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 アレンの突飛押もない思い付きデート。実は閉館近い時間だ。その時間から貸し切り状態にしたアレン。従業員の皆さん本当にすみませんと一人一人に謝りたくなった陽菜。だが当の暴君はとても楽しそうで、テンションが高かった。
「ほら見てヒナ!」
 魚が泳ぐ姿を三百六十五度見られるドームではアレンのテンションはマックスだ。だが何故か陽菜は素直に楽しめない。申し訳なさの方が先だって。
「ねぇヒナ。何を気にしてるのさ。こういうのは楽しまないと」
「は、はい……でもなんだか従業員の方には申し訳ないと思いながらも……」
「大丈夫だよ。従業員の人達には特別手当を出してるから!」
 金持ちめ!この世は金次第か!とツッコみたくなった陽菜だが、確かにアレンがせっかく用意してくれた時間だったりもする。
「そうですね……楽しまないといけないですよね」
「そうそう。はい、お姫様。お手をどうぞ」
 スッと手を差し出したアレンだが、この手を取らなくては前に進まないのはわかっているので、ここは素直にアレンの手を取った。相手が外国人だからか、腕を組む形をとると、まるで自分が本物の姫になった気持ちにもなった。
「やっぱりアレンはこういうのがスマートですよね」
「イギリスは紳士の国だしね。レディファーストなんて基本だよ。それに比べて日本人はレディファーストを知らない。女性に失礼だよ」
「まぁ、お国柄の考えの違いかもしれませんね。むしろ今の時代それを言っちゃうと、男女差別だ!って言う人が多いですから」
「わからないなぁ……他人に優しくするのは常識だよ」
 こういうところがモテる男のスタイルなのかもしれないと改めて思った。
 よくよく思えば、自分と言う存在は今、とても幸運なポジションにいるのだろう。顔よしスタイルよし、優しい、お金あり、となんでもありな王子様を独り占めしている。それを無下に扱うならば総スカンを食らってしまうくらいだろう。自分でも不思議だ。アレンの何が駄目なのか。
「どうしたの?ヒナ?キスしたくなった?」
「い、いえ……どうしてなのかなと不思議に思ってしまって?」
「ん?どういう事?」
「これだけパーフェクトガイを目の前にして、惚れない私は一体何故なのかなと」
 ここに来て素直な陽菜の言葉にアレンは目を輝かせる。アレンは陽菜の手を持ち上げその甲にキスをした。
「無理にその答えを見つけてくれなくても大丈夫だよ。僕はいつでも待つし、ヒナが本当に僕の事を好きになってくれたら、その時はヒナの全部を頂戴」
 そんな決めセリフはずるい。なんだか頬が火照ってきた陽菜は、うつむき加減になった。そんな陽菜の顎を持ち上げたアレンは、その唇に優しくキスをする。
(なんで好きになれないのかな?)
 いつまでも堂々巡りな疑問の答えが出るのはもう少し先だった。
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