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「んん!んん!」
 目の前がグルグルとなる。何故こんな状況に陥っているのか、全く理解出来なかった。
「ヒナ……愛してる」
「ちょっ、まっ……」
 静止の言葉も虚しく、開いた唇の隙間からアレンの舌が入り込む。
「やっ……やめっ……」
 奥へと引っ込んでいる陽菜の舌をアレンが引きずり出し、巧みに絡めていく。ドンドンとアレンの胸を叩くが、その手も次第に力を失っていく。
(な、何コレ……気持ちいい)
 体験したことがない快楽が沸き起こる。おそらくアレンはこういう事に慣れているのだろう。その手の事に不慣れな陽菜にとって、本当のキスとはこういう事を言うのかと思った。だが……
「は、離せー!」
 気力で押しのけた陽菜は、驚くアレンをキッと睨んだ。
「どうしたんだいヒナ?」
「どうしたもこうしたもあるか!こんなの強姦と一緒です!」
「強姦って……ヒナはとても気持ち良さそうだったよ」
「合意じゃないでしょ!強引なのは嫌です!」
 そう言いのけた陽菜に、アレンは何故?と言った表情を浮かべている。ダメだ。これでは何も通じない。そう思った陽菜ははっきりと告げた。
「私と付き合いたいのでしたら、ちゃんとその誠意を見せて下さい!私がアレンの事を好きってなったらキスもその先も文句言いません!」
「そんな……僕はちゃんとヒナを愛してるって言ったのに」
「合意を得ない行為は嫌なんです!」
 それにアレンが本当に陽菜を好きなのか、にわか信じ難いところもある。むしろアレンによって社会生活をめちゃくちゃにされたのだ。
「じゃあ、どうしたらヒナは僕の事を愛してくれる?」
「それを考えて下さい」
 なんだか上から目線な感じもするが、合意なく強引なのは嫌なのだ。
「でもヒナを好きな気持ちは本当だよ。だからキスだけはしたい……」
 一瞬ドキリとしたが、後半の言葉で台無しだ。
「どうしてキスがセットなんですか!」
「だって好きな人と触れ合いたいよ。キスより先はヒナがYESの答えを出してからにするから、キスだけはさせて」
 とても真摯に、そして切ない表情を浮かべ言うアレンに心が揺らいだ陽菜。
「う、うぅ……キスだけなら……」
「ホントに?やった!」
 満面の笑顔で抱きつくアレン。
(アレっ?なんか前と何も変わらないのでは?)
 以前からお構いなしにハグもキスもしてきていたアレン。状況的には何も変わらないが、一応陽菜の同意を得ている事になるので、これからは平気でキスが出来るという事だ。
(なんか私って押しに弱いというか甘い?)
 そうは言っても何としても引き下がらないアレンに対し、どちらかが引かざる終えないのだ。
 その事を考えれば、アレンはかなり計算高いのではと思ってしまった。
「ヒナ、大好きだよ」
 チュッと唇にキスをしかけてくるアレンは、今のところ満足そうなのでこれ以上は目くじらを立てないようにした陽菜だった。
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