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 超高級マンションには家具家電などの設備は問題なかった。ある一つの事を除いては……
「な、な……なんでこれだけ部屋数あってベッドが一つ?」
 部屋数は全部で四つ。内二つはアレンと陽菜の個人部屋。一つはアレンが仕事などにもつかえる様にと書斎。そして二人の寝室の構成になっている。しかもそこに置いてあるベッドの大きさが見た事もない。クイーンなのかキングなのか……
「個人部屋があるなら二人の寝室っていらなくない?」
「いや必要だよヒナ。僕達が愛を営む為には」
「そうじゃなくて!なら個人部屋の意味は?」
「それは山下さんにもアレン様にもプライベートな時間が必要でしょうと思い、私が勝手に配置させてもらいました」
 プライベートルームと寝室は普通にわけるものなのか?なんだかセレブ達の感覚がいまいちわからない陽菜は、これ以上の抵抗がバカバカしく感じられた。
「さて、今日中にする事はあります。アレン様も私がいるのですから、山下さんといちゃつかないで下さいよ」
 そう言って一旦このマンションから離れ、次に向かったのはこれまで住んでいたマンションの方だ。


「アレン様の荷物はこちらでどうにかしますが、山下さんの荷物はさすがに勝手な事は出来ませんですからね。いるものといらないのものの選別をお願いします」
「えっ?この勢いだと今日中にお引越しって事ですか?」
「そうですよ。あぁ、荷物の運び出しや処分などはこちらでやりますので、山下さんは選別だけして下さい」
 あれよあれよと物事が決まって行く中、陽菜は渋々と荷物整理をする事になった。
 急だったのもありまだ実感が沸かないのだが、伊澄曰く「ここはパパラッチに見つかってますからね」と言われ、要はこれ以上のスキャンダルを避ける為なのだ。
(何も悪い事してないのに……なんだか逃げるみたいな感じだなぁ……)
 少なくとも数年間ここで暮らしていたのだ。愛着があるのを急に捨てるとなると寂しい。そんな干渉に陽菜が浸っていると、外から騒がしく声が聞こえて来た。


「兄さんがいなくなるならオレも引っ越す!」
 チラッと外を覗くと、アンリがアレンにそう言って迫っている。だがそのアンリの隣にはアンリよりも背が高い男がいた。その男はどこかで見た事があるのだが、誰だろうと陽菜は首を傾げた。
「残念だがあのマンションには今、空き部屋はない。我慢しなさい。それにお前にはカズがいるんだからいいだろう?」
「なんでこいつがいる事と我慢する事が繋がるんだよ!」
「おいアンリ。どうせお前の事だ。広い部屋に行ってもどうせ部屋の無駄ならここにいろ」
「うるさいな!お前は口を出すな!」
 ぎゃーぎゃーと騒ぐ中で、陽菜はアンリと一緒にいる男が誰かわかった。いつもは髪をオールバックにしているのもあってわからなかったが、アレンがカズと呼んだその人物がある人物の面差しが一緒なのに気が付いた。
「東宮寺さん?」
「あぁ、秘書課の山下さんでしたね。どうもこんにちわ」
 にこりと微笑む東宮寺を見てアンリはつまらなさそうな顔を見せた。
「お前のその身の変わりよう……本当に不気味だな」
「失礼な事言うな。本当の俺を知っているのはアンリだけでいいんじゃないか?」
「はぁ?そんな事どうでもいいし!」
 何やら親しいを超えた雰囲気を二人から感じて陽菜は首をかしげるばかりだ。するとアレンが陽菜に耳打ちした。
「アンリとカズはラバーだよ」
「ラバ……えぇ!付き合ってるんですか?」
「つ、付き合ってなんかない!」
「残念ながらまだなんですよ。現在進行形でアンリを口説き中です」
「ふざけるな!絶対お前なんか好きにならないからな!てかどうして兄さんが……」
 二人の関係に驚きつつも、アンリも満更ではなさそうな雰囲気に陽菜は言葉が出てこなかった。すると買い出しに出ていた伊澄が戻って来た。
「山下さん。選別は終わりましたか?」
「ひぃ!すみません!まだです!」
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