暴君王子は恋を知る

まぁ

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「オレはマンションの方に戻る。何かあれば連絡しろ」
「畏まりました。お疲れ様です。アンリ様」
 兄アレンが買ったマンションの前に止まった一台の国産高級車。そこから降りて来たのはアンリ一人だ。アレンと陽菜は例のスキャンダル影響でしばらくホテルに巣ごもり状態だ。何もないアンリも兄がいないならばホテルで寝起きすればいいのだが、どうしても和史のいる所というのに引っかかるのだ。
 幸いここはSPが終始周囲を警戒しているのもあり、アンリ自体がスキャンダルに巻き込まれる事はないだろう。とは言ってもアンリの場合ゲイである事が表に出る事がなければスキャンダルにはならない。外での行動には気を配っている。
「疲れた……」
 部屋に戻り、電気を着けた。間取りは1LDKだが兄とは違い極端に荷物は少ない。衣類とベッドがあれば申し分ない。故に本当に人が住んでいるのかと疑ってしまう程だ。
「さてと……シャワーを浴びたら寝るか」
 そう思いバスルームに向かおうとした時だった。部屋の扉の鍵がガチャリと鳴ったのだ。
「な、なんだ?」
 ここの合鍵を現在持つとしたらオーナーになったアレンくらいだが、アレンはここには来れない。そうなるとSPが来たのかもしれないが、彼らには昼間の掃除くらいしか頼んでいない。こんな時間に来るとは考えられず、一体誰なのかと警戒した。
 アンリが身構えると、扉が勝手に開く。そして入り込んだ相手を見て疲れを通り越して怒りが沸く。
「な、何でお前がここに!それにどうして鍵を持ってるんだ!」
「相変わらず元気だな。お前の兄貴に頼まれたんだよ。アンリの面倒を見てくれってな」
 コンビニ袋を下げてやって来たのは和史だ。今日はこういう突然の訪問が多い気もした。
 どうやら兄アレンが一人になるアンリを心配して和史にアンリを託したそうだ。
「だからって勝手に鍵を使って入って来るなよ」
「どうせお前の事だから俺の顔見た瞬間に門前払いするだろ?」
「当たり前だろ!お前のような危険人物……」
「そう思って勝手ながら鍵を使わせてもらった」
 ずかずかと部屋に入り込む和史。それを止めるも聞く耳持たず。リビングに入った和史は目を丸くした。
「何もないな。ここに住んでるのか?」
「ここは寝るだけだ。それならベッドだけあればいいだろ?」
「だからって……そういやホテルにも部屋があったな。飯はどうしてるんだ?」
「その辺で食べてる」
「なんだ。本当に生活感ないな。それよりもプリン買って来たぞ。いるか?」
「甘いもの好きじゃない……けど、もらってやらなくもない」
 素直でないところは相変わらずだが、和史は怒ったりせずに「はいはい」と言ってキッチンカウンターにプリンを置いた。すると何かを思い出した和史が「そうだ」と言う。
「忘れてた」
「な、なんだよ……ん!」
 腕を掴まれたと思ったら突然キスをされた。
「俺の事、名前で呼ばなかった罰な」
「な、な、あんなのもう時効だろ!」
「まさか。半永久的だ。ほら、後二回だ」
 人の悪い顔を浮かべる和史のペースにまたしても飲まれるアンリは、恥ずかしがりながらもそのキスを何故だか受け入れている。
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