30 / 85
p29
しおりを挟む
(アレンとの未来……)
それを仕事が終わり、あてがわれた部屋で一人になって考える。
人生楽あり苦あり、谷あり山あり、とはほぼ無縁で、平たんな毎日を送って来た自分だったが、アレンに出会ってその全てが一変した。アレンは陽菜に一目惚れをしたと言っていたが、何をどう見て一目惚れに至ったのかは未だに不明だ。初めこそは信じられないでいたが、一緒に過ごすうちにアレンの真剣さだけは伝わって来た。それを邪見にしていない時点で、アレンに対しては好意を抱いていたのかもしれない。
(とりあえず倫理やら概念やら、そういうのを一切捨ててみよう)
うんと若い自分ならどう考えただろうか。イケメン、外国人、金持ちとそのステータスに喜んでいただろう。だが人の成長というのは恐ろしいものだ。それらステータスは昔はよくても今はいいとは言えないのだ。
(結局その背後の装飾が怖いのよね)
昼間に澤永に言われた通りだ。一般人の嫁ではない。世界規模の人物のパートナーとなるなら、それなりのレッスンは必要となるのだ。
(いやいや!まだ付き合ってもいないのに嫁って……)
だが考えれば考える程、何故だか顔が熱くなってきた。
(話を戻そう……まずアレン自身を好きかどうか……)
ごちゃごちゃしたものは除けて、シンプルな自分の気持ちを考えてみよう。好きか嫌いかの二択ならば好きになるだろう。ザ・庶民な自分の作った食事を美味しそうに食べてくれる姿は見ていて嬉しい。それに仕事でも褒める時は褒めてくれる。何より好きだというのがしっかりと見えるのだ。
(完敗だ……思っている以上に私、アレンの事好きじゃん)
考えるだけ無駄と言っていた澤永の意味がようやく理解出来た。たしかにその後ろに付くものは庶民の陽菜にはとても背負えるものではない。だが側にいたいかどうかを考えた時に、いたいと思うのだろう。アレンといて苦労する事の方が多いが、居心地はいいのだ。
「よしっ!その先の事はまた考えよう!今は自分の気持ちが定まったんだし、それで十分だよ!」
謎の気合が入った時、ちょうど部屋のチャイムが鳴った。
「誰だろ?」
この部屋に来る人間は限られているとはいえ、確認もせずに開けるのは陽菜の悪い癖だ。
「はい……」
「ヒナ!」
「ア、アレン!」
扉を開けるなりいきなり抱き着くアレン。これもまた毎度の事だが、ここはマンションではなくホテルだ。
「ちょ、とりあえず中に入って!」
なんのためらいもなくアレンを部屋の中に招き入れた陽菜。先ほどまでいろいろと悩んでいたあれこれが一気に吹き飛んでしまった。
「後になって考えたら、ヒナに大変な思いさせてるよね。ごめんね」
「い、今更?てか今までも突然な事が多かったけど、今回のとんでも事件だったね。いつもの日常を考えたら事の重要さはそっちのけになって自分の事しか考えてなかったわ」
「自分の事?」
「あぁ……アレンとのこれから?みたいなのを考えていただけ」
その言葉を聞いたアレンはさらに強く陽菜を抱きしめた。
「ちょ、痛い!」
「ヤダ!絶対に別れたくない……」
「別れるもなにも、付き合ってないからね。でも、私もアレンとは離れがたいかな」
「ヒナ!」
陽菜への拘束を緩めたアレンが、今にも泣きそうな顔をして陽菜を見た。世界的財閥だとか、会社のCEOだとか言われていても、わりとアホでヘタレなアレンが急に愛おしくも見え、陽菜自らアレンにキスをした。
それを仕事が終わり、あてがわれた部屋で一人になって考える。
人生楽あり苦あり、谷あり山あり、とはほぼ無縁で、平たんな毎日を送って来た自分だったが、アレンに出会ってその全てが一変した。アレンは陽菜に一目惚れをしたと言っていたが、何をどう見て一目惚れに至ったのかは未だに不明だ。初めこそは信じられないでいたが、一緒に過ごすうちにアレンの真剣さだけは伝わって来た。それを邪見にしていない時点で、アレンに対しては好意を抱いていたのかもしれない。
(とりあえず倫理やら概念やら、そういうのを一切捨ててみよう)
うんと若い自分ならどう考えただろうか。イケメン、外国人、金持ちとそのステータスに喜んでいただろう。だが人の成長というのは恐ろしいものだ。それらステータスは昔はよくても今はいいとは言えないのだ。
(結局その背後の装飾が怖いのよね)
昼間に澤永に言われた通りだ。一般人の嫁ではない。世界規模の人物のパートナーとなるなら、それなりのレッスンは必要となるのだ。
(いやいや!まだ付き合ってもいないのに嫁って……)
だが考えれば考える程、何故だか顔が熱くなってきた。
(話を戻そう……まずアレン自身を好きかどうか……)
ごちゃごちゃしたものは除けて、シンプルな自分の気持ちを考えてみよう。好きか嫌いかの二択ならば好きになるだろう。ザ・庶民な自分の作った食事を美味しそうに食べてくれる姿は見ていて嬉しい。それに仕事でも褒める時は褒めてくれる。何より好きだというのがしっかりと見えるのだ。
(完敗だ……思っている以上に私、アレンの事好きじゃん)
考えるだけ無駄と言っていた澤永の意味がようやく理解出来た。たしかにその後ろに付くものは庶民の陽菜にはとても背負えるものではない。だが側にいたいかどうかを考えた時に、いたいと思うのだろう。アレンといて苦労する事の方が多いが、居心地はいいのだ。
「よしっ!その先の事はまた考えよう!今は自分の気持ちが定まったんだし、それで十分だよ!」
謎の気合が入った時、ちょうど部屋のチャイムが鳴った。
「誰だろ?」
この部屋に来る人間は限られているとはいえ、確認もせずに開けるのは陽菜の悪い癖だ。
「はい……」
「ヒナ!」
「ア、アレン!」
扉を開けるなりいきなり抱き着くアレン。これもまた毎度の事だが、ここはマンションではなくホテルだ。
「ちょ、とりあえず中に入って!」
なんのためらいもなくアレンを部屋の中に招き入れた陽菜。先ほどまでいろいろと悩んでいたあれこれが一気に吹き飛んでしまった。
「後になって考えたら、ヒナに大変な思いさせてるよね。ごめんね」
「い、今更?てか今までも突然な事が多かったけど、今回のとんでも事件だったね。いつもの日常を考えたら事の重要さはそっちのけになって自分の事しか考えてなかったわ」
「自分の事?」
「あぁ……アレンとのこれから?みたいなのを考えていただけ」
その言葉を聞いたアレンはさらに強く陽菜を抱きしめた。
「ちょ、痛い!」
「ヤダ!絶対に別れたくない……」
「別れるもなにも、付き合ってないからね。でも、私もアレンとは離れがたいかな」
「ヒナ!」
陽菜への拘束を緩めたアレンが、今にも泣きそうな顔をして陽菜を見た。世界的財閥だとか、会社のCEOだとか言われていても、わりとアホでヘタレなアレンが急に愛おしくも見え、陽菜自らアレンにキスをした。
1
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
一夜限りのお相手は
栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる