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第三話

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「ほら、ちゃんと杖の柄を握って、力を入れず集中して」
「こ、こうかな?」
「そう。自然の声、精霊の声を聞いて」
 杖を握る真樹を背後から抱きしめるかのような形でいるリスティアム。
 そんな二人の様子を見ているカイにとっては何の面白味もない。むしろ近づきすぎではないかと思う。
「おいカイ!そんなとこで突っ立てないでこっち手伝ってくれよ!」
 大量の本を手に外へと出てきたフェイ。二人は現在リスティアムの館の大掃除に駆り出されている。
「僕はこれから篭るから、絶対邪魔しないでよね!」
 そう言って館の地下にある実験室のような部屋にレティが篭ったのは二日前。
 嵐が過ぎ去るまでの間をここで過ごす事になった真樹達だが、カイやフェイは大量にある蔵書の天日干しの為に、書庫の本を外に出している。
 一方の真樹はリスティアムから魔法の手ほどきを受けているが、正直普通に異世界(こちらの世界から見たら)で育った真樹に魔法が使えるとは思えない。
 それでなくとも魔法使いは幼少期から訓練をきたりして、それでもほんの一握りしかなれないのだそうだ。
(そもそも真樹とリスティアムじゃ種族が違う!)
 元々持っている素質が違うので、リスティアムの言うことを真樹がどれだけ理解しているかも謎だ。
「それにしても難しい本ばっかだな。見ろよ。これなんてエルフ語だぞ。オレには全くわからん」
 図解はされているが、書かれている文字が象形文字のようなものでフェイはもちろん、カイにもわからない。それよりも気になるのは真樹とリスティアムの距離感だ。
 本人は気づいているかわからないが、先程からカイは二人の事をチラチラ意識している。そんなカイにフェイはため息を漏らした。
「見過ぎだって……」
「別にオレは真樹が心配で……」
「はいはい。でもなんでだろうな?リスティアムはやたら真樹の事を気に入ってるみたいだけど……あれかな?小動物みたいでかわいいとか?」
 確かに小柄な分、大きな目を輝かせるとかわいいとは思うが、それだけでああも気にいるのだろうか。
「後は単純に真樹みたいなタイプが好みだとか?まっ、確かに女装とかさせたら似合うだろうな」
「フェイ!お前真樹をそんな目で見てたのか?」
「まさか!オレはおっぱいのあるお姉ちゃんのが大好きだよ」
 手を胸の辺りに置き、大きさを表現するフェイだが、カイからしたらフェイの言動もにわか信じられない。
「とりあえずさっさと出して掃除して中入れようぜ。早くしないと日が暮れるなんてあっという間だ」
 ただ出しただけではない。書庫の掃除をして大量の本を館の中に入れなくてはいけないのだ。二人の訓練は気になるものの、こちらもやらなくてはいけないのでカイは二人から目を離した。


「それじゃあ休憩にしましょうか?」
「うん」
「取り寄せた美味しい紅茶とクッキーがあるのです。クッキーは好きですか?」
「僕甘い物好きだよ」
 良かったと言って微笑んだリスティアム。掃除班の二人など眼中にないのか、リスティアムは真樹を連れて館の中に戻っていく。
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