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第五章
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「え、盈月……」
「ど、どうしてこんなとこに……」
何故ここに莉春がいるのかわからない盈月は戸惑っていたが、もちろん見つかった莉春自身も戸惑っていた。
「俺が連れてきたんだよ」
草の擦れる音を立てやって来たのは紀清だった。それを見た盈月は「父上」と声を漏らしたが、すぐに拝啓する。
「父上……いえ、上紀皇帝に拝謁します」
「よせよせ。俺はもう皇帝でもなんでもないただの一般人だ」
そんな一般人が弦丘城を行き来している時点で一般人とは言えないのだが。
「では何故莉春をここへ連れて来たんですか?」
「うーん深い意味はないけど、莉春ちゃんに見せたかったから?それよりも俺と莉春ちゃんが知り合いな事には何も言わないのか?」
「その事については莉春から聞いておりますゆえ」
「成る程な」
立っている事が面倒になったのか、紀清はその場に座り込んで、どこから持ち込んだのかわからない酒を呑み始めた。
「さっき丞黄に会って来たが、あいつ今はお前の側使えなんかやってるんだな」
「は、はい。私が皇帝になった際、宰相にならないかと申したのですが、断られました」
「んまぁ、あいつは元々俺の部下だったしな。今は周景英が宰相だったっけか?まぁ、周家が宰相なら問題はないな」
何やら込み入った話になって来たが、どうもこの親子には親子らしさはなく、どことなく歪な感じがする。
(それもそうか……天下の皇帝一族様だもんね)
「処で父上はどうしてこの国に?なんの前触れもなく戻られるとも思いませんが……」
「その辺の察しは良くなったか。あーでも本当に理由はない。強いて言うなら冠燿。お前は莉春ちゃんを嫁にもらわないのか?」
「えっ?ちょっとおじさん何言ってるの?」
突然このとんでも親父は何を言い出すのかと思った。だが状況の把握は盈月もちゃんとしている。
「それはありません父上。まず莉春を嫁にするにしても、大臣達が許さないでしょう」
「そうよ!私は出自が田舎の娘で、しかも女官になったばかりなのよ!」
盈月だけでなく莉春も反論する。だが紀清は真面目な顔で盈月を見た。
「けどお前にとって莉春ちゃんは特別なんだろ?」
「たしかに莉春は友と言う点で見れば親しいと思おます」
「皇帝様は国家天下だ。一言勅命出せば誰も文句は言えまい」
「ですが莉春を嫁にする事はありません。これは莉春の為でもあるのです」
何でこんな話になったのか。当の莉春の意見などそっちのけで二人は話す。
「ならお前は莉春ちゃんから手を引け。このまま莉春ちゃんといればお前が壊れるぞ」
「ど、どうしてこんなとこに……」
何故ここに莉春がいるのかわからない盈月は戸惑っていたが、もちろん見つかった莉春自身も戸惑っていた。
「俺が連れてきたんだよ」
草の擦れる音を立てやって来たのは紀清だった。それを見た盈月は「父上」と声を漏らしたが、すぐに拝啓する。
「父上……いえ、上紀皇帝に拝謁します」
「よせよせ。俺はもう皇帝でもなんでもないただの一般人だ」
そんな一般人が弦丘城を行き来している時点で一般人とは言えないのだが。
「では何故莉春をここへ連れて来たんですか?」
「うーん深い意味はないけど、莉春ちゃんに見せたかったから?それよりも俺と莉春ちゃんが知り合いな事には何も言わないのか?」
「その事については莉春から聞いておりますゆえ」
「成る程な」
立っている事が面倒になったのか、紀清はその場に座り込んで、どこから持ち込んだのかわからない酒を呑み始めた。
「さっき丞黄に会って来たが、あいつ今はお前の側使えなんかやってるんだな」
「は、はい。私が皇帝になった際、宰相にならないかと申したのですが、断られました」
「んまぁ、あいつは元々俺の部下だったしな。今は周景英が宰相だったっけか?まぁ、周家が宰相なら問題はないな」
何やら込み入った話になって来たが、どうもこの親子には親子らしさはなく、どことなく歪な感じがする。
(それもそうか……天下の皇帝一族様だもんね)
「処で父上はどうしてこの国に?なんの前触れもなく戻られるとも思いませんが……」
「その辺の察しは良くなったか。あーでも本当に理由はない。強いて言うなら冠燿。お前は莉春ちゃんを嫁にもらわないのか?」
「えっ?ちょっとおじさん何言ってるの?」
突然このとんでも親父は何を言い出すのかと思った。だが状況の把握は盈月もちゃんとしている。
「それはありません父上。まず莉春を嫁にするにしても、大臣達が許さないでしょう」
「そうよ!私は出自が田舎の娘で、しかも女官になったばかりなのよ!」
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「けどお前にとって莉春ちゃんは特別なんだろ?」
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「皇帝様は国家天下だ。一言勅命出せば誰も文句は言えまい」
「ですが莉春を嫁にする事はありません。これは莉春の為でもあるのです」
何でこんな話になったのか。当の莉春の意見などそっちのけで二人は話す。
「ならお前は莉春ちゃんから手を引け。このまま莉春ちゃんといればお前が壊れるぞ」
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