モブだった私、今日からヒロインです！

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　何と説明したらいいやらで、陽菜はしどろもどろになっていたが、アレンはそんな事はどこ吹く風だ。
「ヒナ、誰？知り合い？」
「ば、バカ！桐谷あすか！今一番日本で人気の女優さんだよ」
「そうなんだ」
　芸能関係には本当に疎いなと思いながらも、この場をどうしようかと考えていた陽菜。すると桐谷あすかの方から声をかけてきた。
「あなた方もこのパーティに参加しているって事は、あなた方も芸能関係者？それとも無理矢理入り込んだ週刊記者？」
「ち、違います！私はほぼ一般人ですけど、こちらはヒースルー財閥の御曹司、アレンです！」
　馬鹿正直に言う陽菜。するとアンリの名前を聞いて桐谷あすかは「あぁ！」と何かを思い出したようだ。
「前にアイドルとスキャンダルになった……」
「そう、それです！」
「酷いよヒナ。あれは勝手に向こうが誤解した事だよ。今の僕にはヒナだけだよ」
「誰もそんな話してないよ！てか余計ややこしくなるから黙ってて！」
　なんだか話が頓珍漢な方向へと向かいそうになったので、陽菜は必死に修正をかける。すると二人のやり取りを見ていた桐谷あすかはため息を漏らした。
「す、すみません！お見苦しい所を……」
「いいえ。なんだか羨ましいなと思ったの」
　羨ましい？となったが、陽菜からすれば足も長くスレンダーで、キリッとした目元はアジアンビューティという感じの桐谷あすかの方が見た目的には羨ましいと思ったが、それは彼女の見た目であって私生活は充実していないのかもしれない。
「えーっと……こんな事聞いたら失礼でしょうが、先程の方は大塚一誠さんでしたよね？一緒に来ていたという事はパートナーじゃないんですか？」
　踏み込んだ話をしてしまったかもしれないが、見てしまった以上聞いておいた方がいいと思った。すると桐谷あすかは首を横に振った。
「違います。彼には無理を言って今日のパーティに来てもらったの。元々友達から誘われて、パートナーが必要ってあったので……」
「成程……でも桐谷さんは大塚さんの事好きですよね？そんな雰囲気あったのて……」
　サラッと聞いてみたら、桐谷あすかが陽菜をじっと見つめたので「すみません！」と謝った。
「ううん。本当の事だから気にしないで。私は一誠の事が好きだけど、彼は仕事に集中したいからパートナーは必要ないと言って……」
　どちらも日本を代表する売れっ子だ。桐谷あすかは女優にモデルとこなし、大塚一誠も俳優。最近では歌手活動もしている。
「二人で紹介してくれた友達の所へ行ったら、彼氏と勘違いして、それが彼の癇に障ってしまったようなの」
　成程と納得した陽菜。要は勘違いとは言え、大塚一誠側ははめられたと思ったのだろう。なんだかこんな事は前にもあったなと思い出す。
「それで帰ろうとしたから、つい一誠に好きって言っちゃって……」
　それであの修羅場だったらしいが、またすごいタイミングで告白するなと、一般人との違いを見てしまった。
「すみませんこんな話をしちゃって……この事は週刊誌には黙っていて下さい」
「あ、その辺は大丈夫です。って言っても信用ないですよね。とりあえず何かあって苦情ある場合は、日本海運商事の特別秘書課山下陽菜までお願いします」
　こんな場所なので名刺は持ち合わせてない。自分の身分を細かく言うと桐谷あすかはクスクス笑った。
「わかったわ。それじゃあ」
　去っていく桐谷あすかを見ながら、芸能人も大変だなと思った。