花が招く良縁

まぁ

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「ダメです!絶対に言えません!」
「そう言われると普通知りたくなるでしょう?」
「えっ…ちょっと!」
 グイッと美奈穂の腕を引っ張った慶は、胸に埋もれる美奈穂を見た。美奈穂は顔を上げ、案の定真っ赤になって抗議している。
「あの…」
「教えてくれなきゃこのままですよ…」
(何でだぁぁ!)
 美奈穂の心の声が表に出そうになった。美奈穂の心臓はドクドクと早い脈を打っている。西園寺慶という男はこんな強引でいじわるだったか?ふと頭の中で回想してみるが、今までそんなそぶりは一度もなかった。
「んっ…」
 ちゅっと音をたて、美奈穂の額に慶のキスが降って来た。
「教えてくれなきゃいっぱいキスしますよ…」
「なんか…今日の慶さん意地悪くないです…?」
「そりゃたまには意地悪になりますよ。美奈穂さんを待つとは言ってもこっちは男ですしね」
 ニコッと微笑む笑顔はいつも見る爽やかな笑顔ではなく、意地悪めいた笑みだ。宣言通り慶は美奈穂にキスをしていく。額に始まり頬、唇、耳朶に首筋…本格的にヤバいと思いだした美奈穂は観念した。
「わわ…わかりましたから!」
「俺としては別に教えてくれなくてもいいんですけどね」
「うぅ…絶対に引かれるから言いたくないんです…」
 もういろいろとめちゃくちゃだと心が叫びを上げている。だが言うと言った手前引き下がる事も出来ない。
「私の趣味…コスプレなんですよ…」
 正面から顔が見れない。美奈穂は顔を背けたままでいた。しばらく沈黙が続いた。慶がどんな表情をしているのか…やはり引いただろうか?怖いが見なくては…そう思い慶をチラッと見ると、慶は目を丸くして口を開けたままでいた。
(ほらやっぱり引いてる!)
 もうダメだと思った美奈穂は立ち上がり「片づけて寝ます」と言って台所に向かう。何もかも終わったなぁ…と心で呟きながら食器を洗い終えた時、ガバッと慶が抱きしめてきた。
「慶さん?」
「ちょっと意外だったけど…いいじゃないですか?そういう美奈穂さん見てみたいです」
「えっ?ドン引きしたんじゃないですか?」
「まさか!逆に興奮しましたけど?」
 思わぬ言葉に美奈穂は全身の熱が上昇する。だが同時に「ん?」と首を傾げる事態が起こってしまった。
(これは…まさか…)
 先ほどから腰とお尻の中心に何か硬い物が当たっているのだ。
(うそ…!勃ってる?)
 未経験でないのでそれくらいはわかる。これはもうフラグなのだろう。これで由美へのいい話題が出来てしまった。
「美奈穂さん…」
 耳もとで聞こえる低く擦れた声に美奈穂はビクッと身体を震わせた。音をたて慶は美奈穂の頬や耳朶、首筋にとキスの雨を降らせていく。
「慶さん…私の事待つって…」
「そう思ったけど…無理みたいです…」
 指が美奈穂の顎に触れ、そのまま慶の方に向けられ唇を塞がれた。軽く触れるだけのキスは一度ではなく二度、三度と回数を重ねる。
「ま…待って…」
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