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「つ、疲れた……」
特別編成の秘書課勤務一日目にしてすでに心が折れそうな陽菜は、帰宅した瞬間にベッドへダイブ。
体力的な疲労ではない。精神的疲労だ。世話人の澤永は優しい口調でかなりキツイことを言ってくる才色兼備だ。
「秘書課として必要なスキルはいくつかありますが、山下さんは英語はもちろん出来ますよね?」
出来る事前提で話をされたので、「あまり……」と正直に言った。
「では大学の時に第二外国語は何を?」
いろいろ質問されたが、どれも陽菜のスキルにはないものだ。
「この秘書課にいるのでしたら、英語は出来て当たり前ですよ。後は露、中、仏、西、印辺りも出来る人はここには多いですよ」
さすが精鋭部隊。陽菜には一つもないものだ。
「まぁ、伊澄室長からはイレギュラーな事があってここへの配属になったと聞きました。出来ないにしても、出来るように努力なさい。特に英語は。ここに来るメールや電話は全て外国語ですよ」
ひぃ!っとなる陽菜を余所に、澤永は秘書課において必要なスキルなどをズラズラと話した。
「ヒースルーCEOが帰国なさった後も、あなたは秘書課に在籍すると思いますからね。しっかり勉強するように」
そう言ってわたされた語学系の本から経済誌に至るまで、やっていけるのか不安でしかなかった。
疲れ果てもう今日はこのまま寝てしまおうかとうとうたしていた時だった。家のチェイムが鳴った。
「誰よ……まったく」
重たい体を起こし、苛々しながら玄関へと向かった陽菜。いつもなら誰なのか確認して開けるが、疲れのせいかそれを怠りドアを開けてしまった。
「はい……どちらさ……」
「ヒナ!」
ドアが開くなり陽菜に抱きついてきた痴漢。もといアレンに陽菜は「離れて下さい!」と言った。
「酷いよ!先に帰るなんて……」
「はっ?」
「帰りはシャトーブリアンの美味しいお店でディナーとって、一緒に帰る予定だったのに」
アレンの勝手な予定には陽菜の予定が一つも擦りもしないのだが、今更言っても通じないのはわかっているのでツッコまない。
「あの、CEO……」
「NO!アレンと言って下さい」
(言えないよ!)
自社のCEOに対して、しかも今は直属の上司に当たる人物にそんな事できるわけがない。
「とりあえず帰ってくれますか?今日はいろいろあって疲れたので」
「あぁ、ヒナが僕のお世話係なんだよね。いつもは伊澄があれこれ口出しして煩かったけど、これからヒナならとっても嬉しいよ!」
満面の笑顔でそう言ったアレンの背後から「そこはこれまで通り、私がやります」と聞こえ、伊澄が咳払いをしながら背後から姿を見せる。
「い、伊澄室長!」
「わがままな主が大人しく部屋に入るまで見張っていようとしていたのですが」
有能すぎる秘書だが、気苦労も絶えないのかな。それとも普段から厳しくしているからストレスにはなってないのか?
「とにかく、今日は澤永さんから厳しくし指導を受けていたでしょうから、山下さんを休ませてあげましょうね。CEO」
「そんな!ヒナ~」
首根っこを引っ張られ隣の部屋へと連行されたアレン。嵐のようにやって来て、嵐のように去ったアレンを見て、なんだか疲れが増した。
「私も伊澄室長を見習ってあそこまで大きく出た方がいいのかな?」
特別編成の秘書課勤務一日目にしてすでに心が折れそうな陽菜は、帰宅した瞬間にベッドへダイブ。
体力的な疲労ではない。精神的疲労だ。世話人の澤永は優しい口調でかなりキツイことを言ってくる才色兼備だ。
「秘書課として必要なスキルはいくつかありますが、山下さんは英語はもちろん出来ますよね?」
出来る事前提で話をされたので、「あまり……」と正直に言った。
「では大学の時に第二外国語は何を?」
いろいろ質問されたが、どれも陽菜のスキルにはないものだ。
「この秘書課にいるのでしたら、英語は出来て当たり前ですよ。後は露、中、仏、西、印辺りも出来る人はここには多いですよ」
さすが精鋭部隊。陽菜には一つもないものだ。
「まぁ、伊澄室長からはイレギュラーな事があってここへの配属になったと聞きました。出来ないにしても、出来るように努力なさい。特に英語は。ここに来るメールや電話は全て外国語ですよ」
ひぃ!っとなる陽菜を余所に、澤永は秘書課において必要なスキルなどをズラズラと話した。
「ヒースルーCEOが帰国なさった後も、あなたは秘書課に在籍すると思いますからね。しっかり勉強するように」
そう言ってわたされた語学系の本から経済誌に至るまで、やっていけるのか不安でしかなかった。
疲れ果てもう今日はこのまま寝てしまおうかとうとうたしていた時だった。家のチェイムが鳴った。
「誰よ……まったく」
重たい体を起こし、苛々しながら玄関へと向かった陽菜。いつもなら誰なのか確認して開けるが、疲れのせいかそれを怠りドアを開けてしまった。
「はい……どちらさ……」
「ヒナ!」
ドアが開くなり陽菜に抱きついてきた痴漢。もといアレンに陽菜は「離れて下さい!」と言った。
「酷いよ!先に帰るなんて……」
「はっ?」
「帰りはシャトーブリアンの美味しいお店でディナーとって、一緒に帰る予定だったのに」
アレンの勝手な予定には陽菜の予定が一つも擦りもしないのだが、今更言っても通じないのはわかっているのでツッコまない。
「あの、CEO……」
「NO!アレンと言って下さい」
(言えないよ!)
自社のCEOに対して、しかも今は直属の上司に当たる人物にそんな事できるわけがない。
「とりあえず帰ってくれますか?今日はいろいろあって疲れたので」
「あぁ、ヒナが僕のお世話係なんだよね。いつもは伊澄があれこれ口出しして煩かったけど、これからヒナならとっても嬉しいよ!」
満面の笑顔でそう言ったアレンの背後から「そこはこれまで通り、私がやります」と聞こえ、伊澄が咳払いをしながら背後から姿を見せる。
「い、伊澄室長!」
「わがままな主が大人しく部屋に入るまで見張っていようとしていたのですが」
有能すぎる秘書だが、気苦労も絶えないのかな。それとも普段から厳しくしているからストレスにはなってないのか?
「とにかく、今日は澤永さんから厳しくし指導を受けていたでしょうから、山下さんを休ませてあげましょうね。CEO」
「そんな!ヒナ~」
首根っこを引っ張られ隣の部屋へと連行されたアレン。嵐のようにやって来て、嵐のように去ったアレンを見て、なんだか疲れが増した。
「私も伊澄室長を見習ってあそこまで大きく出た方がいいのかな?」
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