花が招く良縁

まぁ

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「ほぉ…あれからそんな事が…」
 美奈穂不在の西園寺家では、仕事にやって来た洋二がいろいろと聞いてきた。
「お前がちゃんと責任取れっていっただろ?だから俺は責任を持つ事にした」
「きゃーかっこうぃうぃ!って事はちゃんと好きなんだな?」
 洋二の問いに応えなかった慶に、洋二は「お前なぁ…」と呆れた風でため息を盛大に漏らした。
「同居したりキスしたり付き合ったり好きかわかんなかったり…なんか順番めちゃくちゃだな…」
「うるさいな…結果的にお付き合いしてるんだからいいだろ?」
「まっ、本人がいいって言うならいいけどよ…でも本格的に麗子さんに断る大義名分は出来たわけだな」
 今洋二が言うまで、麗子の事など頭になかった慶は、手にしていた花の茎を思いっきり剪定ばさみで切ってしまった。
「あー!」
「アホだ…」
 思ったよりも短くなってしまった花。もうこれは使えない。どこかに飾ってしまうしかないと思った。だが麗子の事は本当にどうにかしなくてはいけない。
「それで?美奈穂さんは今日どうしたんだよ?」
「今日は友人の由美さんと一緒に東京のイベントだって」
「えっ?何のイベント?」
「さぁ…」
 よくよく考えたら、付き合う事になったものの自分は美奈穂の趣味などまったく知らないと気が付いた。出張から帰ると目の下がクマで疲れ切ってるのは相変わらずなので、趣味に打ち込んでいるのだろうとわかるが、それが何か…今だわからなかった。
「まぁ…美奈穂さんの趣味はいいや。それより大事なのは身体の相性チェックだろうからな!」
 陽気に言う洋二に対し「まだ何もしてない」と言った慶に、洋二は持っていたガラスの湯呑を落としそうになった。
「まだって…えっ?付き合って…というより、一つ屋根の下で暮らしてるのに?」
「悪かったな。美奈穂さんに無理強いしてもいけないと思って、美奈穂さんのペースに合わせる事にしたんだよ」
「はぁ…お前って結構淡泊なんだな…てかよく我慢出来るな。俺だったら即日ぺろっと頂ますが?」
「お前みたいにだらしない奴と一緒にするな!」
 一喝すると「ひでぇ…」と洋二は漏らす。正直洋二の言った淡泊が当てはまるかどうかはわからないが、気長に待とうとは思っていた。だが洋二はそんな慶を見てニヤニヤしている。
「美奈穂さん…本当の慶を知ったらどんな顔するかな?大学在学中俺と一緒に散々夜の街に繰り出してはお持ち帰っていた歴史を知ったら…」
「お前…それ絶対に美奈穂さんに言うなよ!」
「わかってますよ!あの時は麗子さんを遠ざける為にやってた事だもんなぁ」
 まるでストーカーではないかと思うくらい、麗子は大学の門の前で慶を待っていた。どうせ親戚連中が教えたのだろう。慶の番号やアドレスを入手してからは毎日のように連絡をしてきた。警察に届けようとも思ったが、相手は財閥のご令嬢で警察も綺麗に丸め込まれるだろう。事情を知る洋二が「遊び人だと思わせればいい」なんて言うものだから、それに乗って遊び人のふりをしてみたが、まったく効果を成さなかった。
「とりあえず…美奈穂さんとの清い交際の為にも、麗子さんの事はどうにかしないとな」
「わかってる…けどさ、どうやったら諦めてくれるんだろうな?」
「そんなの知らないよ。俺は手の打てる事は提案してやったんだ。後は自分で考えな…」
 あっさりと手を引いた洋二に慶はため息しか漏れなかった。麗子の事もそうだが、美奈穂と付き合うと決めたのだから美奈穂の事をちゃんと見てあげたい。ちゃんと好きになりたいと思った。
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