捧げられし贄と二人の皇子

まぁ

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Prologue

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「そなたがアストリアだな」
 開口一番そう聞かれたが、アストリアは無視を決め込んだ。

 ここは町はずれにある神殿。神殿というだけあって、神を祀っているのだろう。巨大な女神像がアストリアを出迎えた。天井は見た事がない程高く、白を基調した壁や柱、天井にはカラフルなステンドグラスがあり、そこから太陽の光が入り込んでいた。
 神殿に入ってすぐある大きな扉。その扉を開くと玉座のような大広間があり、白く足より長い裾を引きずるようなドレスを着た金髪の女性がいた。その女性はアストリアを見るなり名を問うた。
「どうしてそなたがここに連れて来られたのか、不服そうだな」
「当たり前です!何ですか一体!」
「そなたは知らぬだろうが、そなたがここへ来る事も、とある方の元へ嫁ぐ事も決められていた事だ」
「勝手に決めないで下さい」
 抗議するアストリアの言葉など無視をし、女は言葉を紡いだ。
「古より……黄金の瞳を持つ者、彼の地に嫁がん。その身は捧げられ、永遠を約束されよう……古くからこの世界にある言葉だ」
「何?その言葉通りでいけば、私は生贄にされるって事?冗談じゃないわ!それに私の瞳は純粋な黒よ!」
 前世も、そしてこの世でも、アストリアの目や髪の色は黒だ。両親が茶色の髪や目だったが為に、初めは疑われはしたが、ちゃんと今の両親の元から生まれた。それなのに黄金の瞳を持つ者。そんな事があるわけない。アストリアは徹底的に抗議したが、女はアストリアの顎をグイっと持ち上げた。
「そなたにはわからぬだろうが、この世界で黒の髪に瞳を持つ者自体希少だ。それにそなたは前世の記憶もあるという」
「だ、だから何だって言うの?放して!」
「希少故に起こる奇跡というものもある。よく見ているがいい」
 すると女は何か呪文のようなものを詠唱し始める。一体何をしているのかわからないが、詠唱を終えると女はアストリアを解放した。そして巫女に鏡を持ってくるように言う。
「自分の姿を見るがいい」
 そう言われ、アストリアは巫女がかざす鏡に映った自分を見た。そこには両目を黄金色に輝かせる自分の姿があった。
「な、何……これ……」
「これで理解出来たか?そなたは黄金の瞳を持つ者。本来ならば自在にその瞳の色を変えられるが、そなたは生まれてこのかた魔力のコントロールをしてこなかっただろう。今は我の力を持って引き出したが、本来は自身の魔力のコントロールによってその色へ変化する事が出来る」
 黄金の瞳を持つ者……それは希少な血と魔力を持つが故、彼の地に嫁ぎ繁栄を願うのだそうだ。
 まさかそんな神様のような状況に自分がなるとも思わなかったアストリア。自由や個人の尊厳などが乏しいこの世界において、その決められたルールに逆らう事は出来ない。ましてやアストリアは希少な存在だ。より一層縛られ、自由などないのだ。
(私は何の為に転生したのよ……)
 見も知らぬ男の元へと嫁がされる。その事にていくら抵抗しても無駄なのだと瞬時に悟った。
「さて、ここからが本題だ。そなたの嫁ぎ先について。そしてそなたが成すべき事を……」
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