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「そうだよ。ヒナは僕の恋人だよ」

 そう公衆の……しかも会社の前で堂々と宣言したアホず……呑気なセレブ様の顔が脳裏に焼き付いて仕方ない。
「うぅ……」
 これからどうすればいいのだ?やはり辞表か。辞表出すしかないか。
 私の日常、もとい会社生活がこんな形で終わるとは。あのど天然KYセレブめ!
 そう叫んだ時、陽菜は一気に覚醒する。
「えっ?ここどこ?」
 どうやら今までの問答は夢だったらしい。だがそれよりも気になるのはここだ。やたら手触りがよく、快適な寝心地、キング?クイーン?何サイズかもわからないベッドに、周囲は洗礼された調度品。部屋が広すぎて奥行きがわからない。
 ここは一体どこなのか?
 すると部屋の継ぎ目になっている奥からアレンが姿を見せた。
「ヒナ!起きたんだね!」
「えっと……あの、ここは?」
「ここは僕が日本にいる間に仕事場兼住居にしているホテルだよ」
 日本のどこにこんなホテルがある!っと突っ込みたくなったが、凡人にはわからないだけなのだろう。
「急に倒れたからビックリしたよ。医者に見せても大丈夫だって言ってたから」
「それはどうもご迷惑を……と言うより迷惑かけられたのはこちらなんですが……」
 よく考えると原因はアレンのとんでも行動、とんでも発言によるものだ。だが本人何もわかっておらず、首を傾げるばかりだ。
「どうして僕がヒナに迷惑かけたの?真実を言っただけなのに」
「それはあなたの常識であって、世間一般では非常識です!どこの世界に公衆の面前でCEOが一社員とお付き合いしてますなんて言うんですか!」
「恥ずかしがるのは日本人の美徳であって恥でもあるんだよ」
「意味わかりません!それに私とあなたは付き合ってません!とにかくこれで私は職を失ってしまいましたよ!」
「うーん……ヒナはシャイだなぁ。それに職がないなら僕の所で働けばいいよ」
 何を言っているのかわからないし、会話が全く噛み合ってない。これではラチがあかない。そう思った時、陽菜にとって救世主とも思える出来事が起きた。
「アレン様。ロックフォー様との会議です」
「はぁ……こればかりは仕方ないか。伊澄。ヒナの事をよろしく」
「かしこまりました」
 どうやら仕事らしく、アレンはその場を後にした。残ったのは陽菜と、やって来た秘書っぽい人だ。日本人で眼鏡にピシッときまたスーツ。
「私は日本でアレン様の秘書をしてます伊澄圭と申します」
「ど、どうも……山下陽菜です」
「存じております。日本海運商事第二営業の山下さんですよね」
 ニコリともしないので、その表情がわからないが、とにかく言葉がまともに通じそうな人が登場して助かった。
「あの、私はCEOとは別にお付き合いしてないのですが、CEO何か勘違いされてしまって……どうしたら」
「どうしたらと問われましても、主がそう言うのでしたらとしか言いようがありません。ですがアレン様が今朝方あなたに迷惑をかけたのは事実です」
 あぁ、話が通じて有り難い。そう思った時だった。
「このままでは職場に居づらいでしょう。なのでこちらで山下さんが困らないよう、アレン様が日本滞在中の特別部署。アレン様付きの秘書にしようと思います」
 意味がわからない。むしろまた話がややこしくなってしまった。陽菜は頭が痛くなった。
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