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第十章
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「実際に莉春さんのいただいた簪の蒼玉ですが、この玉の産地はずっと西にある国だそうです。この国に流れる事自体非常に珍しいようです」
聞けば他の夫人に贈られた物もこの国の物ではないらしい。
「成る程……それがここにあるって事は、偉家お抱えの商家となんらかの癒着があるとも取れると?」
「はい。噂に聞くと武器商人が不当な横流しをしていた為、御史台に捕らえられたはずなのですが、その人物と似た者が別の国にいたと言う話もあります」
賄賂に収賄、癒着に武器と、物騒な単語ばかりが並ぶ中で、もっとも危惧すべきだと思うのは武器商人の事だ。
「武器商人が別の国にいたって事は、偉家に武器が流れてるって事では?」
「確信はないですが、可能性はあるかと」
その行き着く先は謀反だ。どうやら実情は皇帝の知るところにあり、皇帝もまた秘密裏に動いているのだと言う。
「とにかくこれは証拠の品になりますので、私が預かっておきますね」
「はい。お願いします」
蓮華からもらった簪を受け取った王梁寿が旭庄宮を後にした。
「莉春様。まさか偉蓮華様に裏があったとは思いませんでしたね」
「もしこれが真実なら大変な事ね。けど、きっと主上が全てを解決してくれるわ」
これ以上の深追いは身を滅ぼしかねない。これはしかるべき場所に任せておいた方がいいと思った。
「主上に拝謁致します」
蘆眞房にやって来たのは王梁寿だった。丞黄以外の人物は人払いを済ましてあった。冠耀がこうして王梁寿を呼んだのは他でもない。偉家の、主に蓮華の行動に関する報告だった。
「顔を上げよ梁寿」
「はい。主上……偉蓮華様からいただいたお品に関しての報告があります」
玉聖宮で偉蓮華主催の宴が催された事については冠耀は知っている。ただの宴ならば問題はない。だがそこであった問題を王梁寿が奏上したのだ。
「これをご覧ください」
そう言って王梁寿が卓に置いたのは、蓮華が莉春に渡した簪だった。それを手に取りよく眺める。すると冠耀はある事に気が付いた。
「これは……」
「お気づきになられましたか?」
「あぁ。見た目には美しい蒼玉だが、これは猛毒の玉だな」
少し揺らすと蒼玉の中が一緒に揺れた。玉としての価値は非常に高いのだが、これは飾りとしてはいささか不備のあるものだ。
「私も父から聞いただけで見たのは初めてです。世の中の玉にはそのように毒を封じたまま玉となったものがあると。他国の後宮ではわざと簪や耳飾り、腕輪などの玉として使い、自然と割れるように細工しているとか」
「成程な。少しの衝撃で割れてもこの玉が原因とはなかなかわかりにくい」
「はい。ですがその事を蓮華様が知っておいでかは別です。しかしそれを後宮に持ち込んだ偉家の者が知らないとは思えません」
事は一歩間違えると惨事になりかねた。こうしてその脅威が一つ取り除かれただけでも安堵すべきだろう。
王梁寿には引き続き何かあれば言うよう言い退室させた。冠耀と丞黄はこれらをどうするか頭を悩ませる事となる。
聞けば他の夫人に贈られた物もこの国の物ではないらしい。
「成る程……それがここにあるって事は、偉家お抱えの商家となんらかの癒着があるとも取れると?」
「はい。噂に聞くと武器商人が不当な横流しをしていた為、御史台に捕らえられたはずなのですが、その人物と似た者が別の国にいたと言う話もあります」
賄賂に収賄、癒着に武器と、物騒な単語ばかりが並ぶ中で、もっとも危惧すべきだと思うのは武器商人の事だ。
「武器商人が別の国にいたって事は、偉家に武器が流れてるって事では?」
「確信はないですが、可能性はあるかと」
その行き着く先は謀反だ。どうやら実情は皇帝の知るところにあり、皇帝もまた秘密裏に動いているのだと言う。
「とにかくこれは証拠の品になりますので、私が預かっておきますね」
「はい。お願いします」
蓮華からもらった簪を受け取った王梁寿が旭庄宮を後にした。
「莉春様。まさか偉蓮華様に裏があったとは思いませんでしたね」
「もしこれが真実なら大変な事ね。けど、きっと主上が全てを解決してくれるわ」
これ以上の深追いは身を滅ぼしかねない。これはしかるべき場所に任せておいた方がいいと思った。
「主上に拝謁致します」
蘆眞房にやって来たのは王梁寿だった。丞黄以外の人物は人払いを済ましてあった。冠耀がこうして王梁寿を呼んだのは他でもない。偉家の、主に蓮華の行動に関する報告だった。
「顔を上げよ梁寿」
「はい。主上……偉蓮華様からいただいたお品に関しての報告があります」
玉聖宮で偉蓮華主催の宴が催された事については冠耀は知っている。ただの宴ならば問題はない。だがそこであった問題を王梁寿が奏上したのだ。
「これをご覧ください」
そう言って王梁寿が卓に置いたのは、蓮華が莉春に渡した簪だった。それを手に取りよく眺める。すると冠耀はある事に気が付いた。
「これは……」
「お気づきになられましたか?」
「あぁ。見た目には美しい蒼玉だが、これは猛毒の玉だな」
少し揺らすと蒼玉の中が一緒に揺れた。玉としての価値は非常に高いのだが、これは飾りとしてはいささか不備のあるものだ。
「私も父から聞いただけで見たのは初めてです。世の中の玉にはそのように毒を封じたまま玉となったものがあると。他国の後宮ではわざと簪や耳飾り、腕輪などの玉として使い、自然と割れるように細工しているとか」
「成程な。少しの衝撃で割れてもこの玉が原因とはなかなかわかりにくい」
「はい。ですがその事を蓮華様が知っておいでかは別です。しかしそれを後宮に持ち込んだ偉家の者が知らないとは思えません」
事は一歩間違えると惨事になりかねた。こうしてその脅威が一つ取り除かれただけでも安堵すべきだろう。
王梁寿には引き続き何かあれば言うよう言い退室させた。冠耀と丞黄はこれらをどうするか頭を悩ませる事となる。
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