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第八話 丸くおさめる
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『もう、十分だろ。溜まった神様ポイント分の加護は与えてやった』
その瞬間、御主神さまも慌ててナヒカーリくんの魔法を消します。
自分の意思に関係なく現れて、そして消えた魔法に戸惑うナヒカーリくん。
しかし周囲はナヒカーリくんが自分の意思で魔法を出し、そして消したと思い込み、ソラ君も……
「あ、あぅ……あ……う……あ……爺さんは俺は何でもコピーできるって言ってたけど……できねぇ……今のは……無理だ……」
「あ、え、あの、その……」
「ひっ!?」
「……………あ、あの……」
アレは間違いなく恐怖。次元違いの力を見せつけられ、生死を握られた恐怖に怯え切っています。
本来なら負けるはずのない相手……チートを持った子も、更なるチートの前に折れてしまいました。
「か……勘弁……してく……ださい……」
そして、怯えながらもようやく振り絞れたその言葉。
その言葉に、最初は他者を見下していたナヒカーリくんも慌てたように苦笑しました。
「あ、い、いや~、ぼ、僕も少し大人げなかったというか、うん、まぁね。あはははは……そ、それより、まぁ、あれだ。これからは仲良くしようじゃないか」
「あ、あんた……許してくれる……のか?」
「あ、ああ、もちろん! 小さいことを気にしないのが貴族だからね!」
貴族は関係ありませんが、彼自身もどうにかしてこの場をまとめないとと慌てている様子。
どうやら自分が使った力を理解できなくとも、「ヤバい」ということは理解されたのですね。
「すげー、ナヒカーリってあんなすごかったんだ……」
「新人君もすごかったけど、ナヒカーリはすげえ……」
「ってか、怖い……」
「あいつを怒らせるのはやめようぜ、命がいくつあっても足りない」
それによって、周囲が自分をどう見るかも……
「あの、ナヒカーリ先輩! 私、さっき先輩に誘われた……あの、やっぱり私、先輩と親密になりたいので、あちらの校舎に連れて行ってください……さっきは恥ずかしかっただけで、全然嫌がってないので……こ、殺さないでください……」
こうなりますよね。「すごい」ではなく「こわい」に。
「は、はははは、何だい皆。僕は何もしないさ。ちょっと驚かせただけで、僕はいつでも皆の味方さ! 友達だろう? あは、あははははは」
とりあえず、ナヒカーリくんは無理やり丸く収めようとしています。
そしてそのとき……
(神様の声が聞こえた……僕に……今までパパやママの言いつけで祈りをしていただけだったけど……神様は本当に居た……神様、ありがとうございます。でも……これからは、僕も心を入れ替えます……)
『う、うむ、これでよし。あとは、今の巨大魔法と、ソラという小僧に関するこの世界の記憶を色々弄って調整すれば、丸く収まる。ナヒカーリも心を入れ替え、ソラもナヒカーリを慕ってこれからも頑張る……うん、ほら、これで調整できるぞ!』
…………何とも言えませんが、思わず僕は苦笑いしてしまいました。
『ぬ、なんだ、その顔は……マインのくせに生意気な……』
『い、いえ、なんでもありません……』
『ふーんだ。とにかく、あとはさっさとソラという小僧からチートを回収し、小僧のチートに関する記憶、勇者の記憶、さらに今のナヒカーリの魔法に関する記憶だけ奪い、とりあえず『詳細忘れたけど、ナヒカーリすげー』という記憶を残す』
とりあえず、「これでよし」と頷いて納得された様子の御主神さま。
ただ、僕は……
『あの……ソラくんの強さも……消すのですか?』
『は?』
『いえ、ソラくんの才能はチートです。でも、努力で身に着けた力は努力で身に着けたものです……』
『…………だからどうしたのだ?』
『彼はチートがなくても、彼の努力で積み上げた力なら、ナヒカーリくんより強かったはずです。それを無視して、ナヒカーリくんに神のチートで力を貸し、ソラくんの強さを無かったことにっていうのは……これでは……』
『なんだ? 余をあのクビになった三人の神と同じと言いたいか?』
『そ、そこまでは……』
あっ、まずい。僕の不用意な発言で、御主神さまに不愉快な思いをさせてしまったかな?
で、でも、やっぱりソラくんも少し可哀想ですし……
『なんだ? マインのくせに遠慮するのか? 寝所ではこのめんこい容姿からは想像できぬ暴れ馬のごとく馬力のくせにのう』
『うっ……それは今は関係ないですよぉ……』
『構わん。遠慮するな。思ったことがあるなら言え』
僕を抱きしめてくださりながらそう仰る御主神さま。
その懐の大きさについ甘え、僕は……
『やっぱり僕は……ソラくんのこの十年以上の努力は考慮してあげたいと……』
『ふん、別にチートが無くなるだけであって、今の強さに至るまでの努力で身に着けた身体能力とかそういうのは失わぬ』
『でも、肝心な魔法剣は……彼の膨大な魔力を前提に磨き上げられた魔法剣……そしてコピー……』
『ぬ、ぬう……』
『元々彼のチートは神々の都合で与えてしまったものですし……』
『しかし……『24時間で1MPアップ』、『一度見た魔法や剣技は全てコピーできる』の両方を持つのはどう考えてもバランス悪かろう』
『そうですけど……それに、女の子も……』
『それは……たしかに……本来王道通りだったらソラという小僧に救われて惚れる展開になっていたであろう尻軽ビッチの小娘はアッチに行ったし、『ニコポナデポ』のチートがないゆえに今後は女からモテにくくもなったが……』
僕のお言葉に少し悩まれている様子の御主神さま。
そして少し独り言を呟かれた後、豪快にご自身の髪を掻きむしられながら……
『あ~~~~、もうわーったわい! なら、全部は無理だが……『24時間で1MPアップ』は後々世界を破壊しそうだし……なら、『一度見た魔法や剣技は全てコピーできる』だけは残しておいてやる! それでよいな!』
『御主神さま……!』
『まーったく、生意気な……あとでいっぱい、イチャイチャするから覚悟せよ♡』
『は、はい! 頑張ります!』
全てのチートの回収中断まではできないまでも、一つだけチートを残すことでどうやら妥協してくださりました。
まさに、神の御慈悲。
『ほれ、さっさと服脱いでイチャつくぞ! そんで、次の世界に行くのだ!』
『はい! どこまでもお供します!』
ただ……
「俺、や、やっぱ無理だ……」
「ん? ど、どうしたんだい? 新入生くん」
怯えていたソラくんはそう呟き……
「こ、こんな化け物みたいなところ……俺には無理だ! 俺、山に帰る! こんなとんでもない所に三年間なんて無理だぁ! 爺さーーーーん!!」
「あ……」
『『あ……』』
記憶を弄るとか、これからどうとかより、ソラくんは泣きべそかいてそのまま学校から出て行ってしまい、そして後から知ったのですが、もう二度と戻ってこなかったとか……
『まっ……こういうメンタルに関しては……神の与えたスキルではなく……チートがあろうがなかろうが、目の前に努力でもどうにもできない壁が現れたときどうするか……そこにその人物の全てが詰まっている。これがつまりあやつの全てということだ』
そう仰って、なんか御主神さまもまとめられました。
その瞬間、御主神さまも慌ててナヒカーリくんの魔法を消します。
自分の意思に関係なく現れて、そして消えた魔法に戸惑うナヒカーリくん。
しかし周囲はナヒカーリくんが自分の意思で魔法を出し、そして消したと思い込み、ソラ君も……
「あ、あぅ……あ……う……あ……爺さんは俺は何でもコピーできるって言ってたけど……できねぇ……今のは……無理だ……」
「あ、え、あの、その……」
「ひっ!?」
「……………あ、あの……」
アレは間違いなく恐怖。次元違いの力を見せつけられ、生死を握られた恐怖に怯え切っています。
本来なら負けるはずのない相手……チートを持った子も、更なるチートの前に折れてしまいました。
「か……勘弁……してく……ださい……」
そして、怯えながらもようやく振り絞れたその言葉。
その言葉に、最初は他者を見下していたナヒカーリくんも慌てたように苦笑しました。
「あ、い、いや~、ぼ、僕も少し大人げなかったというか、うん、まぁね。あはははは……そ、それより、まぁ、あれだ。これからは仲良くしようじゃないか」
「あ、あんた……許してくれる……のか?」
「あ、ああ、もちろん! 小さいことを気にしないのが貴族だからね!」
貴族は関係ありませんが、彼自身もどうにかしてこの場をまとめないとと慌てている様子。
どうやら自分が使った力を理解できなくとも、「ヤバい」ということは理解されたのですね。
「すげー、ナヒカーリってあんなすごかったんだ……」
「新人君もすごかったけど、ナヒカーリはすげえ……」
「ってか、怖い……」
「あいつを怒らせるのはやめようぜ、命がいくつあっても足りない」
それによって、周囲が自分をどう見るかも……
「あの、ナヒカーリ先輩! 私、さっき先輩に誘われた……あの、やっぱり私、先輩と親密になりたいので、あちらの校舎に連れて行ってください……さっきは恥ずかしかっただけで、全然嫌がってないので……こ、殺さないでください……」
こうなりますよね。「すごい」ではなく「こわい」に。
「は、はははは、何だい皆。僕は何もしないさ。ちょっと驚かせただけで、僕はいつでも皆の味方さ! 友達だろう? あは、あははははは」
とりあえず、ナヒカーリくんは無理やり丸く収めようとしています。
そしてそのとき……
(神様の声が聞こえた……僕に……今までパパやママの言いつけで祈りをしていただけだったけど……神様は本当に居た……神様、ありがとうございます。でも……これからは、僕も心を入れ替えます……)
『う、うむ、これでよし。あとは、今の巨大魔法と、ソラという小僧に関するこの世界の記憶を色々弄って調整すれば、丸く収まる。ナヒカーリも心を入れ替え、ソラもナヒカーリを慕ってこれからも頑張る……うん、ほら、これで調整できるぞ!』
…………何とも言えませんが、思わず僕は苦笑いしてしまいました。
『ぬ、なんだ、その顔は……マインのくせに生意気な……』
『い、いえ、なんでもありません……』
『ふーんだ。とにかく、あとはさっさとソラという小僧からチートを回収し、小僧のチートに関する記憶、勇者の記憶、さらに今のナヒカーリの魔法に関する記憶だけ奪い、とりあえず『詳細忘れたけど、ナヒカーリすげー』という記憶を残す』
とりあえず、「これでよし」と頷いて納得された様子の御主神さま。
ただ、僕は……
『あの……ソラくんの強さも……消すのですか?』
『は?』
『いえ、ソラくんの才能はチートです。でも、努力で身に着けた力は努力で身に着けたものです……』
『…………だからどうしたのだ?』
『彼はチートがなくても、彼の努力で積み上げた力なら、ナヒカーリくんより強かったはずです。それを無視して、ナヒカーリくんに神のチートで力を貸し、ソラくんの強さを無かったことにっていうのは……これでは……』
『なんだ? 余をあのクビになった三人の神と同じと言いたいか?』
『そ、そこまでは……』
あっ、まずい。僕の不用意な発言で、御主神さまに不愉快な思いをさせてしまったかな?
で、でも、やっぱりソラくんも少し可哀想ですし……
『なんだ? マインのくせに遠慮するのか? 寝所ではこのめんこい容姿からは想像できぬ暴れ馬のごとく馬力のくせにのう』
『うっ……それは今は関係ないですよぉ……』
『構わん。遠慮するな。思ったことがあるなら言え』
僕を抱きしめてくださりながらそう仰る御主神さま。
その懐の大きさについ甘え、僕は……
『やっぱり僕は……ソラくんのこの十年以上の努力は考慮してあげたいと……』
『ふん、別にチートが無くなるだけであって、今の強さに至るまでの努力で身に着けた身体能力とかそういうのは失わぬ』
『でも、肝心な魔法剣は……彼の膨大な魔力を前提に磨き上げられた魔法剣……そしてコピー……』
『ぬ、ぬう……』
『元々彼のチートは神々の都合で与えてしまったものですし……』
『しかし……『24時間で1MPアップ』、『一度見た魔法や剣技は全てコピーできる』の両方を持つのはどう考えてもバランス悪かろう』
『そうですけど……それに、女の子も……』
『それは……たしかに……本来王道通りだったらソラという小僧に救われて惚れる展開になっていたであろう尻軽ビッチの小娘はアッチに行ったし、『ニコポナデポ』のチートがないゆえに今後は女からモテにくくもなったが……』
僕のお言葉に少し悩まれている様子の御主神さま。
そして少し独り言を呟かれた後、豪快にご自身の髪を掻きむしられながら……
『あ~~~~、もうわーったわい! なら、全部は無理だが……『24時間で1MPアップ』は後々世界を破壊しそうだし……なら、『一度見た魔法や剣技は全てコピーできる』だけは残しておいてやる! それでよいな!』
『御主神さま……!』
『まーったく、生意気な……あとでいっぱい、イチャイチャするから覚悟せよ♡』
『は、はい! 頑張ります!』
全てのチートの回収中断まではできないまでも、一つだけチートを残すことでどうやら妥協してくださりました。
まさに、神の御慈悲。
『ほれ、さっさと服脱いでイチャつくぞ! そんで、次の世界に行くのだ!』
『はい! どこまでもお供します!』
ただ……
「俺、や、やっぱ無理だ……」
「ん? ど、どうしたんだい? 新入生くん」
怯えていたソラくんはそう呟き……
「こ、こんな化け物みたいなところ……俺には無理だ! 俺、山に帰る! こんなとんでもない所に三年間なんて無理だぁ! 爺さーーーーん!!」
「あ……」
『『あ……』』
記憶を弄るとか、これからどうとかより、ソラくんは泣きべそかいてそのまま学校から出て行ってしまい、そして後から知ったのですが、もう二度と戻ってこなかったとか……
『まっ……こういうメンタルに関しては……神の与えたスキルではなく……チートがあろうがなかろうが、目の前に努力でもどうにもできない壁が現れたときどうするか……そこにその人物の全てが詰まっている。これがつまりあやつの全てということだ』
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