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勝負の時?

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 そこはお互いの顔が見れる程度には薄暗く、店内にはいかにもなムーディな音楽が流れるバーだった。
 ここも噂の?先輩とやらに教えてもらった場所らしい。むしろその先輩はやたらとハイクラスな場所ばかり教えているっぽい。
「佐和子さんって普段はビールですか?」
「そうだね。ビール飲んで、気分良くなったら焼酎とか日本酒かな?」
「渋いですね。日本酒飲めるとか本当にすごいです」
「いやいや歳とれば飲めるようになるよ。私も若い頃はカクテルとかチューハイばっかで、ふとした瞬間日本酒とかの旨味がわかるようになったんだから」
 そんなうんちくを語りながらもおしゃべりは良好だ。この後のアクションはどう出るのか。とりあえず相手の出方次第。


 小一時間ほどバーで飲み、お開きにしようという事になり、駅まで送ってもらう事になった。
 まさかここまで来て何もなしなのか?そう思いながら駅に向かっていると。
「あ、あの。佐和子さん」
「な、何?」
 キタ!
 そう思った時、唇にチュッと音を立てて触れられた。
 たかがキス。されどキスだが、その破壊力は佐和子には十分で、唖然として加納を見た。加納自身は顔を真っ赤にしていた。
「そ、それじゃおやすみなさい!」
 足早にその場を去って行く加納の背中を見ながら、フリーズ状態の佐和子は時間の経過と共に徐々に頭が回り始めた。
「えっ?えっ?キスだけ?てかキスした?」
 プチパニックを起こしつつ、これで終わり?感が否めなかったが、キス一つでこの状態だ。むしろこの先があれば息が止まっていたかもしれない。


「はっ?キス一つで何言ってるの?てか今時の小学生でももう少しマシな思考回路持ってるわ」
 帰宅後にLINEで千枝に報告すると、秒で電話がかかってきた。
「てかその年下君も年下君ね。もっと押せ押せかと思ったら、そっちもそっちでウブなの?」
「それはわからないけど……」
「単に年上だから緊張してるのか……それよりもあんたの方よ。長らく恋愛サボると恋愛事が退化するのだとよーくわかったわ」
 やれやれと言いながらも、昔を知っているだけに千枝はズバズバ切り込んでいく。
「あんたそんなんじゃこの先の展開どうするのよ。心臓止まるんじゃない?」
「それはないと思うけど……なんだろ。想像すると恥ずかしくはなるね」
「はぁ……私もそんなウブな感じに戻りたい。というより処女じゃないんだし、相手が奥手ならあんたから攻めなきゃ!」
 そんなハードルの高い事が佐和子に出来るのかと思ったが、千枝曰くやれ!との事だ。
 だが問題は恋愛退化した佐和子がどこまで押せるかだ。次のデートでは必ずエッチしてこいと画面越しで千枝は言っていた。
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