23 / 32
第三話
1
しおりを挟む
「ほら、ちゃんと杖の柄を握って、力を入れず集中して」
「こ、こうかな?」
「そう。自然の声、精霊の声を聞いて」
杖を握る真樹を背後から抱きしめるかのような形でいるリスティアム。
そんな二人の様子を見ているカイにとっては何の面白味もない。むしろ近づきすぎではないかと思う。
「おいカイ!そんなとこで突っ立てないでこっち手伝ってくれよ!」
大量の本を手に外へと出てきたフェイ。二人は現在リスティアムの館の大掃除に駆り出されている。
「僕はこれから篭るから、絶対邪魔しないでよね!」
そう言って館の地下にある実験室のような部屋にレティが篭ったのは二日前。
嵐が過ぎ去るまでの間をここで過ごす事になった真樹達だが、カイやフェイは大量にある蔵書の天日干しの為に、書庫の本を外に出している。
一方の真樹はリスティアムから魔法の手ほどきを受けているが、正直普通に異世界(こちらの世界から見たら)で育った真樹に魔法が使えるとは思えない。
それでなくとも魔法使いは幼少期から訓練をきたりして、それでもほんの一握りしかなれないのだそうだ。
(そもそも真樹とリスティアムじゃ種族が違う!)
元々持っている素質が違うので、リスティアムの言うことを真樹がどれだけ理解しているかも謎だ。
「それにしても難しい本ばっかだな。見ろよ。これなんてエルフ語だぞ。オレには全くわからん」
図解はされているが、書かれている文字が象形文字のようなものでフェイはもちろん、カイにもわからない。それよりも気になるのは真樹とリスティアムの距離感だ。
本人は気づいているかわからないが、先程からカイは二人の事をチラチラ意識している。そんなカイにフェイはため息を漏らした。
「見過ぎだって……」
「別にオレは真樹が心配で……」
「はいはい。でもなんでだろうな?リスティアムはやたら真樹の事を気に入ってるみたいだけど……あれかな?小動物みたいでかわいいとか?」
確かに小柄な分、大きな目を輝かせるとかわいいとは思うが、それだけでああも気にいるのだろうか。
「後は単純に真樹みたいなタイプが好みだとか?まっ、確かに女装とかさせたら似合うだろうな」
「フェイ!お前真樹をそんな目で見てたのか?」
「まさか!オレはおっぱいのあるお姉ちゃんのが大好きだよ」
手を胸の辺りに置き、大きさを表現するフェイだが、カイからしたらフェイの言動もにわか信じられない。
「とりあえずさっさと出して掃除して中入れようぜ。早くしないと日が暮れるなんてあっという間だ」
ただ出しただけではない。書庫の掃除をして大量の本を館の中に入れなくてはいけないのだ。二人の訓練は気になるものの、こちらもやらなくてはいけないのでカイは二人から目を離した。
「それじゃあ休憩にしましょうか?」
「うん」
「取り寄せた美味しい紅茶とクッキーがあるのです。クッキーは好きですか?」
「僕甘い物好きだよ」
良かったと言って微笑んだリスティアム。掃除班の二人など眼中にないのか、リスティアムは真樹を連れて館の中に戻っていく。
「こ、こうかな?」
「そう。自然の声、精霊の声を聞いて」
杖を握る真樹を背後から抱きしめるかのような形でいるリスティアム。
そんな二人の様子を見ているカイにとっては何の面白味もない。むしろ近づきすぎではないかと思う。
「おいカイ!そんなとこで突っ立てないでこっち手伝ってくれよ!」
大量の本を手に外へと出てきたフェイ。二人は現在リスティアムの館の大掃除に駆り出されている。
「僕はこれから篭るから、絶対邪魔しないでよね!」
そう言って館の地下にある実験室のような部屋にレティが篭ったのは二日前。
嵐が過ぎ去るまでの間をここで過ごす事になった真樹達だが、カイやフェイは大量にある蔵書の天日干しの為に、書庫の本を外に出している。
一方の真樹はリスティアムから魔法の手ほどきを受けているが、正直普通に異世界(こちらの世界から見たら)で育った真樹に魔法が使えるとは思えない。
それでなくとも魔法使いは幼少期から訓練をきたりして、それでもほんの一握りしかなれないのだそうだ。
(そもそも真樹とリスティアムじゃ種族が違う!)
元々持っている素質が違うので、リスティアムの言うことを真樹がどれだけ理解しているかも謎だ。
「それにしても難しい本ばっかだな。見ろよ。これなんてエルフ語だぞ。オレには全くわからん」
図解はされているが、書かれている文字が象形文字のようなものでフェイはもちろん、カイにもわからない。それよりも気になるのは真樹とリスティアムの距離感だ。
本人は気づいているかわからないが、先程からカイは二人の事をチラチラ意識している。そんなカイにフェイはため息を漏らした。
「見過ぎだって……」
「別にオレは真樹が心配で……」
「はいはい。でもなんでだろうな?リスティアムはやたら真樹の事を気に入ってるみたいだけど……あれかな?小動物みたいでかわいいとか?」
確かに小柄な分、大きな目を輝かせるとかわいいとは思うが、それだけでああも気にいるのだろうか。
「後は単純に真樹みたいなタイプが好みだとか?まっ、確かに女装とかさせたら似合うだろうな」
「フェイ!お前真樹をそんな目で見てたのか?」
「まさか!オレはおっぱいのあるお姉ちゃんのが大好きだよ」
手を胸の辺りに置き、大きさを表現するフェイだが、カイからしたらフェイの言動もにわか信じられない。
「とりあえずさっさと出して掃除して中入れようぜ。早くしないと日が暮れるなんてあっという間だ」
ただ出しただけではない。書庫の掃除をして大量の本を館の中に入れなくてはいけないのだ。二人の訓練は気になるものの、こちらもやらなくてはいけないのでカイは二人から目を離した。
「それじゃあ休憩にしましょうか?」
「うん」
「取り寄せた美味しい紅茶とクッキーがあるのです。クッキーは好きですか?」
「僕甘い物好きだよ」
良かったと言って微笑んだリスティアム。掃除班の二人など眼中にないのか、リスティアムは真樹を連れて館の中に戻っていく。
1
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
賢者となって逆行したら「稀代のたらし」だと言われるようになりました。
かるぼん
BL
********************
ヴィンセント・ウィンバークの最悪の人生はやはり最悪の形で終わりを迎えた。
監禁され、牢獄の中で誰にも看取られず、ひとり悲しくこの生を終える。
もう一度、やり直せたなら…
そう思いながら遠のく意識に身をゆだね……
気が付くと「最悪」の始まりだった子ども時代に逆行していた。
逆行したヴィンセントは今回こそ、後悔のない人生を送ることを固く決意し二度目となる新たな人生を歩み始めた。
自分の最悪だった人生を回収していく過程で、逆行前には得られなかった多くの大事な人と出会う。
孤独だったヴィンセントにとって、とても貴重でありがたい存在。
しかし彼らは口をそろえてこう言うのだ
「君は稀代のたらしだね。」
ほのかにBLが漂う、逆行やり直し系ファンタジー!
よろしくお願い致します!!
********************
異世界に転移したショタは森でスローライフ中
ミクリ21
BL
異世界に転移した小学生のヤマト。
ヤマトに一目惚れした森の主のハーメルンは、ヤマトを溺愛して求愛しての毎日です。
仲良しの二人のほのぼのストーリーです。
前世の記憶を思い出した皇子だけど皇帝なんて興味ねえんで魔法陣学究めます
当意即妙
BL
ハーララ帝国第四皇子であるエルネスティ・トゥーレ・タルヴィッキ・ニコ・ハーララはある日、高熱を出して倒れた。数日間悪夢に魘され、目が覚めた彼が口にした言葉は……
「皇帝なんて興味ねえ!俺は魔法陣究める!」
天使のような容姿に有るまじき口調で、これまでの人生を全否定するものだった。
* * * * * * * * *
母親である第二皇妃の傀儡だった皇子が前世を思い出して、我が道を行くようになるお話。主人公は研究者気質の変人皇子で、お相手は真面目な専属護衛騎士です。
○注意◯
・基本コメディ時折シリアス。
・健全なBL(予定)なので、R-15は保険。
・最初は恋愛要素が少なめ。
・主人公を筆頭に登場人物が変人ばっかり。
・本来の役割を見失ったルビ。
・おおまかな話の構成はしているが、基本的に行き当たりばったり。
エロエロだったり切なかったりとBLには重い話が多いなと思ったので、ライトなBLを自家供給しようと突発的に書いたお話です。行き当たりばったりの展開が作者にもわからないお話ですが、よろしくお願いします。
2020/09/05
内容紹介及びタグを一部修正しました。
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
あなたを追いかけて【完結】
華周夏
BL
小さい頃カルガモの群れを見て、ずっと、一緒に居ようと誓ったアキと祥介。アキと祥ちゃんはずっと一緒。
いつしか秋彦、祥介と呼ぶようになっても。
けれど、秋彦はいつも教室の羊だった。祥介には言えない。
言いたくない。秋彦のプライド。
そんなある日、同じ図書委員の下級生、谷崎と秋彦が出会う……。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て運命の相手を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
────────────
※感想、いいね大歓迎です!!
自己評価下の下のオレは、血筋がチートだった!?
トール
BL
一般家庭に生まれ、ごく普通の人生を歩んで16年。凡庸な容姿に特出した才もない平凡な少年ディークは、その容姿に負けない平凡な毎日を送っている。と思っていたのに、周りから見れば全然平凡じゃなかった!?
実はこの世界の創造主(神王)を母に持ち、騎士団の師団長(鬼神)を父に持つ尊い血筋!? 両親の素性を知らされていない世間知らずな少年が巻き起こすドタバタBLコメディー。
※「異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ」の主人公の息子の話になります。
こちらを読んでいなくても楽しめるように作っておりますが、親の話に興味がある方はぜひズボラライフも読んでいただければ、より楽しめる作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる