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第10話 銀河の男
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エルフとは、一言で言えば長寿の種である。
不死ではないとはいえ、ほぼ半永久的に活動する彼女らは、戦や争いをやめて子孫繁栄に務めれば、その数は大幅に増加する。
そして現代は、他種族とも合意・強引を問わずに交配することにより、その数は大陸全土に広がり、更には数多に増殖したエルフの種族も、『スケヴェルフ族』という一種に統一された。
最早、この世界において、エルフとの繋がりを持たぬ種族は徐々に減少の道を辿っている。
だが、過剰なまでに増え続けた種というものは、僅かなことで平穏や均衡を崩すことになる。
彼女らの掲げた、男に対する異常な制度もその一つである。
そして、だからこそ、その異常な現状に抗おうとする者も現れるのである。
「……………なにをしている…………なにをしているこの恥知らず共ッ!!!!」
ダークエルフたちと向かい合うように、対極のエルフの部隊が到着していたのだった。
「ほう……これはこれは……オルガス。貴様、こんな所で何をしている?」
「それはこちらのセリフだ。姉上」
にらみ合うように対立する、エクスタとオルガス。
また、そんな彼女たちに付き従う両者の騎士たちもまた、互いの主の後ろに横並びで集結し、一触即発の空気が流れていた。
「抜き打ちの取調べだ」
「……どう見ても陵辱にしか見えないが?」
「ふっ……この港町は我らと税の上での繋がりしかない。今後の謀反を無くすため、スケヴェルフ族との血縁を作るための子作りも兼ねている。立派な公務だ」
「……ッ……エクスタ……貴様ァ」
一切の悪びれも無いエクスタに怒りの形相を向けるオルガス。すると次の瞬間、
「姉と呼べ……妹よ……スケヴェルフ族同士の争いは御法度……忘れたか? この愚か者め」
エクスタからもまた、強烈な殺気が漏れて場の空気が一変した。
その空気に触れた港町の女漁師や男たちも皆、恐怖で引きつった表情を浮かべながら震え、誰も一言も発せないで居た。
「それに、貴様の部隊でも男娼を買っていよう? それと何が違う? 我らの法律では、男への強姦も許されている。つまり合法であろう?」
「だからと言って、これは違うであろう! それに、女たちにも被害が出ているではないか!」
「取調べに対し、非協力的なものたちに、少々手荒なことをしたぐらいではないか?」
両部隊の騎士たちも、一瞬も気が抜けず、いつでも抜刀できるように気持ちを準備している。
どちらが我慢できずに先に仕掛けるか。それとも命令が降りるか。もしくは、この場は収まるか?
緊迫した表情で、エルフたちは睨み合っていた。
「まったく、しらけさせてくれる……が……構うこと等ない! 止めるな、我が同胞たちよ!」
「ッ!!??」
その時、エクスタの口から発せられたのは、「オルガスたちに構うな」という命令であった。
「エクスタ、何を言っている! この陵辱をやめよ!」
「ふん。やめぬさ。何故なら、我らは法を破ってはおらぬ。むしろ、我らの公務を阻む貴様らの方が規則違反。それでも、我と戦うか?」
「ぐっ、……つっ……」
「黙って立ち去れ、オルガス! これ以上、口を、手を、ましてや剣を抜いてみろ! その時は……貴様ら全員我が死罪を与えてくれようぞ!」
自分たちは何一つ違反はしていないと、強気な態度でオルガスの制止を振り払うエクスタ。
「さあ、犯せ! 舐れ! 孕んでおけ! 所詮男等その程度の役にしか立たん! こいつのたわ言などに一切惑わされるな! それこそ、オルガスの部下たちも我が隊に異動すれば、もはや男等買わずに、好きなだけヤらせてやるぞ!」
そう、エクスタたちの行いは、現在の大陸では合法であり、公務であり、常識の範囲内なのである。
むしろ、同じスケヴェルフ族同士が争うことの方が重罪であり、当然、それに伴う処罰をオルガスも理解している。
「「「「「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!!!」」」」」
「き、貴様ら! やめろ……やめろぉおおお!」
故に、目の前でどれほど見過ごせぬ非道な行いが行われようとも、それをオルガスがとめることは出来ないのだった。
それこそ、この大陸の法に縛られることなく、己を貫き通せるものにしか、この状況は止められない。
「まずは、この可愛い肉人形を……」
「ひい、なにするのぉ、やめてよぉ!」
「おい、何度も言わせるな。姫たる我に逆らう気か?」
そして、その狂気をエクスタは先ほど捉えた小さな幼女に向ける。
「いくら可愛いとはいえ、所詮は変えが利く消耗品のミニ便器。持ち運びやすいように手足を斬り落とすことだってできるのだぞ!」
「ひっ!?」
抵抗しようとする幼女に、容赦なく巨大な杖を首筋に当てようとする。
だが……
「スペースリーグ1号! 武器破壊!」
「ッ!?」
そのときだった。
手のひらサイズの鉄球が、うなりを上げて突如エクスタに向かって飛んでいった。
「な、なに?!」
「え……?」
「エクスタ様!?」
「姫様!?」
「だ、誰だ、こんな無礼なことをしたのは!」
目にも止まらぬ剛速球で放たれたその鉄球。だが、その鉄球はエクスタの身体に向けられたものではない。
それは、エクスタがその手に持っていた杖に向けられたもので、鉄球をぶつけられた杖はいともたやすく粉々に粉砕されたのだった。
「なっ……なん、だと? だ、誰だ!」
エクスタは怒り……と同時にゾッとした。
世界を統治する大帝国の王族たるエクスタが持つ魔法の杖は、当然膨大な魔力によって保護されているものである。
それが粉々に砕け散ったのである。
もし今の鉄球が体に当たっていたら? 頭に当たっていたら?
容易に自分の頭が潰れて絶命する姿を想像してしまい、叫んだその声が僅かに上ずっていた。
すると……
「銀河法を適用されない未開の惑星には、本来手を出すことも現地の人と干渉することは禁じられているけども……僕の好きなお姉ちゃんたちは、僕の好きなお姉ちゃんたちが認めるような男になるってことは、こういうことを『仕方ない』 って見捨てる男じゃないはずだから!」
力無き少女の危機に、もはや耐えられないと、飛び出した。
「タック・ヲネショーター! こんな子供に何するの! やめてあげてよぉ!」
投球後のフォームのまま、タックがエクスタたちの前に現れた。
「な?! お、男だと……?」
「タっ、タッくん!?」
エクスタも、オルガスも、そしてこの場に居る女たち、この光景を見ている者たちすべてが、割って入って来た男の存在に驚愕した瞬間だった。
不死ではないとはいえ、ほぼ半永久的に活動する彼女らは、戦や争いをやめて子孫繁栄に務めれば、その数は大幅に増加する。
そして現代は、他種族とも合意・強引を問わずに交配することにより、その数は大陸全土に広がり、更には数多に増殖したエルフの種族も、『スケヴェルフ族』という一種に統一された。
最早、この世界において、エルフとの繋がりを持たぬ種族は徐々に減少の道を辿っている。
だが、過剰なまでに増え続けた種というものは、僅かなことで平穏や均衡を崩すことになる。
彼女らの掲げた、男に対する異常な制度もその一つである。
そして、だからこそ、その異常な現状に抗おうとする者も現れるのである。
「……………なにをしている…………なにをしているこの恥知らず共ッ!!!!」
ダークエルフたちと向かい合うように、対極のエルフの部隊が到着していたのだった。
「ほう……これはこれは……オルガス。貴様、こんな所で何をしている?」
「それはこちらのセリフだ。姉上」
にらみ合うように対立する、エクスタとオルガス。
また、そんな彼女たちに付き従う両者の騎士たちもまた、互いの主の後ろに横並びで集結し、一触即発の空気が流れていた。
「抜き打ちの取調べだ」
「……どう見ても陵辱にしか見えないが?」
「ふっ……この港町は我らと税の上での繋がりしかない。今後の謀反を無くすため、スケヴェルフ族との血縁を作るための子作りも兼ねている。立派な公務だ」
「……ッ……エクスタ……貴様ァ」
一切の悪びれも無いエクスタに怒りの形相を向けるオルガス。すると次の瞬間、
「姉と呼べ……妹よ……スケヴェルフ族同士の争いは御法度……忘れたか? この愚か者め」
エクスタからもまた、強烈な殺気が漏れて場の空気が一変した。
その空気に触れた港町の女漁師や男たちも皆、恐怖で引きつった表情を浮かべながら震え、誰も一言も発せないで居た。
「それに、貴様の部隊でも男娼を買っていよう? それと何が違う? 我らの法律では、男への強姦も許されている。つまり合法であろう?」
「だからと言って、これは違うであろう! それに、女たちにも被害が出ているではないか!」
「取調べに対し、非協力的なものたちに、少々手荒なことをしたぐらいではないか?」
両部隊の騎士たちも、一瞬も気が抜けず、いつでも抜刀できるように気持ちを準備している。
どちらが我慢できずに先に仕掛けるか。それとも命令が降りるか。もしくは、この場は収まるか?
緊迫した表情で、エルフたちは睨み合っていた。
「まったく、しらけさせてくれる……が……構うこと等ない! 止めるな、我が同胞たちよ!」
「ッ!!??」
その時、エクスタの口から発せられたのは、「オルガスたちに構うな」という命令であった。
「エクスタ、何を言っている! この陵辱をやめよ!」
「ふん。やめぬさ。何故なら、我らは法を破ってはおらぬ。むしろ、我らの公務を阻む貴様らの方が規則違反。それでも、我と戦うか?」
「ぐっ、……つっ……」
「黙って立ち去れ、オルガス! これ以上、口を、手を、ましてや剣を抜いてみろ! その時は……貴様ら全員我が死罪を与えてくれようぞ!」
自分たちは何一つ違反はしていないと、強気な態度でオルガスの制止を振り払うエクスタ。
「さあ、犯せ! 舐れ! 孕んでおけ! 所詮男等その程度の役にしか立たん! こいつのたわ言などに一切惑わされるな! それこそ、オルガスの部下たちも我が隊に異動すれば、もはや男等買わずに、好きなだけヤらせてやるぞ!」
そう、エクスタたちの行いは、現在の大陸では合法であり、公務であり、常識の範囲内なのである。
むしろ、同じスケヴェルフ族同士が争うことの方が重罪であり、当然、それに伴う処罰をオルガスも理解している。
「「「「「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!!!」」」」」
「き、貴様ら! やめろ……やめろぉおおお!」
故に、目の前でどれほど見過ごせぬ非道な行いが行われようとも、それをオルガスがとめることは出来ないのだった。
それこそ、この大陸の法に縛られることなく、己を貫き通せるものにしか、この状況は止められない。
「まずは、この可愛い肉人形を……」
「ひい、なにするのぉ、やめてよぉ!」
「おい、何度も言わせるな。姫たる我に逆らう気か?」
そして、その狂気をエクスタは先ほど捉えた小さな幼女に向ける。
「いくら可愛いとはいえ、所詮は変えが利く消耗品のミニ便器。持ち運びやすいように手足を斬り落とすことだってできるのだぞ!」
「ひっ!?」
抵抗しようとする幼女に、容赦なく巨大な杖を首筋に当てようとする。
だが……
「スペースリーグ1号! 武器破壊!」
「ッ!?」
そのときだった。
手のひらサイズの鉄球が、うなりを上げて突如エクスタに向かって飛んでいった。
「な、なに?!」
「え……?」
「エクスタ様!?」
「姫様!?」
「だ、誰だ、こんな無礼なことをしたのは!」
目にも止まらぬ剛速球で放たれたその鉄球。だが、その鉄球はエクスタの身体に向けられたものではない。
それは、エクスタがその手に持っていた杖に向けられたもので、鉄球をぶつけられた杖はいともたやすく粉々に粉砕されたのだった。
「なっ……なん、だと? だ、誰だ!」
エクスタは怒り……と同時にゾッとした。
世界を統治する大帝国の王族たるエクスタが持つ魔法の杖は、当然膨大な魔力によって保護されているものである。
それが粉々に砕け散ったのである。
もし今の鉄球が体に当たっていたら? 頭に当たっていたら?
容易に自分の頭が潰れて絶命する姿を想像してしまい、叫んだその声が僅かに上ずっていた。
すると……
「銀河法を適用されない未開の惑星には、本来手を出すことも現地の人と干渉することは禁じられているけども……僕の好きなお姉ちゃんたちは、僕の好きなお姉ちゃんたちが認めるような男になるってことは、こういうことを『仕方ない』 って見捨てる男じゃないはずだから!」
力無き少女の危機に、もはや耐えられないと、飛び出した。
「タック・ヲネショーター! こんな子供に何するの! やめてあげてよぉ!」
投球後のフォームのまま、タックがエクスタたちの前に現れた。
「な?! お、男だと……?」
「タっ、タッくん!?」
エクスタも、オルガスも、そしてこの場に居る女たち、この光景を見ている者たちすべてが、割って入って来た男の存在に驚愕した瞬間だった。
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