一輪の白百合をあなたへ

まぁ

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第二章

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「えっと……私何かしました?」
 一体何で呼ばれたのか莉春にはまったく身に覚えがない。だが陵妓は大きなため息と共に告げる。
「あの方と一体どこで出会ったのかはわかりませんが、あなたには週二回ある場所へと行ってもらいます」
「ある場所?それにあの方って、もしかして盈月の事?」
 盈月の名を出した途端、陵妓の眉が微妙な反応を見せた。何かまずい事でも言ったのかと思った。
「あの方の事を御存じないと?」
「えっ?あぁ、たしかに詳しくは知らないような」
「そうですか。では知らない方があなたの為でもあります。さて、本題のある場所ですが、これから馬車くるまが表に来ますから、それに乗って行きなさい。行けばわかりますから」
 早々に盈月の話題を終わらされ、莉春は納得出来なかったが、納得するより先に矢継ぎ早に支度するようにと促される。
(一体どこに行くのかしら?)
 よくわからないまま紫水殿の表に止まっていた馬車くるまに乗り込む。


 馬車くるまに揺られる事数分。そこはこれまでとは雰囲気が一転した場所だ。軒を連ねる店はどこか豪奢で、歩く人もまた綺麗な絹を纏って髪を綺麗に結い上げている。
「あの……ここって?」
 不安になった莉春は馬車くるまを運転している男に聞いた。
「どこって、ここは花街「桜楼街おうろうがいだ」
「は、花街?」
 地理的な知識がない莉春ですらここがどういう場所なのかは知っている。
「嬢ちゃんここに売られたのかい?」
「し、知らない!だって何も言われてなかったし!」
 まさか自分は本当に売られてしまうのか。いい人に見えて盈月はとても悪い悪人だったのかもしれない。そう考えるとどう逃げ出そうかと考えつつ、盈月に腹が立って仕方なかった。
 四苦八苦していると馬車くるまはある一軒の店で止まった。
(どうしよう……降りたと同時に逃げようかしら)
 そう気構えていると、馬車くるまが到着するのを待っていたのか、莉春と同じ年頃の少女が近くにやって来た。
「あなたがここで修業する莉春ね?」
「えっ?しゅ、修業?」
「あら、何も聞いてないの?」
 綺麗な絹の衣にちょこんと唇に乗せられた朱の口紅。まとめられた髪にはいくつかの簪が刺さっている。いかにもといった風体の少女に莉春は頷いた。
「そう、なら中で説明するから馬車くるまを降りて」
「で、でも……」
「運転手さんに迷惑かかるから早くして」
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