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第八章
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「良い事?これは子を授かりやすくする薬湯です。これを呑んで絶対に主上の子を成すのです」
照景宮では今宵、冠燿を迎えての酒宴を行う。その前に呼ばれた徳華は、叔母である鄭妃から器を渡された。とても苦味のある臭いが鼻を刺激した。
「確かに主上の子を成したいですが、どうしてそう急くのですか?」
「こうでもしなくては貴女には勝機がないから」
それは今の寵愛の全てを莉春が得ているからだろう。だが寵愛というのは一時的なもの。いつかは飽きられる。そう徳華は思っていた。だが……
「もし主上が楊莉春を手放さない場合、どうするの?貴女は寵愛を得る権利を失う。せっかく候家の者としてここへ来たのに、貴女は候家の顔に泥を塗るつもり?」
「叔母様!そんな事はありません!私は主上の為、そして候家の為にここにいるのです」
「なら必ず今日、主上の子を成すのです」
子を成す。まるで呪いのようなその言葉は、今の徳華にとってどんな言葉よりも魅力的だった。
「私は主上の子を成す……」
その気概で徳華は薬湯を呑み干した。そして鄭妃に子を成すと約束し、酒宴の席に着いた。
「候鄭妃はどうやら楊莉春に恐れをなして自分の姪を使って主上の子を成そうと必死みたいね」
玉聖宮で侍女に足を叩いてもらっている偉蓮華はそう呟いた。
「蓮華様。ですが例え候徳華が寵愛を得たとしてもそれは一時の事。主上の御心は楊莉春にしかありません」
その言葉に激昂した蓮華は侍女の頬を叩いた。侍女は頭を床に付けた。
「申し訳ありません!申し訳ありません!失言をしました。どうぞ私に罰をお与え下さい!」
「私の前で二度とそのようなことを言うのは許さないわ!けど……楊莉春の存在は確かに目障りね」
このまま寵愛を得続ければ、いずれは夫人の座も得るだろう。そして子を成せばその地位は確固たるものとなる。
「蓮華様。後宮には暗黙の了解があります。寵愛を一人だけが得れば国は滅ぶと」
「そうね。その伝説もまた然り。この局地をどうすべきか、私自身も考えなくてはならないようね」
暗躍する蓮華もまた内心焦りがあった。自分の隣に第三夫人として莉春が座れば、皇帝が向ける寵愛がさらに遠くなる。そうならない為にも自身にも協力な手駒が欲しいと思った。
盈月が莉春を召さなかった夜の翌日、徳華は満面の笑みで帰ってきた。その様子を見てどうやら願いを遂げたのだと理解した。
ここはそういう場所。自分一人に寵愛が向かう事はない。皆長く寵愛を得ようとしているのだ。その体験を莉春もしている最中だ。
「達観した気持ちでいれると思ったけど……」
莉春も普通の女子だったというわけだ。それに莉春は若い。まだまだ恋の駆け引きを知らない。
照景宮では今宵、冠燿を迎えての酒宴を行う。その前に呼ばれた徳華は、叔母である鄭妃から器を渡された。とても苦味のある臭いが鼻を刺激した。
「確かに主上の子を成したいですが、どうしてそう急くのですか?」
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それは今の寵愛の全てを莉春が得ているからだろう。だが寵愛というのは一時的なもの。いつかは飽きられる。そう徳華は思っていた。だが……
「もし主上が楊莉春を手放さない場合、どうするの?貴女は寵愛を得る権利を失う。せっかく候家の者としてここへ来たのに、貴女は候家の顔に泥を塗るつもり?」
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このまま寵愛を得続ければ、いずれは夫人の座も得るだろう。そして子を成せばその地位は確固たるものとなる。
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