上 下
1 / 20

01:コタくん

しおりを挟む
新作を書きました。
中盤まではラブコメです。
ですがNTRなので注意してください。

―――――

 彼との出会いは中学2年生のクラス替え。
 それまでは顔は知ってるけど話したことのない、ただの同級生だったんだけど、クラス替えをして席が隣同士になったことがきっかけで良くお話をするようになった。


「俺の名前は浜崎鼓太郎はまさきこたろうって言うんだ。これからよろしくな」

「私は三島弥生みしまやよいです。こちらこそよろしくね」


 彼の第一印象はとても優しそうだった。
 声色もそうだし、何よりも穏やかな笑顔がとても印象的だったのだ。
 あと、話すようになってから共通の趣味があることも分かった。
 その趣味はドラマ鑑賞。

 ドラマを観た翌日は、二人でドラマの感想を言い合ったり、サスペンス系だとお互いの推理を披露しあったりしていた。
 彼の感想や推理は私よりも深くて、いつも関心させられてしまう。
 そんな彼の話を聞くのが私はいつの間にかとても好きになっていた。
 お互いに異性の中で一番仲の良いクラスメイトって感じになって、お互いの呼び名もいつしか「弥生」と「コタくん」に変わった。

 そして一学期が終わって夏休みが近付いてくると、近所の神社で毎年恒例の夏祭りが開催される。
 その夏祭りにコタくんと私を含む男女4人組で遊びに行くことになった。
 この4人組は学校でも仲良しで、いつもみんなで楽しくお話をしている間柄だった。

 一緒に夏祭りに行く女の子は、親友の山根瞳やまねひとみちゃん。
 瞳ちゃんはクラスどころか、学校内でも人気が高く、何人もの人が告白をしていた。
 だけど、どんなかっこいい先輩や同級生に告白されても、全て振っちゃうんだからなんかかっこいいなって思っちゃう。
 ある日なんで付き合わないのか聞いてみたんだけど、「私一年の頃から好きな人がいるんだ」と言っていた。
 瞳ちゃんがこんなにも好きな人ってどういう人なんだろう? って興味はあったけど、それ以上は聞いちゃダメなオーラが漂ってたから聞かないようにしたんだよね。


「おっ、三島も山根も浴衣かよ! めっちゃいいじゃん! なっ、鼓太郎もそう思うだろ?」

「あっ、あぁ。2人とも良く似合ってるよ」


 待ち合わせに来て最初に声を掛けてきたのが小金井聡こがねいさとしくん。
 聡くんはコタくんの小学生の頃からの親友だ。
 そして瞳ちゃんと同様に、聡くんもとてもモテる人だった。
 外見はイケメンだし、スポーツも万能だから女の子からの人気がとても高いのだ。
 だけど、不思議なことに聡くんも誰とも付き合わずに、告白を断っているらしい。
 瞳ちゃんは好きな人がいるみたいだけど、聡くんはどうなんだろう?
 聡くんの恋愛話は聞いたことがなかった。

 私はというと、実はこの時点でコタくんにクラスメイト以上の感情を抱くようになっていた。
 だから浴衣も着たし、髪の毛も頑張ってヘアアレンジしてみた。
 だって、瞳ちゃんが一緒にいると、どうしても外見で負けちゃうからコタくんに私のことを見てもらいたいと思ったから。
 コタくんが誰を好きなのかとか聞いたことはないけど、外見では瞳ちゃんに絶対に負けちゃうのは分かってる。
 だけど、コタくんが瞳ちゃんばかり見ちゃったら寂しいし、やっぱり悔しくなっちゃうもん。

 この神社のお祭りは、特別な催しなどがあるわけではなく、出店が立ち並んでるだけなんだけど、赤い提灯で照らされるお祭りの雰囲気はまるで別世界のようで、私の気持ちをふわふわとさせてしまう。
 一頻りお祭りを楽しんだ私たちは、境内にあるテーブル付きのベンチに座って休憩をすることにした。
 そこでコタくんが「俺、たこ焼きとか買ってくるわ。荷物多くなるかもだから弥生も着いてきてよ」って言うから私は犬のように喜んで後を着いて行く。


「せっかく休憩してたのに付き合わせてごめんな」

「ううん。いいんだよ。コタくんと2人でお祭りに来てるみたいで嬉しいし」


 私がそう言うと、ちょっと顔を赤らめてそっぽを向いてしまった。
 よくよくさっきの私の言葉を思い返してみると、なんか告白したみたいな感じで私も途端に恥ずかしくなってしまう。
 するとコタくんが急に私の手を掴んだと思ったら、人気のない屋台の裏の方まで連れて行かれてしまった。
 急にどうしたんだろうって不思議に思ってコタくんの顔を見ると、恥ずかしそうにしてるけど、どこか真剣な目で私のことを見ている。
 その瞬間私の心臓は飛び跳ねるようにドキドキしてしまった。


「急にこんなところに連れてきてごめんな」

「ううん。けど、どうしたの?」


 私は卑怯だ。
 次にコタくんが何を言うのかくらい分かっているのに、わざと知らないフリをして質問をする


「あのな、俺弥生のことが好きなんだ。もし良かったら付き合ってくれないか?」


 私はとても嬉しくて、「はい。お願いします」と言いながら涙を流していた。
 急に泣き出した私を見て、コタくんはアワアワとしてたけど、おずおずと手を伸ばして私の頭を撫でてくれた。
 その感触がとても気持ちよくて、心地良くて、私はまたさらに泣いてしまうのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。

なつめ猫
恋愛
聖女としての天啓を受けた公爵家令嬢のクララは、生まれた日に王家に嫁ぐことが決まってしまう。 そして物心がつく5歳になると同時に、両親から引き離され王都で一人、妃教育を受ける事を強要され10年以上の歳月が経過した。 そして美しく成長したクララは16才の誕生日と同時に貴族院を卒業するラインハルト王太子殿下に嫁ぐはずであったが、平民の娘に恋をした婚約者のラインハルト王太子で殿下から一方的に婚約破棄を言い渡されてしまう。 クララは動揺しつつも、婚約者であるラインハルト王太子殿下に、国王陛下が決めた事を覆すのは貴族として間違っていると諭そうとするが、ラインハルト王太子殿下の逆鱗に触れたことで貴族院から追放されてしまうのであった。

聖女ではないと婚約破棄されたのに年上公爵様に溺愛されました

ナギノサキ
ファンタジー
聖女としての力を受け継ぐアリス・アンリゼットは第一王子であるクリスと婚約をしていた。 しかし、ある日をきっかけに聖女としての力を発動できなくなったアリスに対し王立魔法学院の卒業パーティーでクリスに婚約破棄を突き出されてしまう。 しかも、クリスの次の婚約者は妹であるアリアが選ばれた。そんな状況が掴めないままのアリスに思いがけない縁談を持ちかけられることになったが… *現在不定期更新です

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

正妃に選ばれましたが、妊娠しないのでいらないようです。

ララ
恋愛
正妃として選ばれた私。 しかし一向に妊娠しない私を見て、側妃が選ばれる。 最低最悪な悪女が。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

もふもふ獣人転生

  *  
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 衝撃で前世の記憶がよみがえったよ! 推しのしあわせを応援するため、推しとBLゲームの主人公をくっつけようと頑張るたび、推しが物凄くふきげんになるのです……! ゲームには全く登場しなかったもふもふ獣人と、騎士見習いの少年の、両片想いな、いちゃらぶもふもふなお話です。

どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら

風見ゆうみ
恋愛
「もう、無理です!」 伯爵令嬢である私、アンナ・ディストリーは屋根裏部屋で叫びました。 男の子がほしかったのに生まれたのが私だったという理由で家族から嫌われていた私は、密かに好きな人だった伯爵令息であるエイン様の元に嫁いだその日に、エイン様と実の姉のミルーナに殺されてしまいます。 それからはなぜか、殺されては子どもの頃に巻き戻るを繰り返し、今回で11回目の人生です。 何をやっても同じ結末なら抗うことはやめて、開き直って生きていきましょう。 そう考えた私は、姉の機嫌を損ねないように目立たずに生きていくことをやめ、学園生活を楽しむことに。 学期末のテストで1位になったことで、姉の怒りを買ってしまい、なんと婚約を解消させられることに! これで死なずにすむのでは!? ウキウキしていた私の前に元婚約者のエイン様が現れ―― あなたへの愛情なんてとっくに消え去っているんですが?

処理中です...