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部長
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「先生、俺、行ってもいいっスか?」
沈黙が続く中、奥で腕を組んでいる強者感をかもしだす推定部長が口を開いた。
体がかなり大きいから三年生だろう。
180センチあるかはわからないけど、175以上は確実にあるな……
ちなみにあたしの身長は157.5センチ。
「おい……藤崎さんが『ボクシング』で相手をするって事は……」
「これってタイトルになるんじゃねえのか?」
「まじかよ……」
場が妙にざわついた。
木刀ウ○コ座りが立ち上がって、リングの前までくる。
――タイトル? はて……
「……ああ」
先生は渋い感じで承諾。
今の渋い感じ……一体?
強者感を出す藤崎さんがリングに上がり、あたしがお時儀をしようとする前にゴングが鳴る。
グラブを合わせようともせず、いきなり打ってくる。
――典型的な不良タイプね……
あたしは相手のジャブは弾き、ストレートをかわす。
――速いっ!
流石に、今まで戦ったどの部員よりも強い。
一発を貰えば、おそらく起き上がれない。
――でもね! その一発を貰わないために、あたしは時間を忘れるくらい師匠と楽しんで練習を積み重ねてきたっ!
相手の攻撃を尽く、かわしていく。
よく師匠はあたしに『お前にはパンチ力が致命的に無い』『一撃KOが一番盛り上がる』と言ってくる。
地味に傷つく言葉だけど、同時にパンチ力無い選手が、どうやって相手を倒すか? も教えてくれる。
師匠がいうには、パンチ力なしで相手を倒すには技術が必要だ。
KOを実現するには頭を使ったボクシングをしろと。
日本のボクシングは頭と技術を使うボクシングであって欲しいと。
あたしは、勿論このファイトをKOで制するつもり。
時間が過ぎるのはあっという間で、まず1Rが終了。
あたしは、後退しながら戦い、相手はあたしを捕えようと前進してくる戦いだった。
うまくあたしが捌き切り、互いに有効打は無し。
こんな戦いが続いて、そのまま3R終了した。
黙っていれば、うやむやで終わるだろうけど、そうは問屋が降ろさない。
「勿論、このまま続けるわよね?」
「なんだと?」
「先輩、世界を目指しているんじゃないの? なのに3Rしか戦えないとか?」
実際問題、この先輩が世界を目指しているかどうかはわかんないけど。
あてずっぽうでもいいから挑発する。
とにかくこの勝負の場から逃がすわけにはいかない。
「……いいだろう。最大12Rだ」
――よかった。のってきてくれた。
「オッケー♪」
「ちょっと、さやちゃん、さやちゃん!」
「流石に、ここから9Rは無謀じゃないかしら?」
牡丹ちゃんと椿ちゃんがあたしを心配してくれる。
そう、あたしは先輩と違って、さっきの知的部員さんと3R戦っているし、それ以前にも何人か相手をしている。
ぶっちゃけ疲れていないわけじゃない。
「大丈夫よ、大丈夫……」
インターバルが終わり、4R目のゴングが鳴った。
あたしの戦法は変わらない、足を使いアウトボクシング気味に戦って、ジャブを打つ。
勿論、先程の猪突猛進の部員達と違って、不用意、怒り任せ、に突っ込んでくるような真似はしない。
相手の狙いも、あたしの狙いも同じスタミナ切れ。
あたしが、既に何戦もしているのをいい事に、スタミナが切れるのをおそらく待っている。
12Rも戦うとなれば、どの格闘技よりもスタミナを消費するだろう。
正に根競べというわけだ。
――あたしの足が使えなくなった時……
それがお前の崩れ落ちる時だ! みたいに考えているんでしょう?
あたしに、判定勝ちはない。
判定みたいになれば、どう考えてもあたしがアウェーなので、連中はこぞって部長を支持するだろう。
部長がペースを上げてきた。
自分のペースに持ち込み、あたしを疲れさせる気だ。
あたしもペースを上げて、それに対応する。
7Rが終了した。
インターバルになると、流石に疲れを実感する。
部長はまだまだ疲れを見せていない。
8Rを始めるため、お互いが向き合うと、部長が睨みを利かせてくる。
このRで倒してやるからなと言わんばかりに。
正直、流石のあたしも疲労は蓄積されている。
ゴングが鳴った。
このラウンドになって、部長が突進してくるかのように大きく前にでてきた。
あたしは部長のジャブを弾き、ストレートをかわす。
――このゾクゾクする感じっ! いいね♪
あたしってさ、速いパンチをかわして、その風圧を顔に感じるとなんか気分が高揚するんだよね……頭おかしいだけかもしんないけど……
これが続けば続く程、どんどん気分が乗ってくる。
気分が最高潮に達すると頭の中で音楽が流れだす。『High Roller Casino』っていう大好きな曲が。
何故そうなるのか? なんて科学的説明はできないけど。
自主練の時に好きな音楽をかけて練習することが多いせいかな?
何というか、音楽を聞くと楽しいっていうか、自然とステップが踏みやすくなり気分もノリノリになる。
疲れを忘れる事ができるっ!
――そうっ! あたしは今、最高にボクシングを楽しんでいるっ♪
あたしは、部長とのスパーリングを思う存分楽しんでいた。
沈黙が続く中、奥で腕を組んでいる強者感をかもしだす推定部長が口を開いた。
体がかなり大きいから三年生だろう。
180センチあるかはわからないけど、175以上は確実にあるな……
ちなみにあたしの身長は157.5センチ。
「おい……藤崎さんが『ボクシング』で相手をするって事は……」
「これってタイトルになるんじゃねえのか?」
「まじかよ……」
場が妙にざわついた。
木刀ウ○コ座りが立ち上がって、リングの前までくる。
――タイトル? はて……
「……ああ」
先生は渋い感じで承諾。
今の渋い感じ……一体?
強者感を出す藤崎さんがリングに上がり、あたしがお時儀をしようとする前にゴングが鳴る。
グラブを合わせようともせず、いきなり打ってくる。
――典型的な不良タイプね……
あたしは相手のジャブは弾き、ストレートをかわす。
――速いっ!
流石に、今まで戦ったどの部員よりも強い。
一発を貰えば、おそらく起き上がれない。
――でもね! その一発を貰わないために、あたしは時間を忘れるくらい師匠と楽しんで練習を積み重ねてきたっ!
相手の攻撃を尽く、かわしていく。
よく師匠はあたしに『お前にはパンチ力が致命的に無い』『一撃KOが一番盛り上がる』と言ってくる。
地味に傷つく言葉だけど、同時にパンチ力無い選手が、どうやって相手を倒すか? も教えてくれる。
師匠がいうには、パンチ力なしで相手を倒すには技術が必要だ。
KOを実現するには頭を使ったボクシングをしろと。
日本のボクシングは頭と技術を使うボクシングであって欲しいと。
あたしは、勿論このファイトをKOで制するつもり。
時間が過ぎるのはあっという間で、まず1Rが終了。
あたしは、後退しながら戦い、相手はあたしを捕えようと前進してくる戦いだった。
うまくあたしが捌き切り、互いに有効打は無し。
こんな戦いが続いて、そのまま3R終了した。
黙っていれば、うやむやで終わるだろうけど、そうは問屋が降ろさない。
「勿論、このまま続けるわよね?」
「なんだと?」
「先輩、世界を目指しているんじゃないの? なのに3Rしか戦えないとか?」
実際問題、この先輩が世界を目指しているかどうかはわかんないけど。
あてずっぽうでもいいから挑発する。
とにかくこの勝負の場から逃がすわけにはいかない。
「……いいだろう。最大12Rだ」
――よかった。のってきてくれた。
「オッケー♪」
「ちょっと、さやちゃん、さやちゃん!」
「流石に、ここから9Rは無謀じゃないかしら?」
牡丹ちゃんと椿ちゃんがあたしを心配してくれる。
そう、あたしは先輩と違って、さっきの知的部員さんと3R戦っているし、それ以前にも何人か相手をしている。
ぶっちゃけ疲れていないわけじゃない。
「大丈夫よ、大丈夫……」
インターバルが終わり、4R目のゴングが鳴った。
あたしの戦法は変わらない、足を使いアウトボクシング気味に戦って、ジャブを打つ。
勿論、先程の猪突猛進の部員達と違って、不用意、怒り任せ、に突っ込んでくるような真似はしない。
相手の狙いも、あたしの狙いも同じスタミナ切れ。
あたしが、既に何戦もしているのをいい事に、スタミナが切れるのをおそらく待っている。
12Rも戦うとなれば、どの格闘技よりもスタミナを消費するだろう。
正に根競べというわけだ。
――あたしの足が使えなくなった時……
それがお前の崩れ落ちる時だ! みたいに考えているんでしょう?
あたしに、判定勝ちはない。
判定みたいになれば、どう考えてもあたしがアウェーなので、連中はこぞって部長を支持するだろう。
部長がペースを上げてきた。
自分のペースに持ち込み、あたしを疲れさせる気だ。
あたしもペースを上げて、それに対応する。
7Rが終了した。
インターバルになると、流石に疲れを実感する。
部長はまだまだ疲れを見せていない。
8Rを始めるため、お互いが向き合うと、部長が睨みを利かせてくる。
このRで倒してやるからなと言わんばかりに。
正直、流石のあたしも疲労は蓄積されている。
ゴングが鳴った。
このラウンドになって、部長が突進してくるかのように大きく前にでてきた。
あたしは部長のジャブを弾き、ストレートをかわす。
――このゾクゾクする感じっ! いいね♪
あたしってさ、速いパンチをかわして、その風圧を顔に感じるとなんか気分が高揚するんだよね……頭おかしいだけかもしんないけど……
これが続けば続く程、どんどん気分が乗ってくる。
気分が最高潮に達すると頭の中で音楽が流れだす。『High Roller Casino』っていう大好きな曲が。
何故そうなるのか? なんて科学的説明はできないけど。
自主練の時に好きな音楽をかけて練習することが多いせいかな?
何というか、音楽を聞くと楽しいっていうか、自然とステップが踏みやすくなり気分もノリノリになる。
疲れを忘れる事ができるっ!
――そうっ! あたしは今、最高にボクシングを楽しんでいるっ♪
あたしは、部長とのスパーリングを思う存分楽しんでいた。
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