表情を落としながら……
「……まいった……僕たちの……完敗だ……カノン……その……オレくん……」
完膚なきまでに敗れたことを認めたのだった。
そして、タカラのその宣言と共に、中庭に集った生徒たちから盛大な歓声が上がる。
そしてその一部始終を校長室から眺めていた校長とフラットは、ただただ呆然と立ち尽くしていた。
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