花が招く良縁

まぁ

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 真剣な表情で慶は美奈穂を見つめている。その視線から放せない。これは何のフラグなのかと思ったが、恋愛スキルに乏しい美奈穂に出せる答えは一択だった。慶は自分を好きなのか…
(いやいや…!ないない!)
 頭の中で否定するものの、妄想の方が勝ってそうなのでは?と思ってしまう。
 何が起こったのだろうか?慶の顔が徐々に近づく。キスをされるとわかった美奈穂は反射的に目を瞑った。予測は見事的中で、慶の唇が美奈穂の唇と重なった。
「あの…慶さん…」
「美奈穂さん。俺と付き合いませんか?」
 この状況で「実は遊びですよ!」なんて事はないのはわかってはいたが、面と向かって言われたらさすがに恥ずかしくて仕方なかった。
「あの…私かなり恋愛に奥手ですけど…」
「知ってます。別にそれは気にしてませんから…美奈穂さんの答えが知りたいんですけど…」
「わ…私なんかでよければ…っ!」
 言った直後にガバッと慶の腕が美奈穂の背に回され、また唇が重なった。泣いて喚いて挙句果てには華道界のプリンスが彼氏になりました。物語の肩書には十分すぎるだろう自体に、美奈穂はすっかりとのぼせ上ってしまった。

「へぇ…綺麗にまとまった恋愛小説でよかったわねぇ…」
「いや…なんていうか…私自身衝撃の連続で…」
 今日は以前由美と約束していたコスプレイベントに参加する為、六月以来の東京に進出をしていた。その後の話を由美にすると、特段驚いた様子もない。むしろ美奈穂の方が驚きたかった。目の前にいる由美が着ている衣装は何かのアニメの悪役らしく、顔はマスクを被っていて表情がわからない。
「由美…暑くない…?」
「暑いわ…」
「何でその衣装にしたの…?」
「私の心を一目で鷲掴みにしたキャラだったから…絶対着ようって思ったの」
 真夏にその衣装は暑いだろう。やるなら冬だと思ったが、由美としては早くやりたくて仕方なかったようだ。反面美奈穂は着物を着崩したようなキャラの衣装で、頭には水色のウィッグをしている。
「それで…?西園寺慶とHしちゃった?」
「ななな…」
「その反応だとまだのようだね」
 ふんふんと納得する由美。たしかにあれから何もない。普段の生活にちょっとキスというオプションが付いただけだ。美奈穂の気持ちを考え、その先は美奈穂がいいと言うまで待つと慶が言ってくれたのだ。
「とりあえず目標はHになったわけだね…」
「そんな…」
「でもさっさとしなよ!相手は男!しかも華道界のプリンス様!男なんて隙あらば早く持ち込みたいもんよ!あんたみたいに悠長にしてると、すぐ次が入り込むわよ」
「こ…怖い事言わないでよ!」
「あら、世間一般論を述べたまでよ」
 ホホホと笑う由美。だが美奈穂自身それはわかっている。でも臆病風を吹かせせ続ける美奈穂にとってそこに行くにはハードルが高すぎた。
「なんかそういうのさ…自分から言うとがっついてるみたいじゃない?」
「そう?別に普通だと思うけどぉ…」
「そっかな?」
「そうなのよ!さっさと決めなさい!アラサ―女子はグイグイ行くもんよ!何うまい具合に年下に弄ばれてるのよ!」
「弄ばれてないってば!」
 ぎゃーぎゃーと騒ぐ二人の所に、「あの…」とカメラを持った女性が二人やって来た。振り返った美奈穂と由美は、写真とっていいですか?と聞く女性にニコッと笑みを浮かべた。とは言っても由美の場合は表情がわからない。
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