一輪の白百合をあなたへ

まぁ

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第一章

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 それを聞いた店主は大爆笑をした。それだけでなく店にいた客もまた大笑い。その中にいた客の一人が莉春に言う。
「嬢ちゃんは面白い事を言う。何だい?田舎の出か?」
「そうです」
「なら後学の為に言っておくよ。後宮は皇帝陛下の妻達、というより側室だな。その人達の住まいで、皆精鋭の美女や名家揃い。妃嬪の女官もまた家からの使いだったりする。悪いが田舎出の嬢ちゃんが女官になる事は無理だろうよ。ましてや妃嬪なんて尚更だ」
「でもそんなのわからないじゃない。もしかしたら私にだってその素質あるかもしれないよ」
「たとえあったとしても悪い事は言わない。後宮だけは入らない方がいい。あそこは女達の魔窟だ。毎日のように互いの襟首を狙ってるんだ。あぁ恐ろしや」
「そんなの後宮じゃなくてもそうでしょ?そう思うなら、おじさんも奥さん大事にしなよね」
「こりゃ一本取られたな」
 わははと再び笑いが起こる。
 確かに皆が言うように、何の後ろ盾もない自分がいきなり行って城の中に入れるとも思わない。現実的な職ではないのはわかる。だから諦める。
「それ以外に女を極めるような仕事ってある?」
「そうだなぁ……あるにはあるな。ただ人を雇ってるかはわからないがな」
「どこそこ?教えて?」
「あぁ、この道を少し行ったとこにある大きな寺院だ。紫水殿って言って、御使い様を祀る神殿だ」
「へぇ、ならそこ当たってみる!」
「まっ、行っても門前払いかもしれないがな。何より、嬢ちゃんみたいなお転婆はあの神殿にはいないって話だしな」
 またも笑いが起こるが、莉春の中ではそこにしようと決めた。
 早速荷物を手に、教えられた場所へと向かった。


 教えられた場所にやって来た莉春。そこは大きな門扉があり、紫水殿という文字が書かれた看板が掲げられていた。
 すぅっと息を吸い、緊張した面持ちで莉春はその門扉を叩く。
「すみません!誰かいませんか?」
 しばらく待つと、中から男の人が二人出てきた。
「すみません!ここで働かせてほしいのですが、どなたかお取次ぎしてもらえませんか?」
「あぁ?駄目駄目。ここは嬢ちゃんのような者が来る場所じゃない。帰った帰った」
 そう言って扉が再び閉ざされる。むっとなった莉春は再び扉を叩いた。そして同じ男が対応する。
「だから駄目だって言ってるだろ?このまま下がらないのなら兵を呼ぶぞ」
「何でよ!少しくらい話聞いてくれてもいいじゃない!」
「駄目なものは駄目だ。ここをどこだと思っている」
「紫水殿でしょ?」
「そうだ。ここに仕えるは神官だ。お前のようなお転婆の来るところではない」
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