暴君王子は恋を知る

まぁ

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「何だ?やっぱり寂しいのか?」
「ち、違う!なんとなくだ!なんとなく……」
「はいはい」
 軽口は叩いたものの、素直に甘えてくるアンリがかわいいと思った。ついいたずら心が出そうになるが、ここは我慢しようと堪えた和史。だがこんなアンリも珍しいので、この関係も少し前に進めたいと思った。
「キスしてもいいか?」
「いつも突然してるだろうが……」
 つまりはいいと言う事だ。和史はそっとアンリに顔を近づけ、その唇を塞いだ。
「ふっ……んっ」
 チュッチュッと軽いキスを何度かする。その度に漏れる甘い声に次の一手が出そうになるが堪えた。
 一方のアンリも、軽いキスを何度も繰り返す和史に焦れていた。いつもなら唇を割って中に入り込み、舌を吸っては絡めてと好き放題するのに、今日はその気配がない。
「どうした?」
 様子のおかしいアンリに和史が訪ねてみたが、アンリは「別に……」と何か含んだような答えを返した。
「なんだか不満そうだな。何か物足りないのか?」
「お前!わかっていて……」
「さぁな。ちゃんと言ってくれなきゃわからないな」
 ニヤリと悪い笑みを浮かべる和史にアンリはキーッとなる。わかっていてアンリに言わせたいのだ。こうなったら絶対に言わない。そう思って頑として口を開こうとはしなかった。
「言わないならいいか。でもアンリとはキスしたいからな」
 そういうと和史はキスを再開した。だが今度はそのキスが唇から頬、目蓋の上や額にと、唇以外の場所へと落とされた。
「お、おい!オレの口はそこじゃない」
「何だ?口にして欲しいのか?」
「キスは普通唇だろ……」
 こんなかわいい事を言うアンリに教えてあげたかった。むしろアンリは外国人だ。頬へのキスは親しい者との信頼で、唇は恋人同士だとわかっているはずだ。なのにその部分が抜けているから面白い。
「なぁ、アンリ。自分の気持ちに素直になった方が楽だぞ」
「な、何言ってる……」
「お前自身気がついてないだけで、お前は俺が好きだろ?」
「じ、自意識過剰な奴だな。別にオレはお前の事なんて好きでもなんでもない……」
「そっか……じゃあアンリは嫌いな奴とキス出来るんだな」
「キスはお前が勝手に……それに嫌いとは言ってない……」
 心と体の矛盾が面白いところだが、いい加減自分の気持ちを認めて欲しいところだ。
(少々強引に押してみるか?)
 次なる一手を和史は考えた。
「なら、俺とどこまで出来るか試してみようぜ」
「はぁ?何を言って……」
「俺の事、本当に嫌なら嫌と言え。そこから先に進まないから」
「は、はぁ?よくわからない」
 グイッと横抱きにアンリを持ち上げると、和史はアンリをベッドに横たわらせた。
「俺とのセックスが出来るかどうか試そう。出来たら俺の事を好きだと認めろ」
「ご、強引……」
「そうしないとお前はいつまでも認めないだろ?」
「認めるも何も……」
「いいから。嫌なら本気で抵抗しろよ」
 頭の中が追いつかない。アンリはグルグル回る頭の中で、必死に和史を引き離す方法を考えた。
 だが考えるより先に、和史のキスが降って来た。
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