モブだった私、今日からヒロインです！

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　自分の部屋に戻り荷物の整理をする陽菜。いろいろと情報が多すぎて未だ混乱中だ。
（あのアンリが東宮寺さんと……）
　偏見の目はないのだが、意外な組み合わせと言えば意外かもしれないし、似合っていると言えば似合っているのだろう。何せアンリはかなりのわがままだ。そんなアンリをなだめるのに年上の男性は丁度いいのかもしれない。
（でも東宮寺さん……ホテルとじゃあ随分と雰囲気違うんだなぁ……）
　髪を下ろしただけなのだが、ワイルドな危険な雰囲気をまとっている。アレンのようにふわふわした感じではない分、自分だと東宮寺のような男性は終始緊張しそうだと思った。
（そう考えるとアレンって扱いは楽なんだね）
　そんな事を考えながら、陽菜はいるものといらないのの選別をし終えた。家具家電のほとんどは廃棄で、衣類など一部を除き持ち出す事になった。
「服も化粧品も全て僕が買うよ」
「いや、これ以上の無駄な出費はいいです」
　前に澤永がアレンのお金だからと超一流ブランドの服や靴を買った事件もあり、あまりお金を使わせたくなかった。だがアレンからしたら減らないお金だから気にしなくていいとの事だ。
「セレブの感覚はわからない……」
「ヒナ？」
「なんでもないよ。この廃棄物はSPさん達に任せていいんだよね？」
「うん。手配は勝手にしてくれるから。それじゃ僕達の新居に行こう」
　なんだか名残惜しい感じもしつつ、陽菜はアレンと共に新居となる高級マンションへと向かう。


「最新鋭最高！」
　名残惜しいとは数時間前に言ったが、気の変わりようは素早かった。夕飯作りをしようとキッチンに立った瞬間、最新鋭の機器が素晴らしい事に気が付いた陽菜は、その機器の性能を楽しみながら料理をした。
「楽しそうに料理するね」
「だってこのオーブンすごい！これならターキーとか焼けちゃいそう！」
「それはクリスマスが楽しみだな」
　キッチンカウンター越しからニコニコするアレンを見て、なんだか本当に新婚さんのようだと思い、陽菜は顔をうつむき加減に赤くなっていた。
「ヒナ？」
「な、なんでもないよ。それよりアンリと東宮寺さんって本当にお付き合いしてるの？」
「ん～、本人達はまだって言ってるけど、それも時間の問題だろうね。特にカズは僕に確認しに来たくらいだし」
「確認？」
「そう。随分前だけど、弟さんに惚れてしまった。貰ってもいいかってね。別にアンリだって大人なんだし、本人がいいならって言っておいたんだ」
「な、成程……」
　弟の事は弟に任せると、達観しているなぁと思った。
　そんな話をしながら今日の晩御飯を作った。最新鋭機器の魅力に魅せられ、肉料理から煮込み系の料理まで、あれこれと作ってしまった。
「今日は随分と豪勢だね」
「つ、つい調子に乗ってしまった……残れば明日に回すから無理しなくていいからね」
「了解。でもこれから毎日ヒナと一緒にいられるなんて嬉しいな」
「う、うん……」
　そうだった。これからはアレンと同棲という事になるのだ。なんだか恥ずかしく、くすぐったいなと思いながら、二人は夕飯に用意した白ワインの入ったグラスを鳴らした。