一輪の白百合をあなたへ

まぁ

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第十章

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「蓮華様。お気持ちは嬉しいですが、こんなにも立派な品は私には分不相応です。ですから申し上げにくいですがお返し致します」
「気になさらなくていいのよ。このようなものは定期的に来てます。たいした事ないのですから貰っておいて頂戴。その方が私としてもありがたいわ」
 返す事が出来ず莉春はそれを風華に預けた。
 その後も互いの腹の探り合いのような蓮華主催の宴は続き、ようやく解放された時には夕方にさしかかっていた。
 旭庄宮きょくしょうきゅうに戻ると、乳母が炎珠を抱えて莉春の元へとやって来た。
「お帰りなさいませ莉春様」
「ただいま。炎珠はどうでしたか?」
「大変大人しくしていましたよ」
 そう報告を得ると、乳母に抱かれていた炎珠は莉春に手を差し伸べていた。莉春は炎珠を乳母から受け取りだけ抱えると、腕の中の子は笑う。
「莉春様。王夫人が……」
 炎珠をあやしていると風華がやって来た。第七夫人の王梁寿がこんな夕刻に何の用だろうかと思ったが、断る理由もないので通すように風華に言う。
「こんな時刻じかんにごめんなさい」
「いえ、全然大丈夫です。むしろ私も炎珠を抱いた状態ですが……どうぞ座って下さい」
 そう促し、王梁寿に座ってもらうと、風華が莉春の代わりに茶を用意してくれた。
「それで、どうかしたのですか?」
「簡単に言いますね。今日蓮華様から頂いた品を私に渡して欲しいのです」
「え、えぇ……けどどうしてなのか聞いておきましょうか?」
「実は私の実家である噂が出回っているのです」
 何やら事が重大そうな雰囲気がした。王梁寿の実家は商家だ。それほど大きくはないが他の商家とはいろいろ伝手があるようで、今回の事もその伝手を伝っての事らしい。
「偉家から物の売買が頻繁なのは昔からある事なのですが、最近ではその品の価値がとても高価なものが多いとか」
「つまりそれまでの品とは一線を置くものが偉家に流れていると?」
「はい。後これはどうなのかわかりませんが、罪の擦り付けで本来捕まるはずの罪人が捕まらないとか……」
「それはつまり賄賂や収賄という意味ですか?」
 偉蓮華の一族は代々御史台を牛耳っている。頭が偉家から変わらないのなら何か問題が起きたとしても不思議ではない。
 夫人達に贈られた品のほとんどは賄賂などで得た物で、それを偉家の者が蓮華に渡している。後宮は官吏達が安易に介入出来ぬ場所。高額な物を巷に流しても向こうが嫌がる。証拠隠滅するのに最適だったのが蓮華への上納だったのだろう。
「主上はこの事を知ってるのですか?それに蓮華様も知って?」
「主上へは私から奏上を上げました。蓮華様も流石に知らないとは思えませんが……こうして私達へ流す事で完全な隠滅を図っているのかもしれません」
 これはそういう品なのかもしれないと思うと、他人からの贈り物も何かしらの意味があるのだと勉強になった。
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