29 / 30
とんとん拍子に
しおりを挟む
一泊を加納家で過ごした後、加納と二人で都内へと帰ってきた。
「なんだか加納家の力に疲れた……」
「お疲れ様です。佐和子さんこの後どうするんですか?」
「とりあえず家に帰って一休み。そしてビールかな?」
「安定ですね」
ぐったりな佐和子のよく聞くフレーズに加納はくすくすと笑う。
「疲れてる所悪いんですが、もう少しだけ僕にお付き合いしてくれますか?」
「えっ?何?」
「着いてきてくれたらわかります」
そう言って加納は佐和子をとある場所へと連れて行く。
電車を乗り継ぎタクシーで向かった先は結婚式場だった。いきなりな展開に佐和子は目を丸くした。
「えっ?えっ?俊也君ここって結婚式場じゃない」
「そうですよ。こっちです」
この先の展開は読めるのは読めるが、まさかの事で佐和子は頭が働かない。
スタッフに話をし、一般に無料開放されているチャペルで加納は佐和子の前に小さな箱を取り出す。
「まだまだ未熟な僕ですが、佐和子さんを大切にします。僕と結婚してくれますか?」
「えっと……はい」
やったーと喜ぶ加納は箱の中に入ったエンゲージリングを佐和子の指にはめた。勢いというか雰囲気というのはとても凄い豪華だと思った。
佐和子はボケる事も忘れイエス以外の言葉を出せなかった。
なんだか実感が湧かないが、間違いなく加納にプロポーズされたのだと指輪が証明している。
「佐和子さんの事、本当に好きです」
「わ、私もだよ。けど本当にいいの?」
「ここまで来てそれはないですよ。僕は佐和子さんを一生大切にします!」
どんな女の子でもこの瞬間に一生分の輝きを放つのだろう。佐和子もまたはしゃぐような表現はしないものの、なんだか満たされた気分になった。
もう恋愛する事なく、余生を過ごすのだと思った人生がまさかこんなにも変わるとは。人生何が起こるかわからないはまさにこの事だ。
とはいえまだまだ先は長く、佐和子には花嫁修行やらなんやらが待ち構えている。それを考える時だけはなんとも複雑な気持ちにはなったが……
それから二年。
「出産って……こわなにも地獄なのね」
「あんた子供前にしてそれはないでしょ」
佐和子の腕に抱かれた小さな命。その祝福に駆けつけた(家族旅行名目)千枝は、呆れながらも佐和子らしい言葉にやれやれと言った。
「いや産んでる時よりその後!腰はおかしいわ痛いやらで……」
「世のお母さんはそうやって子供産んでるんだよ。まぁその後に待つのは乳腺の引き剥がしだけど、かなり痛いわよ~」
「えっ、マジ止めて!」
怯える佐和子を見て笑う千枝。
この二年は本当に怒涛の毎日だった。古式加納家なので、工藤家と加納家で結納を交わしたり、式をどうするかなどの話し合いから仕事の事、住まいの事など、慌ただしかった。
ちなみに両家顔合わせでは都内まで来る事がない佐和子両親はまるで外国にでも来たかの様な反応だった。
会社はちゃんと制度を利用し、育児休業の後に復帰する予定だ。
「なんだか加納家の力に疲れた……」
「お疲れ様です。佐和子さんこの後どうするんですか?」
「とりあえず家に帰って一休み。そしてビールかな?」
「安定ですね」
ぐったりな佐和子のよく聞くフレーズに加納はくすくすと笑う。
「疲れてる所悪いんですが、もう少しだけ僕にお付き合いしてくれますか?」
「えっ?何?」
「着いてきてくれたらわかります」
そう言って加納は佐和子をとある場所へと連れて行く。
電車を乗り継ぎタクシーで向かった先は結婚式場だった。いきなりな展開に佐和子は目を丸くした。
「えっ?えっ?俊也君ここって結婚式場じゃない」
「そうですよ。こっちです」
この先の展開は読めるのは読めるが、まさかの事で佐和子は頭が働かない。
スタッフに話をし、一般に無料開放されているチャペルで加納は佐和子の前に小さな箱を取り出す。
「まだまだ未熟な僕ですが、佐和子さんを大切にします。僕と結婚してくれますか?」
「えっと……はい」
やったーと喜ぶ加納は箱の中に入ったエンゲージリングを佐和子の指にはめた。勢いというか雰囲気というのはとても凄い豪華だと思った。
佐和子はボケる事も忘れイエス以外の言葉を出せなかった。
なんだか実感が湧かないが、間違いなく加納にプロポーズされたのだと指輪が証明している。
「佐和子さんの事、本当に好きです」
「わ、私もだよ。けど本当にいいの?」
「ここまで来てそれはないですよ。僕は佐和子さんを一生大切にします!」
どんな女の子でもこの瞬間に一生分の輝きを放つのだろう。佐和子もまたはしゃぐような表現はしないものの、なんだか満たされた気分になった。
もう恋愛する事なく、余生を過ごすのだと思った人生がまさかこんなにも変わるとは。人生何が起こるかわからないはまさにこの事だ。
とはいえまだまだ先は長く、佐和子には花嫁修行やらなんやらが待ち構えている。それを考える時だけはなんとも複雑な気持ちにはなったが……
それから二年。
「出産って……こわなにも地獄なのね」
「あんた子供前にしてそれはないでしょ」
佐和子の腕に抱かれた小さな命。その祝福に駆けつけた(家族旅行名目)千枝は、呆れながらも佐和子らしい言葉にやれやれと言った。
「いや産んでる時よりその後!腰はおかしいわ痛いやらで……」
「世のお母さんはそうやって子供産んでるんだよ。まぁその後に待つのは乳腺の引き剥がしだけど、かなり痛いわよ~」
「えっ、マジ止めて!」
怯える佐和子を見て笑う千枝。
この二年は本当に怒涛の毎日だった。古式加納家なので、工藤家と加納家で結納を交わしたり、式をどうするかなどの話し合いから仕事の事、住まいの事など、慌ただしかった。
ちなみに両家顔合わせでは都内まで来る事がない佐和子両親はまるで外国にでも来たかの様な反応だった。
会社はちゃんと制度を利用し、育児休業の後に復帰する予定だ。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
転生JKの推しはワンコ系王子様!推しの恋愛後押ししてたはずが何故か私が溺愛されていました
蓮恭
恋愛
高校生の美香は病気で入院していたが回復せずに亡くなってしまう。
死後の世界で出会ったのはいかにも神様っぽいおじいさん。
「楽しいが退屈な天国へ行って次の転生を待つか、そなたと姉の望んでいた世界へ行って次の転生を待つか……。どうする?」
へぇ……退屈なんだ、天国って。
なんかゲームの選択肢みたいに選ばされるんだね。
「まあ儂からしたらどっちでそなたが待ってようが一緒じゃからな。そなたの姉は信心深いのう。毎日神に祈っておったわ。『病気の妹が死後にあちらの世界で楽しく暮らせますように』とな」
結局私は異世界ファンタジー小説家の姉の書いた、お気に入りの小説の世界に転生することになる。
そこで推しのワンコ系王子様が、とある令嬢に失恋して闇堕ちするのを防ぐため、王子様と令嬢の恋愛を後押しするんだけど……
いつの間にか私が溺愛されてるんですけど、これってイイんですか⁉︎
『テンプレ上等!』の、姉が書いたテンプレ満載の異世界ファンタジー(恋愛)小説に転生することになった女子高生(JK)の話。
拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着が重すぎます!
枢 呂紅
恋愛
「わたしにだって、限界があるんですよ……」
そんな風に泣きながら、べろべろに酔いつぶれて行き倒れていたイケメンを拾ってしまったフィアナ。そのまま道端に放っておくのも忍びなくて、仏心をみせて拾ってやったのがすべての間違いの始まりだった――。
「天使で、女神で、マイスウィートハニーなフィアナさん。どうか私の愛を受け入れてください!」
「気持ち悪いし重いんで絶対嫌です」
外見だけは最強だが中身は残念なイケメン宰相と、そんな宰相に好かれてしまった庶民ムスメの、温度差しかない身分差×年の差溺愛ストーリー、ここに開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
雨宮課長に甘えたい
コハラ
恋愛
仕事大好きアラサーOLの中島奈々子(30)は映画会社の宣伝部エースだった。しかし、ある日突然、上司から花形部署の宣伝部からの異動を言い渡され、ショックのあまり映画館で一人泣いていた。偶然居合わせた同じ会社の総務部の雨宮課長(37)が奈々子にハンカチを貸してくれて、その日から雨宮課長は奈々子にとって特別な存在になっていき……。
簡単には行かない奈々子と雨宮課長の恋の行方は――?
そして奈々子は再び宣伝部に戻れるのか?
※表紙イラストはミカスケ様のフリーイラストをお借りしました。
http://misoko.net/
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる