モブだった私、今日からヒロインです！

ｐ65

　ヒースルー家の現当主、つまりアレンの父親の名前はレニー。妻の名はガーネット。レニーは現在当主以外にもイギリスのグレードブリテンに属している。ヒースルー家の事業は一族で運営のものと、そうでないものがあるが、その全てを取り締まっているのはアレン。レニーの妻のガーネットは元王室関係者だ。今もまだ王室との繋がりも強い。
　そしてラスボスとも言われるアレンの大叔母の中イザベラ。王族の血筋を持つと言われている。ヒースルー家の前当主だ。
　さすがは世界的セレブなだけあって、ヒースルー家の歴史や家族写真などネットにいくらでもある。おそらくアレンが幼い頃であろう家族写真も出て来て、一人の女性を取り囲むようにして家族が写っている。おそらくその女性が大叔母のイザベラだろう。
　髪はひっつめられていて、目つきは鋭く、写真からも気品があるのがわかる。その隣に立つ幼いアレンがとても可愛く見える程だ。
「私この人と会うの？」
　この写真から数年は経っている現在だが、この高貴な感じは変わらないだろう。さて、イザベラに気に入られるにはどうしたものかと考えたが、本当のセレブ、いや王族級の人に庶民の自分が果たして気に入られるのだろうか。
「気が重い……」
　Xデーがいつになるかわからない今、陽菜の心臓はそれまでに持つのだろうかとも思ってしまった。
「とりあえずハリボテでも、今はマナーとかウォーキング、その他レッスンを頑張らないと！」


　イギリスへ行くまでの間に出来る事。という事で気合の入る陽菜の元にあすかから連絡が入ったので、久々にあすかと会う事になった。
「全然連絡取れないと思ったらアメリカに行っていたのね」
「はい。一週間ばかり出張で」
「それにしても立ち姿が綺麗になってるわ。何かあったの？」
「えっ？本当ですか？」
　そんなに見た目にわかるのだろうかと思ったが、つい嬉しくなって陽菜はアメリカであった事などをあすかに話した。
「まぁ！アシュリー・ロックから直々にレッスンを受けたの？」
「アシュリー先生の事、知ってるんですか？」
「知ってるも何も、業界では有名な人よ。レッスン予約なんて五年先なんて言われてるくらいなのに、陽菜さんはどうやって予約を取り付けたの？」
「知り合いの人の知り合いだったので……」
　アシュリーのウォーキングレッスンにそんな逸話があるとは知らなかった。あすかは目を丸くしている。どこまで話せばいいのかわからないが、このままでは何か誤解されそうだったので、陽菜はいろいろとあすかに話した。
「成程……お付き合いしている人がヒースルー家の人。それならいろいろと理解出来たわ」
「でも私自身はただの庶民なので、いろいろと戸惑う事も多いんです」
「何言ってるの？あのパーティもそうだし、陽菜さんの知り合い筋もだけど、陽菜さんも十分セレブの仲間入りしているとは思うわよ。だって芸能人の私が驚く事の方が多いんだから」
　傍から見ればそう見えるのか。実感がないのは陽菜だけで、周りはもう陽菜の事を普通の一般人とは見ていないのだ。それはそれでなんだか悲しいようにも思えた。自分の心と周りの見え方はこれほどにまで乖離している。