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「ちょっと美奈穂!あんた…大丈夫なの?」
家の中でうずくまるようにして顔を膝に埋める美奈穂の側には、前の日のスポーツ新聞が乱雑に置かれていた。
―華道界のプリンス、財閥令嬢と婚約!
一面にでかでかと書かれたその題目。そして慶と婚約者のご令嬢の写真が写っている。もちろんそのニュースはテレビなどでも大々的に取り上げられていた。
「美奈穂!ちょっとしっかりしなさいよ!」
「由美…」
目の下にクマを作った美奈穂は、覇気のない表情を由美に見せた。
「これホントなの?てか西園寺慶から連絡あったの?」
首を横に振る美奈穂。何故後二週間というタイミングでこのスキャンダルが取り上げられたのかはさて置き、美奈穂にとっては慶に騙されたのかもしれないという不安と不信感が心を支配していた。しかもそのご令嬢のを美奈穂は見た事があった。
「見た事あるって…いつ見たの?」
「六月に東京行ったとき…慶さんの作品を見ていた女の子がいたの…」
「そのお嬢がこの写真の人物って事…?」
「うん…」
今ならわかる。あの時真剣な眼差しで慶の作品を見ていたのは、惚れた相手の作品だからだろう…
この件で慶もいろいろと忙しいのか、連絡一つなく、様子を見に来ていた由美もやきもきしていた。そんな時、玄関の呼び出しが鳴ったので、「私行くよ」と言って由美が対応してくれた。
しばらく待っていると、由美が美奈穂の元に戻って来たが、由美一人ではなく隣にマネージャーの洋二も一緒にいた。洋二は部屋に入るなりいきなり美奈穂に土下座をした。
「美奈穂さん!ホントすみません!」
「ちょっと…泉川さん…」
「俺がしっかりしてたらこんな事にはならなかったんです!」
聞けば前々からこの記事に対する話が持ち上がっていたらしいが、事実無根とのことで洋二の所属する事務所が抑え込んでいたらしい。だが、個展開催の忙しさなどでバタバタしていたが為に、情報が表に出たとの事だ。
「何それ?じゃあこれはデタラメの記事って事でいいのよね?」
言葉が発せない美奈穂の変わりに由美が洋二を問い詰めた。ここで洋二が首を縦に振ってくれたのなら美奈穂自身も安心出来ただろう。しかし由美の問いに対し「実は…」と話を続けた。
「その記事に書かれてる高城麗子さんが慶の婚約者という事は嘘じゃないんですよ…」
「はぁ?何?あんたも知ってて、二人してこの子を騙してたって言うの?」
「そうじゃないんですよ!婚約者ってのは西園寺家の親戚が決めた事で、慶自身はその気もないんです!」
「あんたねぇ…それでもこの子を騙してた事には違いないでしょうが!てか当の本人はどうしたのよ?」
「慶はいろいろと手が放せない状況で、代わりに俺が行って説明してくれって言われて…正直俺もこの件に関して今忙しい身分であって…」
「あんたの事はいいのよ!」
ぴしゃりと言い放った由美に洋二はもうこれ以上何も言えなかった。黙って聞いていた美奈穂はついつい笑いが出てしまった。
「美奈穂!」
「由美…もういいよ。それに泉川さんもわざわざありがとうございます…私は大丈夫ですって慶さんに伝えてくれますか?」
「…わかり…ました…」
そう伝えた直後に洋二のケータイが鳴り電話に出た。電話を切ると「すぐ東京に戻らなくちゃいけないので」と言って家を後にした。しんと静まり返った家で、由美が大きなため息を漏らして座った。
家の中でうずくまるようにして顔を膝に埋める美奈穂の側には、前の日のスポーツ新聞が乱雑に置かれていた。
―華道界のプリンス、財閥令嬢と婚約!
一面にでかでかと書かれたその題目。そして慶と婚約者のご令嬢の写真が写っている。もちろんそのニュースはテレビなどでも大々的に取り上げられていた。
「美奈穂!ちょっとしっかりしなさいよ!」
「由美…」
目の下にクマを作った美奈穂は、覇気のない表情を由美に見せた。
「これホントなの?てか西園寺慶から連絡あったの?」
首を横に振る美奈穂。何故後二週間というタイミングでこのスキャンダルが取り上げられたのかはさて置き、美奈穂にとっては慶に騙されたのかもしれないという不安と不信感が心を支配していた。しかもそのご令嬢のを美奈穂は見た事があった。
「見た事あるって…いつ見たの?」
「六月に東京行ったとき…慶さんの作品を見ていた女の子がいたの…」
「そのお嬢がこの写真の人物って事…?」
「うん…」
今ならわかる。あの時真剣な眼差しで慶の作品を見ていたのは、惚れた相手の作品だからだろう…
この件で慶もいろいろと忙しいのか、連絡一つなく、様子を見に来ていた由美もやきもきしていた。そんな時、玄関の呼び出しが鳴ったので、「私行くよ」と言って由美が対応してくれた。
しばらく待っていると、由美が美奈穂の元に戻って来たが、由美一人ではなく隣にマネージャーの洋二も一緒にいた。洋二は部屋に入るなりいきなり美奈穂に土下座をした。
「美奈穂さん!ホントすみません!」
「ちょっと…泉川さん…」
「俺がしっかりしてたらこんな事にはならなかったんです!」
聞けば前々からこの記事に対する話が持ち上がっていたらしいが、事実無根とのことで洋二の所属する事務所が抑え込んでいたらしい。だが、個展開催の忙しさなどでバタバタしていたが為に、情報が表に出たとの事だ。
「何それ?じゃあこれはデタラメの記事って事でいいのよね?」
言葉が発せない美奈穂の変わりに由美が洋二を問い詰めた。ここで洋二が首を縦に振ってくれたのなら美奈穂自身も安心出来ただろう。しかし由美の問いに対し「実は…」と話を続けた。
「その記事に書かれてる高城麗子さんが慶の婚約者という事は嘘じゃないんですよ…」
「はぁ?何?あんたも知ってて、二人してこの子を騙してたって言うの?」
「そうじゃないんですよ!婚約者ってのは西園寺家の親戚が決めた事で、慶自身はその気もないんです!」
「あんたねぇ…それでもこの子を騙してた事には違いないでしょうが!てか当の本人はどうしたのよ?」
「慶はいろいろと手が放せない状況で、代わりに俺が行って説明してくれって言われて…正直俺もこの件に関して今忙しい身分であって…」
「あんたの事はいいのよ!」
ぴしゃりと言い放った由美に洋二はもうこれ以上何も言えなかった。黙って聞いていた美奈穂はついつい笑いが出てしまった。
「美奈穂!」
「由美…もういいよ。それに泉川さんもわざわざありがとうございます…私は大丈夫ですって慶さんに伝えてくれますか?」
「…わかり…ました…」
そう伝えた直後に洋二のケータイが鳴り電話に出た。電話を切ると「すぐ東京に戻らなくちゃいけないので」と言って家を後にした。しんと静まり返った家で、由美が大きなため息を漏らして座った。
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